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積分論から測度論へ――『数学のとびら ルベーグ積分と測度』

数学のとびら」シリーズの一冊、『数学のとびら ルベーグ積分と測度』(山上滋著)のご紹介です。

ルベーグ積分の入門書は数多く出版されていますが、本書はそのなかでも非常にユニークな書籍です。


ポイント① 測度を経由しない

ふつう、「ルベーグ積分」というと、まず一般の集合の$${\sigma}$$加法族が定義され、その上の完全加法的な集合関数として測度が定義され、そして可測関数が定義され、ここまできてようやっと単関数の積分を定義して、……と考えているうちに、

  あれ? いま何をしようとしてたんだっけ?

という根本的な問いにさいなまれ、収束定理までたどり着かずにいったん挫折、という険しいルートが一般的です。

イメージ図(本書「はじめに」より)

一方本書では、積分を関数のなすベクトル空間上の汎関数と捉え(ダニエル積分)、これを「級数表示」を使って拡張する、という方式を採用しており、測度を経由せず、リーマン積分の拡張として直接的にルベーグ積分が定まります。

ダニエル積分

これによって、各種の収束定理がかなり早い段階で得られ、積分論の“旨味”に「すっと」たどり着けるようになっています。

ポイント② 測度も入っています

では「測度」は本書で解説していないのか、というと、そんなことはございません。

第3章の「積分と測度」では、測度空間の定義ののち、先ほど定めた積分から測度が定まること、また測度から積分が定まることを確認します。
そのうえで、測度→積分→測度、あるいは積分→測度→積分としたときの対応関係、さらにそこで「$${\sigma}$$有限性」という条件が鍵となってくることなどが、最終節で論じられます。
本書のハイライトシーンのひとつです。

ポイント③ 問題解答が充実

本書の特徴のひとつとして、問題の解答に40頁以上割かれているという点が挙げられます。
百聞は一見に如かず、画像をご覧いただければ幸いです。

「解答の指針」は“指針”以上に充実!?

著者の山上滋先生による、本書のサポートページも開設されています。
積分と測度のユニークな入門書、ぜひ手に取ってみてくださいませ。

数学のとびら ルベーグ積分と測度(山上滋著)
A5判/296頁/定価3300円(本体3000円+税10%)
主要目次 1.連続関数とリーマン積分/2.ダニエル積分/3.積分と測度/4.くり返し積分/5.$${L^p}$$空間/6.密度定理と双対性/7.単調族と可測性/8.ラドン測度/付録A.集合の言葉など/付録B.位相空間あれこれ

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