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有名であることへの違和感

サイトをはじめて1年近く経つのだけど、最初は取材させてくれる人を見付けるのも大変だった。

ある人には、
自分はほんとにただのサラリーマンだから
ということで断られた。
いや、普通の人のくらしを載せたいんですよ
といったのだけど、なかなか理解してもらえなかった。

そのほかにも、自分の地味なくらしをサイトに載せることのなにが地方創生になるのかとか色んな反応があった。
というか、あやしい宗教かなにかだと思われていたと思う。

会ったこともない夫婦が人づてに、いつものくらしを写真に撮ってほしいと、妙な依頼をしてくるのだから、それはもっともな反応であったかもしれない。

サイトもまだできていなかったし、企画書しかなかったのだから、サイトのコンセプトをわかってもらえなかったというのもあった。

そんなこともあって、実はわたしの父が"くらしてん"の第1号となった。父は、好奇心の強い少年のような父で、おもしろそうだねと快く協力してくれた。
記事にしてみると、身近な自分の父の函館でのくらしが、いかに豊かなものかを思い知った。東京で狭い部屋にくらしている自分のくらしとのコントラストも強く感じられた。


それからは、なんとかメンバーの知り合いの方を紹介してもらったりして、なんとか月一回のペースで更新し続けているのだが、
最近は、記事化させて頂いた方にさらに誰かを紹介してもらうというテレフォンショッキング的なやり方で、数珠繋ぎに人を辿っていくというかたちに自然となっている。

記事にさせてくれそうな人がいたら紹介してください

とお願いすると、

どういう人がいいんですか?

と聞かれることがほとんどだ。すると、わたしは、

誰でもいいんです。

という。そうすると、

え?

という顔をされる。

別にふてくされてるわけでもなんでもなくて、本当にだれでもいいのだ。というか、"だれか"というものに、違和感を感じるのだ。

"だれか"が意味するものは、大抵の場合、地方で立派な活動をされていてメディアにも時々顔を出すような素敵過ぎる人の場合が多い。わたしたちが紹介したいくらしは、そういうくらしではない
わたしたちは、普通の人が参考にできるように普通のくらしを載せたいのだ。
それでも、今まで記事にさせて頂いた方の中には、実は地方で活躍していて有名な方もいる。そういう場合でも、このサイトでは有名な人という扱いはしない。というか、したくない。


"断片的なものの社会学"

実は、わたしがこんな活動をしていることは、わたしの知り合いはあまり知らない。
というか、知っていたとしても、なんかよくわからない活動をしているという感じだ。久し振りにあった友達も、facebook などで活動のことは知っていたとしても、そこに触れてこないことが多い。わたしたちの活動がよくわからなくて、あやしいものに思えるからだろう。
だから、自分からこういう活動をしていることは積極的には言わないようにしているのだが、たまにこの人ならわかってくれそうだという人には、思い切って言ってみることがある。

サイトみました。
いままでの記事もコンセプトも全部みました。

思い切って言ってみた次の日、そう言ってくれた同僚がいた。
もうその頃は、誰にもわかってもらえないものをこそこそ隠しながらやっているような感じになっていたので、ほんとうにうれしくて、普段あまり多弁ではないわたしも色々と話してしまった。
それで、彼は"断片的なものの社会学"という本を勧めてくれた。

その本を読みながら、
ボキャブラリーのストックの中にこの本が入っている彼を、すげーセンスだなと思いながら、自分のなかのこれまでの違和感が腑に落ちていった。


雑誌的アプローチと社会学的アプローチ

自分がなぜ有名人にインタビューしないのか。あるいは、有名な人として紹介しないのか。そして、地方の人たちのくらしを美化しないのか。
それは、わたしたちが雑誌的なアプローチではなく、社会学的なアプローチをしたいからだった。
なるべく社会の現象の中のひとつを抽出してみましたという風にしたいのだ。なぜならば、わたしたちのサイトをみてくれた普通の人が、それを参考にしてほしいというのをわたしたちのゴールとしているからだった。

そういえば、katoyomeとサイトの構想を練っていたころ、"この人は地方でこんなに丁寧なくらしをしています"的なメディアについては見向きもせず、そのかわりにわたしたちは名のない人たちに焦点を当てたものについては、勝手に親近感を持って、素直に"いいよね"と話し合っていた。

そのときに、よく見ていたものをここで紹介して、この文章を閉じたい。


***

"Grandma's Recipes"



"窓の観察"


"函館の24時"

*こちらについては、もう手に入れることができません。私立函館図書館の書棚にひっそりとありますので、興味のある方はぜひ

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