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義務ではなくて、私が望んで、成長したいと、上手くなりたいと望めるように、なるために。

 閉じた世界の中で、ゆっくりと、留まり続けていることを、望んでしまっている。


 皆が口をそろえて言う。「もっとできるはずだ」と。「成長しなさい」と。私が言われるのは主に仕事で、上司から叱責を受けた後によく聞く台詞。もう30代も後半に差し掛かろうという、働き盛りの男が言われていい台詞ではないように思っている。とにかく人を管理するのが苦手な私は、人に仕事を振ることも苦手で、その原因も何となくわかってはいるけれど、未だ取り除くに至らずにいる。それは決してわざとではないのだけれど、解決しようとした時に、要求される努力量と、常に考え続けなければいけない思考量と、自分を変える時に付きまとう成長痛を、思うと、尻込みして、違う仕事に没頭してしまおうと、するのだ。

 努力しなければならない。成長しなければならない。それは誰のためでもなく、自分のためである。

 このことを私は、未だによく理解できずにいるのだろう。思えば昔から、努力をした、あの時は頑張った、そういう風に思えることが、あまりにも少ない気がした。そう意識して努力していたわけではない、皆がそうするから、するだけで。皆が進学していくから、自分もそのつもりで。皆が働いているから、私も。ただそれだけの感覚で、受験も、就職も、上手くすり抜けていった。その中で、努力していたことも、あるのかもしれないけれど、意識のない成長には、実感が伴わないで、私の思う私と、周囲の思う私の、そのズレが、乖離し続けているように思えた。

 きっと成長した時に見える景色は、今と違うものになるのかもしれない。それこそ目の前が開けたような気持ちになるかもしれないし、次に挑戦できるほどのやる気に満ち溢れているかもしれなくて、でも思ったほど何も変わらずに、淡々とした毎日が続くのかもしれない。けれど、そこに至れない私には、想像することしかできない。自分が楽になったり、生きやすくなったりするのかもしれない。

 私は変化が苦手だ。今までのものを守っていく、そのルーチンワークが心を落ち着かせて、その場に滞留していることを選ぶ。保守的と言えば聞こえはいいのかもしれないけれど、私のそこには主義思想など存在していなくて、ただ、楽だから、このまま、怠け続けていたいという気持ちが、ありありと、見えている。その気になれば、やることを変えなくても、質を変えることはできるはずなのに、そんなことすらも、今のままでいいじゃないかと、あるものでやればいいじゃないかと、誤魔化していく。本当はただ、既存のやり方にしがみついて、何も考えなくても、日々が進んでいく、そういうものが欲しいだけのくせに。動かなければ、成長はない。わかっていながら、怠け癖のある私は、動き出すふりをして、数mmだけ移動して、またじっとしている。

 そしてこのことは、仕事だけではなくて、生活も、趣味も、書くことにも、共通しているようで。成長するために、努力をする、そのことが、どれだけ大変で、でも尊くて、そして必要なことか、理屈では分かったふりをしているけれど、とても理解しているとは、思えなくて。日々を過ごすために、自分が楽しいことだけを、何が楽しいのかも考えずに、ただ時間を消費し続けて、不要なものだけ溜めこんで、それでも生きていけるものだから、変えることもせずに、ゴミの中に埋もれていく。

 希望がなかった。目標もなかった。守るものさえもなかった。そうして生きる人生には、生きているだけで、それが「生」だった。不快を感じない程度に、自分一人が、生きていられればいいと、一度そう思ってしまったら、楽な方へ転がり落ちるのは一瞬で、そして這い上がるための気力がなくて、這い上がるための理由もなくて、底で這いつくばるのではなく、寝転んで、上を見上げて、みんなすごいね、私には真似できないよと、つぶやきながら、死の訪れを待っている。

 ここ数か月の私の変化は、また詩を書くようになったことと、noteを始めたことくらいしかなくて、ただ、消費し続ける生活から、ようやく少しの変化が見えたかなと、思った瞬間には、今度はこうして、言葉を、文章を消費して、生きていくのかなと、思い直してしまっている。

 自分なりに書けばいいし、書きたいように書けばいい。でもそれだけでは、本当に最低限でしかないことに、気づいていた。私はこれを書くことで、多分何かをしたいのだ。はっきりとはしないけれど、好きなものを、書きたいことを書いて、どうにかなれればいいと、望んでいるのだろう。怠け者の私には大それたことだけど、それは一つの、指標であり、目標かもしれなくて、これを粗末にしてはいけないと、したくないと、今は、思っている。

 きっと私のことだから、急いだり、比べたり、意識して勉強をしだすと、またそれを放り投げてしまうだろうから。変わらなければならないことが、成長しなければならないことが、他にもっとあることも、わかっているけれど、今は、赴くままに書いていきたくて、私が生きるために、せめて、底から立ち上がれるようになるくらいには、書くことを、諦めないでいたい。


 文筆乱れてお目汚し。失礼致しました。

 本城 雫


いつも見ていてくださって、ありがとうございます。 役に立つようなものは何もありませんが、自分の言葉が、響いてくれたらいいなと、これからも書いていきます。 生きていけるかな。