『これからの 集合と位相』のすごいところ
数学科には欠かせない知識「集合と位相」。
これまでにもたくさんの好著が上梓されていますが、今回は2022年に裳華房より刊行された『これからの 集合と位相』(梅原雅顕・一木俊助 共著)の「すごいところ」を3つご紹介したいと思います。
すごいところ① 細かいことまできっちり書いてある
たとえば、選択公理の意味、整列集合の意味の丁寧な説明、本文の随所に挿入された小活字の注意など、とにかく隙なく細かいところまで配慮されています。
とりわけ本書の大きな特色は、空集合・空写像の取り扱いについて詳しく記述していること。
実は、本書のもともとのご執筆動機は、「圏論」が大きく普及したことで、空集合・空写像の扱い方をきちんと述べた集合・位相のテキストが必要ではないか、というものでした。
前半の集合論部分ではもちろんのこと、空集合を位相空間・距離空間の仲間として考えた場合の扱い方について、付録の最終節Mで一覧にしてまとめており、他書にはないタイプの入門書になっています。
すごいところ② 「自明」「明らか」をつぶしていく
本書の校正の際、著者の先生がたが共同して、本文に出てくる「自明」「明らか」というワードをすべてあぶりだし、これを可能な限り埋めていく、という、なかなかに気の遠くなる作業をやっていただきました。
演習問題の解答もかなりしっかりと掲載されており、すなわち「読めばきちんとわかる」本に仕上がっています。
まさに、先生がた腐心の労作、珠玉の一冊です。
すごいところ③ 圧倒的情報量
目次をご覧いただければ、本書の収録内容がいかに充実しているかがわかるかと思います。
特に巻末の付録では、「リンデレーフ空間」「パラコンパクト性」「1点コンパクト化」などの、いわゆる
通常の授業では扱いきれないがとても重要な内容
の多くが採り上げられています。
編集者の体感で、「集合と位相」の知っておきたい内容はほぼすべてこの本に載っていると思われます。
講義テキストとしてだけでなく、これから数学を志すかたなら、一冊手許に置いておくと安心な一書です。
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