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あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 7
四、ひとりは一人、一人は二人に
その後逮捕された女性は、警察の取り調べで犯行の動機をこう話した。
「あいつは何でも持っていて、羨ましかった。私よりかわいそうな時期もあったけど、しばらくしたらまた幸せそうなあの憎らしい笑顔を向けるようになったわ。虫唾が走って嫌だったから、途中から近づくこともやめたのよ。あんなチビでブスなのに、どうしてあんなに与えられるの?どうして私はそれを見なければならないの!
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 6
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キャアッ‼
素明が差し出した手は振り払われ、手に持っていたシャープペンシルはカタンッと音を立てて床に転がった。この音が素明の義母を冷静にさせてくれたのだろう。義母は「あっ、ごめん」と謝った。素明も「うん」とだけ冷静を装って返した。目の前の人間が急に態度が変わったのだ。驚かない訳がないだろう。しかし、二人の間にはそれを出せるだけの関係性はなかった。それでも、このことに気付いて
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 5
三、ひとりは一人、一人は独り
素明には覚えのある部屋だった。彼女は物心ついた時にはもう既に親戚夫婦の家に預けられており、大学を卒業するまでそこで暮らした。厳密にいえば、素明の実の母の妹夫婦の家である。この家には、素明以外に子どもはいない。そして素明には、実の両親と共に過ごした記憶はまるでない。義母に聞くには素明の両親は遠く離れた場所(県外?)で共働きしているらしいのだが、実際のところは分から
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 4
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パンッ‼
素明は書く手を止め、シャープペンシルを床に叩きつけた。数秒前の瞬間は疑いようがないにも関わらず、果たしてあんな物静かな少女がそんな音を創り出せるのか、とその音の発生に居合わせた者ならば誰でも自身を疑ってしまう程、大きな音だった。そしてこの瞬間に、素明はもうこの続きを書くのはやめようと考えた。彼女はそれまで生産され続けていた我が子たちに構うことなく、それら無機物集合体の乗り物
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 3
二、素明の葛藤の痕跡
小学四年生になった。私の人生において二回目のクラス替えが行われ、一年二組、二年二組、三年二組に続いて見事四年二組となった。私が在籍した学年においてのクラス替えの振り分けは二種しかないのにも関わらず、自分が無事に、小学校六年間という時間の半分以上をブレずに「二組」と名乗り続ける人生の確立について、感動と落胆をブレンドしているうちに、木下優子(ゆうこ)、佐藤奈乃(なの)という新
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 2
一、小学校時代
「吉野さんは、うちの学校には入学せず、松木(まつのき)の薮女(やぶめ)小学校に入学するそうですね。」
小学校入学前にある、体験入学なる行事に参加した日、その学校長から掛けられた言葉である。私は困惑した。聞いてなかったのだ。後で聞くと、私はどうやら今の地から松木というところへ引っ越しをする予定らしく、小学校はその引っ越し先が校区に入る学校へ入学するらしい。いわば私は、当時六歳に
あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 1
プロローグ
私は、学校とかいう教育機関が大嫌いだ。義務教育を終え、高校を卒業してもなお数年は学生生活を送る道を選んだが、学校に対する嫌悪感は今も昔も変わらぬまま、今を生きている。なぜ私達は小さな頃から集団行動を強いられなければならないのか。朝は皆一斉に登校し、集団で勉強し、集団で食事し、はたまた集団で勉強に戻り、一斉に帰宅する。家に帰ればただでさえ集団生活なのに、生まれの川とはまた水質の違う海