周回遅れ

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【社会のモノサシ】ミツバチ・スイッチ

「社会はなぜ右と左にわかれるのか」(2) ジョナサン・ハイト、2012 要約 道徳は進化的に獲得された情動に基礎づけられている可能性がある。その場合、道徳作用は博愛ではなく「仲間と敵を識別し、仲間に愛着を持ち、敵を憎むことで、自分を犠牲にするエネルギーを生む」という郷党的利他主義(kin altruism)だ。結束を固めることで、人間集団の戦闘力を強化する一方で、社会分断の元凶ともなる。  郷党的利他主義を高揚するメカニズム(ミツバチ・スイッチ)がヒトに備わっている。宗教は

    • 【社会のモノサシ】郷党的利他主義

      「社会はなぜ右と左にわかれるのか」(1) ジョナサン・ハイト、2012 要約 道徳は進化的に獲得された情動に基礎づけられている可能性がある。その場合、道徳作用は博愛ではなく「仲間と敵を識別し、仲間に愛着を持ち、敵を憎むことで、自分を犠牲にするエネルギーを生む」という郷党的利他主義(kin altruism)だ。結束を固めることで、人間集団の戦闘力を強化する一方で、社会分断の元凶ともなる。  郷党的利他主義を高揚するメカニズム(ミツバチ・スイッチ)がヒトに備わっている。宗教は

      • 【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (4)

        生産要素の制約が社会防衛を要請する ニュー・ディールまでの米国では、保護主義的な立法や行政がほとんどなかった。経済学はこれを自己調整的市場の模範とみなす。しかし、初期の米国では財・労働・土地・貨幣にボトルネックが生じなかったにすぎない。  つまり「生産要素に一切のボトルネックがなければ自己調整的市場は社会問題を起こさない」とは言えるかもしれない。しかし、生産要素の需給に限界が生じると、結局はニュー・ディールを必要とした。これは、むしろ「生産要素に限界がある市場は常に社会防衛的

        • 【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (3)

          コミュニティ無き労働の悲惨 集産主義的立法やその原因となる社会防衛運動を、大衆の経済的利害のみに起因していると思い込むという点では、経済的自由主義者も社会主義者もまったく同じ誤りを犯している。古来、労働とは「誰かのために働く」ことだった。労働は文化でありコミュニティだった。16〜19世紀を通じて賃金労働が労働者からコミュニティを奪ったせいで、史上はじめて「賃金のために働く」ことが世界常識となった。  綺羅星のごとき詩人、思想家、作家が産業革命の悲惨を弾劾してきた。にもかかわら

        【社会のモノサシ】ミツバチ・スイッチ

          【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (2)

          政府による社会防衛とその敗北 イギリスでは、囲い込み(エンクロージャ)で定住地を失った農民が賃金労働者となり、浮浪する貧民が増加した。イギリスの貧民対策は、旧救貧法(1601)、スピーナムランド法(1795)、新救貧法(1834)、という3ステップの歴史で構成されている。  スピーナムランド法が、就労か失業かを問わず一定の賃金水準に足らぬ者にその不足額を給付した結果、労働者は労働意欲を喪失し、企業は賃上げ意欲を喪失した。これをもって「労働市場は飢餓の恐怖がなければ機能しない

          【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (2)

          【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (1)

          自己調整的市場の萌芽(16世紀、英国) 自己調整的市場は16世紀チューダー朝(エリザベス1世)の囲い込みで萌芽した。地主が小作人から耕地を取り上げたり、共同農地を解体して牧用地に転用したり、生産性をあげたりするために再集約することは、土地が慣習に束縛されることなく、商品として売買できることを前提とする。  小作人と羊もまた、交換可能な生産要素、つまり商品だということを前提とする。こうして自己調整的市場には商品化された土地と労働が不可欠となる。16世紀の囲い込みは、自然(土地)

          【経済のモノサシ】 ポラニー「大転換」1944 (1)

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (4)

          「全体最適のプロジェクトマネジメント」 岸良裕司、2011  PDCAのPLANとDOはプロジェクトマネジメント(以下PM)そのものだと思うのですが、一般的なPMの教科書は大げさすぎて、日常のPDCAでは使いこなせません。岸良さんの本を参考にして「普段使いできるPLANとDOのマイ・マニュアル」をつくってみました。いわばPMのアレンジレシピです。 ツール3: 問題点一覧 これは岸良さんの本には書いてなかったと思いますが、便利なのでマイ・マニュアルとして入れてみました。  

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (4)

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (3)

          「全体最適のプロジェクトマネジメント」 岸良裕司、2011  PDCAのPLANとDOはプロジェクトマネジメント(以下PM)そのものだと思うのですが、一般的なPMの教科書は大げさすぎて、日常のPDCAでは使いこなせません。岸良さんの本を参考にして「普段使いできるPLANとDOのマイ・マニュアル」をつくってみました。いわばPMのアレンジレシピです。 ツール2: 工程表 ガントチャートよりフローチャート素人PMに向かないガントチャート  工程表というとガントチャートを思い浮

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (3)

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (2)

          「全体最適のプロジェクトマネジメント」 岸良裕司、2011  PDCAのPLANとDOはプロジェクトマネジメント(以下PM)そのものだと思うのですが、一般的なPMの教科書は大げさすぎて、日常のPDCAでは使いこなせません。岸良さんの本を参考にして「普段使いできるPLANとDOのマイ・マニュアル」をつくってみました。いわばPMのアレンジレシピです。 ツール1: ODSC (Objectives、Deliverables、Success Criteria)Objectives

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (2)

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (1)

          「全体最適のプロジェクトマネジメント」 岸良裕司、2011  PDCAのPLANとDOはプロジェクトマネジメント(以下PM)そのものだと思うのですが、一般的なPMの教科書は大げさすぎて、日常のPDCAでは使いこなせません。岸良さんの本を参考にして「普段使いできるPLANとDOのマイ・マニュアル」をつくってみました。いわばPMのアレンジレシピです。 プロと素人は何が違うのか?  プロとはPMを本業にしている人のこと。素人とは他に本業があるのだけれどPM(つまりPLANとD

          【生産性のモノサシ】 普段使いのPLANとDO (1)

          【生産性のモノサシ】 成長論 (9)

          駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する 中原淳、2021 (増補版) ※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。 【付録】コーナーに関連した知識や考察を追加しました。 第5章 マネジャーの躍進のため、会社・組織にできること よくある誤解: 階層研修(経営陣訓話、労働法など法律知識、メンタルなど医療知識、人事等制度知識など)が、何かあったときの会社側のアリバイづくりになっていないか? 「マネジャーに指示すべきことは指示した、あとはマネジャーの責任」という姿

          【生産性のモノサシ】 成長論 (9)

          【生産性のモノサシ】 成長論 (8)

          駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する 中原淳、2021 (増補版) ※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。 【付録】コーナーに関連した知識や考察を追加しました。 第4章 成果をあげるため、何をなすべきか (その4)挑戦課題 − 5  意思決定 意思決定の難しさ: ① 現場の実態は担当者のほうがよく知っている、にも関わらず、マネジャーが決断せざるをえない、② そもそも白黒つかない問題が上がってくる。これを、① 聞き取り力、と ② 決めきる力で克服す

          【生産性のモノサシ】 成長論 (8)

          【生産性のモノサシ】 成長論 (7)

          駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する 中原淳、2021 (増補版) ※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。 【付録】コーナーに関連した知識や考察を追加しました。また、引用文中の「※」は私の解釈です。 第4章 成果をあげるため、何をなすべきか (その3)挑戦課題―4 多様な人材活用 年長者: まずはリスペクトする(相手を立てる): 経験とはその人の人生そのものだから、その人生をリスペクトする。 そのうえで役割として接する: 「マネジャーという

          【生産性のモノサシ】 成長論 (7)

          【生産性のモノサシ】 成長論 (6)

          駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する 中原淳、2021 (増補版) ※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。【付録】コーナーに関連知識や考察を追加しました。 第4章 成果をあげるため、何をなすべきか (その2)挑戦課題-3 政治交渉(上司編)  上司は邪魔者でもなく崇拝の対象でもない。決断する、後押しする、相談に乗る、後ろ盾になる、ヒト・モノ・カネを獲得する、人脈を広げる、(代表者として)挨拶や謝罪をする、など多彩な役割を果たす立場のことだ。上司

          【生産性のモノサシ】 成長論 (6)

          【生産性のモノサシ】 成長論 (5)

          駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する 中原淳、2021 (増補版) ※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。【付録】コーナーに関連知識や考察を追加しました。引用文に挿入した(※)は私の解釈です。 第4章 成果をあげるため、何をなすべきか (その1)挑戦課題−1  部下育成 マネジャーが最も苦手意識を持つ傾向があるのが部下育成。だからこそ丁寧に考える。 「誰を・どのように・どんな職場で」育てるのか、この3つが大切 そもそも、誰をどう評価しているの

          【生産性のモノサシ】 成長論 (5)

          【生産性のモノサシ】 コーチングって何?

          参考記事:以下、どちらも Harvard Business Review の記事です。 Most Managers Don’t Know How to Coach People. But They Can Learn, August 16, 2018 The Leader as Coach, November–December 2019 生まれつきコーチングが上手な人はいない 実証実験(100人)によると、ほとんどのマネージャーは「部下にやるべきことを指示する」ことし

          【生産性のモノサシ】 コーチングって何?