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治川の詩集

37
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2022年9月の記事一覧

自己嫌悪の時間

自己嫌悪の時間

自己嫌悪に陥った僕に
自己嫌悪から手紙が届いた

『自己嫌悪ってどんな意味なの
自己嫌悪って誰のことなの』

自己嫌悪に陥った僕は
自己嫌悪に手紙を書いた

「自己嫌悪って言葉の通り
自己嫌悪って意味なんだよ」

あーあ
今日も僕は理想と現実に挟まれて
いくつもの夢を諦めてしまったんだよ

遠くに行ってしまった声が
もう 聞こえないように
遠くに行ってしまった過去へは
もう 戻れないんだよ

自己

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黒と白

黒と白

黒猫が前を横切ると
不幸が訪れるという迷信がある

一方で白猫は
福を招くと言われるらしい

じゃあ黒と白の入り混じる
この猫ちゃんはどうなのか

上から見ると黒猫で
下から見ると白猫だ

見方によって黒にも白にもなるのは
人間のようで愛らしい

黒にも白にも成れるのだから
不自由ではないはずだ

猫じゃらしに飛びつく手は
指の先だけちょっと白い

白黒つける必要あるの?と
教え諭しているようだ

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サンサーラ

サンサーラ

眠れない夜 ノートに向かって考える
これまでのことと これからのこと

古い記憶を取り出して
懐かしさに 浸る 浸る

そこにいる君を呼び寄せて
尋ねるんだ

生まれ変わったら何になりたい?

光は一つで十分だ 時計を見つめて考える
変わったことと 変わらないこと

そびえ立つビルを見上げながら
懐かしさに 浸る 浸る

そこにいた君を手招きして
尋ねるんだ

生まれ変わったら何になりたい?

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ただいま

ただいま

私の故郷は汚い街だ
改札抜ければ 
居酒屋 パチンコ 風俗店
金と欲に塗れた街だ

私の故郷は汚い街だ
平日の朝は吐瀉物まみれ
転がった空き缶に タバコの吸い殻

でもそれが
私の生まれ育った街だ

都会に行けば綺麗な街
塵ひとつ落ちてやしない

造られた草木に 造られた平穏

臭いものには蓋をするのか
汚いものは排除するのか

とても安全で とても苦しい
とても平和で とても不気味だ

電車のア

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透命人間

透命人間

黒い服着て街を歩いて
   影に隠れて光を覗いた
眩しすぎる此の先の道は
   白く染まって何も見えない

石につまずき心は散った
   ひらりひらりと彷徨う体
取り戻したく手を伸ばすけれど
   嘲笑いながら飛んでった

ひゅるる
   ひゅる
     ひゅるりら
ひゅるる
   ひゅる
     ひゅるりら

白いシャツ着てビルを見上げて
   時計眺めて其の刻を待った

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深夜一時

深夜一時

どれが本当の私か
なんて分からぬまま 大人になって
これが本当の私だ
なんて言い切れぬまま 今に至る

ずっと考えてきたことなんて
いつかは解決するなんて
悩んできたもんバカみたいに
わかったもんなんかありゃしません

深夜一時 街は寝静まって
夜更けと夜明けの狭間
何かに怯えて 空を睨む

どれが本当の姿か
なんて分からぬまま 大人になって
これが本当の姿だ
なんて言い切れぬまま この先も

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うごの世

雨上がりの木々の雫が
揺れて落ちて メガネを濡らす

木漏れ日はまだ夏の余韻を残して
肌を刺すように
それでいて柔らかい 白露の光

誰もいない 平日の昼間
草木と 風と 私だけの時間

雨上がりの木々の雫が
揺れて落ちて メガネを濡らす

雫が視界を歪ませて 目隠しをする
現世が見えないように 

この夢路から醒めないように