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  • 答えのない数学【津田塾大学 原隆先生 ロングインタビュー】

    2024年7月某日,津田塾大学小平キャンパスを訪れた.歴史ある建物,芝生の刈り込まれた西洋庭園,豊かな緑.美しいキャンパスである.ここに立つと,筆者はケネディ大統領の1963年の演説を思い出す.今日は数学者・原隆先生にインタビューする日である.

最近の記事

荷電レプトンフレーバー非保存な崩壊過程の捕まえ方【素粒子物理の最前線 #2】

標準理論を超える「新しい物理現象」の手がかりを求めて、日夜研究にいそしんでいる素粒子実験の研究者たち。 この連載では、素粒子物理学や、Belle II実験とよばれる素粒子実験について、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所の宇野健太先生に解説していただきます。毎月更新予定です。 ← #1 タウ粒子で「新しい物理現象」を探る *    *    * みなさん、こんにちは。高エネルギー加速器研究機構の宇野健太です。 前回は素粒子の一つであるタウ粒子の魅力についてお話

    • 答えのない数学#7 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

      ライフワークとしての数学 編集者:次にお伺いするのは出来合いの質問ではないというか,ちょっと答えに迷ってしまう質問なのかもしれないんですけれど,よろしいですか. 原先生:はい. 編集者:数学を続ける上で,あるいは,数学者としてなにか一つのテーマを考え続けたりですとか追っていく中で,「続ける」ことってすごく重要だと思うんです.その一方,休みたくなるときとか,もうこれはやめたいという風に思うときもあったりするのでしょうか. 原先生:そうですねぇ(しばし考える). 編集者:

      • 答えのない数学#6 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

        全く違った対象を結びつける原先生:普段からいろんな数学にアンテナを張り巡らせるようにはしていて――.うん,そうですね.これさえやればという風にはやっぱり思ってないというのはありますね.やっぱり境界領域っていうんですかね,分野の境界じゃないですけど,そういうところの話が結構好きだったというのはあるんです.岩澤理論なんてまさに($${p}$$進)$${\bm{L}}$$関数の特殊値という解析的なものと・・・・ 編集者:代数的なものをつなぐ? 原先生:そう,代数的な対象であるセ

        • 答えのない数学#5 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          いろいろな同期の存在編集者:高校のときにガロア理論の存在を知って,大学で本格的にやってみようと思われたとのことですが,その中で例えば書籍ですとか,直接面識があるかどうかは別として数学者の先生ですとか,たぶんその当時は論文はまだ手に取られることはなかったかもしれないですけど,なにかそういうものとの出会いやきっかけのようなものはありましたか. 原先生:あんまり1~2年生に関しては,そんなに.うーん,どうだろうな. 編集者:これは私の勝手なイメージなんですけれど,原先生はすごく

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        • 答えのない数学【津田塾大学 原隆先生 ロングインタビュー】
          7本

        記事

          タウ粒子で「新しい物理現象」を探る【素粒子物理の最前線 #1】

          標準理論を超える「新しい物理現象」の手がかりを求めて、日夜研究にいそしんでいる素粒子実験の研究者たち。 この連載では、素粒子物理学や、Belle II実験とよばれる素粒子実験について、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所の宇野健太先生に解説していただきます。毎月更新予定です。 *    *    * みなさん、こんにちは。高エネルギー加速器研究機構の宇野健太です。専門は素粒子物理学で、主に加速器を用いた研究をしています。 現在は、つくば市にある高エネルギー加速器

          タウ粒子で「新しい物理現象」を探る【素粒子物理の最前線 #1】

          答えのない数学#4 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          「大根を正宗で切る」編集者:突然こんなことを言うと変かもしれませんが,原先生は私なんかが気軽にお話してよい方ではないと,私は自分自身を戒めておりまして. 原先生:いやいやいや,そんなことないですよ(笑).なにをおっしゃいますか(爆笑). 編集者:そのことは最近,はっと気づいたんですけれど,本の宣伝として小社のX(旧ツイッター)のアカウントで『手を動かしてまなぶ 群論』のことをポストさせていただいたんですね.そうしましたら,東京理科大学の加塩朋和先生(東京理科大学創域理工学

          答えのない数学#4 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          答えのない数学#3【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          数学で赤点を取ったことも原先生:実は,中高のときは数学はそんなに得意ではなくて,赤点を取ったこともあったりで.数学自体は好きではあったんですけどね.秋山仁先生(東京理科大学栄誉教授,2016年度日本数学会出版賞受賞)の――. 編集者:有名な数学者の? 原先生:ええ.最近もちょっと出ておられますけど,昔は結構,NHKとかでいろいろ算数とか数学の番組をやっておられて,あれ,割と好きだったんですよ.そういうところから数学も好きというのはあったのかもしれないんですけど,別に高校の

          答えのない数学#3【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          「物理学レクチャーコース」編集サポーターのお仕事紹介 Part.2

          今回のPart.2では、Part.1に続き、「物理学レクチャーコース」の編集サポーターである須貝駿貴さんとヨビノリたくみさんが、本シリーズの中で具体的にどんな関わり方をしているのか、その舞台裏をご紹介させていただきたいと思います。 (須貝さんとたくみさんのプロフィールは、こちらをご覧ください。) 読者の目線で原稿を読み、フィードバックするPart.1にも記しましたが、「物理学レクチャーコース」では、これまでは主として編集者が中心に行っていた「学習する読者(学生)側の目線で原

          「物理学レクチャーコース」編集サポーターのお仕事紹介 Part.2

          答えのない数学#2【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          読書遍歴と文体を巡って編集者:話は少し変わりますが,編集を担当させていただいている間,原先生の書かれた文章には機会があればなるべく目を通すようにしていました.『数学セミナー』さんで書かれたご原稿にしても,『手を動かしてまなぶ 群論』のご原稿にしても,原先生の個性が十二分に出ているなと.数学の本というのは個性を消すといいますか,”定義 - 定理 - 証明“ のスタイルの中でなるべく客観的に書くという感じかなと思っていたんですが,今回は原先生ならではといえる解説の仕方ですとか,文

          答えのない数学#2【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          答えのない数学#1 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          2024年7月某日,津田塾大学小平キャンパスを訪れた.歴史ある建物,芝生の刈り込まれた西洋庭園,豊かな緑.美しいキャンパスである.ここに立つと,筆者はケネディ大統領の1963年の演説を思い出す.今日は数学者・原隆先生にインタビューする日である. 『手を動かしてまなぶ 群論』誕生秘話編集者:この度は『手を動かしてまなぶ 群論』を出版させていただく運びとなり,大変ありがとうございました.まずはじめに,どうしてこの本のご執筆をお引き受けくださったのか,原稿を依頼された当時の心境な

          答えのない数学#1 【津田塾大学 学芸学部 数学科 原隆先生 ロングインタビュー】

          コンパクトなのに丁寧でわかりやすい!『数学のとびら 解析入門』

          ときに、このような問題が出題されたとします。 問いの内容じたいは何となく当たり前な感じがしますが、これを「証明しろ」と言われると少々悩ましいかもしれません。 実際、この手の問題は数列の極限の定義(イプシロン・エヌ論法)に戻ることで示すことができます。 このように数学科の微積分は、“限りなく近づく”といったあいまいな定義では不十分で、より「厳密な議論」を身につけることが必要不可欠です。…が、 等とお困りのかたは多いのではないでしょうか。 そんなあなたに(通販番組)、『数

          コンパクトなのに丁寧でわかりやすい!『数学のとびら 解析入門』

          「物理学レクチャーコース」編集サポーターのお仕事紹介 Part.1

          お蔭様で、2022年の10月に刊行を開始した「物理学レクチャーコース」は、大変多くの皆様方にお読みいただいているようで、担当編集者はもとより、編集委員、編集サポーターも嬉しく思っております。引き続き、本シリーズの趣旨に副った本創りに努めてまいりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。 さて、読者の皆様方の中には、編集サポーターの須貝さんとたくみさんが本シリーズの中で具体的にどんな関わり方をしているのかと関心を持っている方もおられると思います。そこで、これからPart.1とP

          「物理学レクチャーコース」編集サポーターのお仕事紹介 Part.1

          群の “迷宮” へと誘い込む最強独学本!『手を動かしてまなぶ 群論』

          「手を動かしてまなぶ」シリーズに、ついに代数の巻が新登場! 2024年7月上旬発売の『手を動かしてまなぶ 群論』のご案内です。 それでは、Let's go! ((* ´ ` )(* . .))” 本の「序文」から――抽象理論を修得するコツ早速、本の「序文」から見ていきましょう。 新進気鋭の若手数学者が贈る著者は津田塾大学学芸学部数学科の原隆先生。ご専門は 整数論 number theory または 数論幾何学 arithmetic geometry で,とりわけ 岩澤理論

          群の “迷宮” へと誘い込む最強独学本!『手を動かしてまなぶ 群論』

          積分論から測度論へ――『数学のとびら ルベーグ積分と測度』

          「数学のとびら」シリーズの一冊、『数学のとびら ルベーグ積分と測度』(山上滋著)のご紹介です。 ルベーグ積分の入門書は数多く出版されていますが、本書はそのなかでも非常にユニークな書籍です。 ポイント① 測度を経由しないふつう、「ルベーグ積分」というと、まず一般の集合の$${\sigma}$$加法族が定義され、その上の完全加法的な集合関数として測度が定義され、そして可測関数が定義され、ここまできてようやっと単関数の積分を定義して、……と考えているうちに、   あれ? いま

          積分論から測度論へ――『数学のとびら ルベーグ積分と測度』

          ひと味ちがうテキスト『ライブ感あふれる 線形代数講義』

          今回は2024年2月刊『ライブ感あふれる 線形代数講義』(宇野勝博 著)のご紹介です(内容見本公開中)。 著者の宇野勝博先生は、大阪大学で一般教養の線形代数の講義を長年担当してこられました。本書は、宇野先生の工夫が随所に現れた特徴ある書籍に仕上がっています。 特徴その① です・ます調大学の数学の本というと、「た・である調」による無機質な一人語りのイメージが強く、読む側が置いてけぼりになってしまう感があります。 本書では、本文の記述は「です・ます調」を採用しており、著者の

          ひと味ちがうテキスト『ライブ感あふれる 線形代数講義』

          『物理学レクチャーコース 熱力学』で熱力学の本質を理解する

          物理学レクチャーコースは、書籍ごとにカバーの色が異なります。 2023年11月末に刊行した『熱力学』は、「熱だし、やっぱり赤でしょ」ということで、真っ赤なカバー。 今回は、本書の特長をお伝えしたいと思います。 (同時刊行した『相対性理論』の記事は、こちらからお読みいただけます。) 主役はエントロピー本書の特長は、ゆっくりと章をたどっていけば、エントロピーの意味が自然に飲み込めるように書かれていること。 熱力学の書籍には様々なスタイルがありますが、温度からはじめるスタイルや

          『物理学レクチャーコース 熱力学』で熱力学の本質を理解する