はじめて関数解析を勉強するならコレ『数学のとびら 関数解析』
2023年10月、シリーズ「数学のとびら」の一冊として『数学のとびら 関数解析 -基本と考え方-』(竹内慎吾著)が刊行されました。
実はこの本、既存の関数解析の入門書では、もっとも敷居が低い書籍だと思われます。
今回は、『数学のとびら 関数解析』のどの辺が初学者におすすめなのか、ご紹介したいと思います。
ポイント① ○○の不等式⁉
第1章は「基本的な不等式」と題して、コーシー・シュワルツ、ヤング、ミンコフスキーなど、関数解析で頻繁に使われる不等式とその証明がまとめられています。
思い起こせば、筆者がはじめて関数解析を勉強したときには、「~の不等式」なんて“名前は何となく聞いたことがあるけど、肝心の内容はよく知らないし、証明もすぐには思いつかない”という代物で、こうした工夫はたいへんありがたく感じます。
ポイント② 微分積分・線形代数の復習も
本書全体を通して、関数解析を学ぶには不可欠な微分積分・線形代数の内容についても、冗長をいとわずに解説されています。
特に気に入っている部分は、関数解析でよく用いられる論法、“lim(極限)ではなくliminf(下極限)をとる”ことの理由を脚注で解説しているところ。
これに限らず、初学者のかたがつまずきそうな箇所には、きめ細かく注意が加えられています。
ポイント③ ルベーグ積分がなくてもOK
関数解析というと、通常は「ルベーグ積分」のあとに続いて勉強するもので、ルベーグ積分の知識があやふやだとついていけなくなる、と思われがちですが、本書ではルベーグ積分を使う話題($${L^p}$$空間など)をすべて後回しにし、主要部分についてはルベーグ積分なしで読めるように構成されています。
「ルベーグ積分の知識には自信がない」というかたは多いのではないでしょうか。ちなみに筆者は、社会人になってようやくルベーグの収束定理を理解したクチです(しかしもう忘れている)。
何度も数学書で挫折した“元数学科”の筆者でもよくわかるほど、ものすごく丁寧に解説されています。ぜひともご一読を。
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