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【企業解体新書】ビジョナリーHD(メガネスーパー)の復活劇

メガネスーパーを運営するビジョナリーHDの業績が好調です。2021年4月期の2Q終了時点で3.8億円の純利益を計上しました。当初の業績予想は4.6億円の赤字でしたから、想定以上の結果といえます。

さて、今回はそんなビジョナリーホールディングスですが、実は業績不振から債務超過に陥った過去があります。今回は、そんな同社の経営戦略や特徴を3つのポイントに整理してお伝えします。

特徴1.メガネ&コンタクトの二本柱

ビジョナリーHDの売上の内訳

一つ目の特徴は、メガネとコンタクトの両方を手掛けている点です。

売上の内訳をみると、「メガネ」と「コンタクト」の二つで売上の8割超を占めていることが分かります。あくまでメガネを中心にしつつも、それに次ぐ主力商品としてコンタクト関連品を販売している格好です。

メガネとコンタクト両方の顧客データを抱えているので、クロスセル戦略を行うことも可能になります。とはいえ、コンタクトレンズの顧客は目的買いのケースが多く、メガネとのクロスセル率は小さいのが現状のようです。

特徴2.財務体質に弱み

メガネ業界各社の自己資本比率

二つ目の特徴は、財務体質がぜい弱だということです。メガネ業界の上場企業4社と比較すると、ビジョナリーHDの自己資本比率23.8%の低さが目立ちます。

財務的に制約があるため、大胆な投資には踏み切りにくいのが現状といえます。財務体質の弱さは、M&Aを含めた成長投資を検討する際のネックになってしまう可能性があります。

ところで、そもそも自己資本比率が低いのはなぜでしょうか。バランスシートは過去の積み重ねですから、過去の業績を遡ると答えが見つかります。

価格競争に敗れ一時は債務超過に

ビジョナリーHDの営業利益推移

上のグラフはビジョナリーHDの過去15年間の営業利益を示しています。

実は、2008年から8期連続で営業赤字を計上し、債務超過に陥った過去がありました。倒産寸前まで追い詰められまさに「どん底」にありました。2016年以降業績は回復傾向にあるものの、過去の業績不振の影響で財務体質がぜい弱になっているわけです。

とはいえ、一つ疑問が残ります。2007年に24億円の営業利益を計上していた企業が、なぜたった一年で赤字に転落してしまったのでしょうか。

メガネスーパーが赤字に転落した理由は、低価格メガネを販売する競合企業の台頭にありました。代表的な企業はJINSやZoffですね。これらの企業は商品の企画~販売までを垂直統合することで中間コストを削減し、低価格メガネで勝負を仕掛けました。

低価格チェーンによる価格破壊

メガネ一式の平均単価の推移

低価格チェーンの登場によって、メガネ一式(レンズ+フレーム等)の平均単価は一気に下がります。かつては3.5万円だった平均単価が、まもなく2万円を切るのではないかという勢いです。

JINSやZoffなど低価格チェーンは若年層を中心に顧客を奪っていきました。焦ったメガネスーパーは、負けじと大幅な値下げに踏み切りますが、付け焼刃の対策はあえなく失敗に終わります。

メガネスーパーの失敗は、そのビジネスモデルにやみくもに追従してしまったことだ。競合他社はコストや客数を緻密に計算し、利益が出る仕組みを構築した上で「レンズ付き価格」を打ち出して成功していた。一方、メガネスーパーは顧客が増える見通しもないまま、一斉に在庫商品を値下げしてしまったのだ。「自滅した」格好だ。

このような惨憺たる状況の中、2013年に星崎尚彦氏がメガネスーパーの社長に就任します。星崎氏は、メガネスーパー再建のために「安売りとの決別」に取り組んでいきます。

特徴3.「シニア × 多機能」メガネにフォーカス

メガネスーパーのポジショニング

ボロボロの状態から脱却すべくメガネスーパーが出した答えは、「シニア向けの高付加価値メガネ」でした。価格競争に敗れた同社は、ミドル・シニア層向けに「目の健康」に配慮した高付加価値なメガネを販売することに活路を見出したのです。

メガネスーパーが打ち出さなければならないのは、「安い眼鏡」ではなく、「目の健康」ではないか。低価格では太刀打ちできない状況を踏まえ、大きな方向転換を決めた。モノではなくサービスで勝負する、ということだ。

その戦略を言語化したのが、現在も掲げる「アイケアカンパニー宣言」だ。(前掲のsankei.com記事より)

現在ではビジョナリーHDの売上の6割をミドル・シニア層向け商品が占めています。ところで、ミドル・シニア層には具体的にはどういった特徴があるのでしょうか。

ミドル・シニア層の多様なニーズ

年齢別の使用レンズの種類

シニア層のニーズはとにかく多様です。上のグラフからは、年齢が上がるにつれて近視用レンズ以外にニーズが多様化していることがわかります。このミドル・シニアニーズに応えられることが、メガネスーパーの競争優位につながっています。

なぜなら、例えば老眼レンズは、近視向けのように画一的な大量生産レンズが使用できないからです。1人1人に合わせたオーダーメイドのレンズ発注を必要になるのです。したがって、ジンズやZoffといった低価格・大量生産のビジネスモデルを持った企業はなかなか参入できないわけです。

まとめ

ビジョナリーHDまとめ

上記はビジョナリーHD(メガネスーパー)についてまとめたものです。価格競争に巻き込まれ一時は倒産の危機にあった同社は、シニア向けの高機能メガネに特化することで復活を遂げました。

とはいえ、債務超過になるほど痛んだバランスシートはすぐに回復するほど簡単ではありません。また、若年層の獲得も同社の大きな課題の一つです。今後も継続的に動向をウォッチしていきたいと思います。

今回は以上です。

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