見出し画像

幸せの氷。待ちに待った朝。

術後は炎症反応が強く出る為、血管外に水分が流出しやすい状況ができ、高熱(常時38℃以上)が続く。その影響か、強烈な喉の渇きが抑えられず、眠っても1時間後に起きて、水を飲んで、また1時間後に喉の渇きで起きて・・・の繰り返し。
その度に看護師さんに水をもらっていると、午前2時半ぐらいの時点で、ついに飲水制限の1000mlに達してしまった。

1日の飲水制限がリセットされるのは午前7時。
担当看護師の友人は、申し訳なさそうな表情で
「ごめんなー。もう水は飲めないわけさー。」と話す。
でも、とてもじゃないけど、何も口に入れないまま朝を迎えるのは苦しい。。。

こういう時に人間の本性って現れるのだろう。自分ってとっても我慢弱くて、ワガママだなと改めて思ったが、苦し紛れに友人に交渉した。
「氷舐めるだけでもダメ??」
我ながら必死だなと、心の中で笑った。

すると友人は
「あー、ちょっと聞いてみようね!」と言って、一旦その場を離れた。
そして2~3分ほどして、友人が紙コップを持って再びやってきた。
「氷舐めるだけなら大丈夫だから、ここに置いておこうね。」

なんと嬉しい事か。氷1つでこんなに喜んだのは、中学時代の野球部の練習の時以来だろうか。(笑)
当時の野球部は「簡単に水を飲んではいけない」という、昔ながらのスタイルが残る環境下であった為、時々飲める貴重な水と氷が何よりの幸せだった。あの時に水を飲めない環境には慣れてきたはずなのに・・・

と、余談ではあったが、とにかく氷をゲットすることができた。
友人に置いてもらった紙コップを、すぐに手に取り、氷を1個口の中に入れた。なんとおいしい氷だことか。それをしばらく口の中でコロコロと転がすだけで、気持ちはだいぶ落ち着いた。
こんなワガママな自分の言うことを聞いてくれる友人には、本当に感謝だった。

友人がくれた氷のおかげで、定期的に襲ってくる喉の渇きは、どうにか抑えられた。相変わらず1時間おきに寝ては目が覚めての繰り返しではあったが・・・

そして、気づけば朝6時前。
全然休んだ感じがせず、全身的に怠かったが、それよりもあと1時間で水が飲めるという期待感でいっぱいだった。
そこからは、壁掛け時計の長針が進むのを、じっと眺めてばかりだった。

待ちに待った朝。
朝が来るのってこんなに時間が掛かるんだと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?