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NETFLIXは過去にAmazonの買収提案を断っていたという話

『不可能を可能にせよ!NETFLIX 成功の流儀』を読みました。NETFLIX共同創業者のマーク・ランドルフ氏の著作です。ネトフリの創業~株式公開までの約6年間を当事者目線で描写しています。

同書の現代は『That will never work』(それ、絶対うまくいかないわ)です。誰もがうまくいかないと思ったネットフリックスのビジネスを、なんとか軌道に乗せるまでの試行錯誤が赤裸々につづられています。

そんなネトフリですが、実は創業間もないころにAmazonから買収したいと提案を受けていました。結局金額面で折り合いがつかず断念し、独立路線を歩むこととなった同社について整理してみます。

ビデオ × eコマースというアイディア

著者にはもともと二つの願いがありました。それは自分の会社を起業したいということと、その会社でネット販売をやりたいというものでした。

1997年当時、私にわかっていたのは自分の会社を起業したい、その会社でネット販売をやりたい、それだけだった。

起業×ネット販売で何かできないかと日々思案していた著者は、ビデオ×eコマースというアイディアを思いつきます。後にネトフリ誕生につながるアイディアの卵です。

実はネトフリには創業者が二人います。本書の著者マーク・ランドルフ氏と、現CEOのリード・ヘイスティング氏です。二人の共同創業者はオンラインDVDレンタルというビジネスモデルを形にしていきます。

当時はVHSからDVDへの移行期

ネトフリの創業当時(1998年)

ネットフリックスが創業したのは、VHS(ビデオテープ)からDVDへの移行期でした。時代がDVD黎明期だったことは、ネトフリに3つのメリットをもたらしました。

一つ目は、郵送コストが安いということです。DVDはコンパクトなので、郵送コストを抑えることが可能になりました。共同創業者のランドルフ氏も「VHS郵送レンタルは見込みがなかった」と振り返っています。

二つ目は、先行プレイヤーが不在だったことです。誕生間もないDVDは、世間にはまだ普及していませんでした。街のレンタルビデオ店はVHSしか取り扱っていませんでした。ネトフリは先行者利益を獲得できたのです。

三つ目は、DVDのラインナップが少なかったことです。1998年当時、VHSが数万タイトル存在する一方、DVDは全部で約800タイトルしかありませんでした。ネトフリはDVD全タイトルを在庫として抱えることで、「世界最大のDVDの品揃え」というポジションを取ることができました。

つまり、ネトフリは早期に「DVDといえばネットフリックス」というポジションを確立することができたわけです。

サービス開始日にサーバーダウン

1998年4月、ネットフリックスは満を持してサービスを開始します。webサイトオープン直後から注文が殺到し、あっという間にサーバーがダウンするほどの盛況となりました。

ネトフリは初年度から、スタートアップの成功指標の一つである「年間売上高100万ドル」に到達するペースで売上を伸ばしていきます。何もかもが順調に進んでいるように見えました。しかし、大きな問題がありました。

レンタル売上はわずか3%

創業直後のネトフリの売上高内訳

売上の内訳を見てみると、なんと97%をDVD販売が占めていたのです。オンラインDVDレンタルというユニークなビジネスモデルを目指していたのに、実際は単なるDVD販売サイトとして利用されていたわけです。

これを知った創業者のマーク・ランドルフ氏は、大きな焦りを覚えます。なぜなら、DVD販売はコモディティ化するのが目に見えていたからです。特にAmazonの新規参入は、時間の問題とされていました。

DVD販売はつきつめればコモディティビジネスだ。数字を見れば誰もがまったく同じものを同じような方法で売り始めたら、うちの利幅がゼロに縮小するのは時間の問題にすぎないとわかる。来週、来月、来年ではないかもしれないが、必ずそのときは来る。そうなったらうちは窮地に陥る。

売上の99%をもたらしているが、競合他社が増えれば徐々に、しかし確実に消えていくDVD販売に絞るべきか。それとも、成功すれば利益の大きなビジネスになるが、現時点では見込みゼロのDVDレンタルに、限られたリソースを投入すべきか。簡単には答えが出ない。

ネトフリ経営陣は、DVD販売を続けるべきか、それともDVDレンタルに経営資源を集中させるべきか大いに悩みます。そんな時、同社にある企業から電話がかかってきます。

Amazonからの買収提案

電話の主はAmazonのCFOでした。同社のCEOジェフ・ベゾスに会って話をしないかと提案があったのです。この時点で著者は「Amazonがネットフリックスの買収を検討しているのだ」と勘づきます。

かくしてネトフリ創業者の二人はベゾスを尋ねてAmazon本社を訪れます。当時既にAmazonはEコマースの覇者になりつつありました。ところが、本社はボロボロでテーブルはドアをリサイクルしたもので作られていました。

Amazon側から「会社がお金を使うのはお客様に関係することだけ、それ以外のものには使わない」という姿勢を聞かされます。徹底したAmazonの倹約主義に触れ、ネトフリ創業者はこれでは勝ち目がないと直感します。

Amazonへの身売りを前向きに検討したものの、提示された買収金額が低すぎたことから、ネトフリは独立路線を選択します。それと同時に、Amazonと競合しないDVDレンタルビジネスに特化することを決定します。

赤字を垂れ流す中でサブスクモデルが誕生

売上の97%をもたらしていたDVD販売事業から撤退したことで、ネトフリは赤字を垂れ流す状況に陥ります。なんとか状況を打開しようと思案する中で生まれたのが「サブスクリプションモデル」でした。

このサブスクリプション(月額定額料金)モデルを武器に、ネトフリは会員数を一気に伸ばしていきます。DVD販売事業を捨てレンタルに特化するという意思決定をしたからこそ、サブスクモデルが生まれたわけです。

DVD販売ビジネスについては、ネトフリの予想通りAmazonの参入によってコモディティ化していきました。短期的な利益ではなく長期的な成長を追い求めたからこそ、今日のネットフリックスが存在しているのかもしれません。

今回は以上です。

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