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立憲民主党が育成就労制度案への対案として打ち出した外国人労働者安心就労法案が驚愕の内容だった

2024年1月より、現行の外国人技能実習制度・特定技能制度の見直しを受けて、育成就労制度創設にあたり重要な提言となる最終報告書を読む企画を行っていた。

育成就労制度や特定技能制度を巡っては、本連載中もめまぐるしく新たな情報が飛び交っており、2024年4月に国会での審議が始まっている。そうした中、立憲民主党が政府案(育成就労制度)の対案として外国人労働者安心就労法案を打ち出している。

内容については、上記ウェブサイトにおいてPDFをダウンロードして確認して欲しい。本noteでは、最終報告書に関する連載を行ったことから、今回の外国人労働者安心就労法案についても一つ一つ見ていこうと考えた。

しかしながら、内容を一通り読んだ上で、特別細かく見ていく必要のない内容と思われたため、連載の形も従前のような各項目に関する解説の形も取らず、感想の形で書こうと思う。

外国人労働者安心就労法案は対案のための法案となっている印象が強い

外国人労働者安心就労法案をざっと読んだ感想は、オブラートに包んだ表現をするのであれば、『外国人労働者安心就労法案は政府案に対抗するためだけに作られた法案になっている印象を受ける』である。

率直に言えば『あまりに拙く粗末過ぎる』の一言だ。前述の最終報告書あるいは従前の本noteの連載を読んだ人々ならば察せられると思うが、育成就労制度は外国人の育成及びその後の人材化に主眼を置き、彼ら彼女らの幸福にフォーカスしている。

つまり、外国人技能実習生に対する人権侵害もかくやな行為が度々発生してきた事実や度重なる労働関連法違反の発生事実を踏まえ、そうした問題を未然に防ぎながら、外国人が日本において技能を習得し、母国あるいは日本において活躍する道筋をつくるべく創られた内容である。

ところが立憲民主党が提示した外国人労働者安心就労法案はどうだろうか。驚くことに外国人技能実習生という概念それ自体を消失させ、労働力として扱うことを念頭に置いている。

違法なブローカーの排除などを大きく問題視した内容であるかのように打ち出しているが、育成就労制度の創設にあたり議論されてきた監理団体に関してはそのまま使うような内容になっている(育成就労制度での提言では、監理団体の締め付けが強く意識されている)上、一般労働1号なるものの取得要件には日本語能力不要とすら謳っている。

日本語をまるで分からない外国人を企業に押し付ける形に見えなくもなく、この内容であるとブローカーよりも質が悪い可能性が高い。ハローワーク等公的機関を挟んで求人に関して監理団体の関与を排除、雇用管理における悪質なブローカー排除を謳っているが、入口を粗悪にして真っ当な出口に至れる筈もないのは、冷静に考えれば誰でも理解できる話だろう。

公的機関及び受入れ機関の負担が無為に膨らむのみならず、外国人側の不安も大きなものとなる。下手すると制度そのものが運用困難な事態が発生しかねない。政府案に対案を出せたところで自己満足を得られる立憲民主党は幸福になれるかもしれないが、立憲民主党以外は誰が幸福になれるでもない内容で、目を疑った。

従前の本noteにおける企画で指摘を入れていた通り、最終報告書の提言内容についても多々問題点は見られている。立憲民主党の打ち出した対案は、そうした問題を解消している内容というわけでもなく、ただ政府案を否定したいがためだけの内容に見えてならない。

少なくとも最終報告書において語られている現行の外国人技能実習制度・特定技能制度にまつわる議論を踏まえた内容であるとは全く思えない。まさに立憲民主党による立憲民主党のための法案と言っても過言でないように感じられる。

とりわけ酷いのは、当の外国人技能実習生・特定技能者について何か一つでも考えた内容が見られないことである。本来何よりも考えなければならない主題、達成しなければならない目的の何もかもが欠落しており、法案と呼ぶにはあまりにも稚拙で、愕然とする。

立憲民主党にも立憲民主党の考えはあろうが、外国人労働者安心就労法案の内容では、従前人権侵害とまで海外から言われてしまった外国人技能実習制度に対する厳しい目が、より一層厳しい目にさらされ、日本の品位を下げるリスクを感じてしまう。法案として打ち出すのではなく、一度再考することを願ってやまない。


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