見出し画像

【生産性のモノサシ】 成長論 (8)

駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する
中原淳、2021 (増補版)

※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。 【付録】コーナーに関連した知識や考察を追加しました。

第4章 成果をあげるため、何をなすべきか
(その4)

挑戦課題 − 5  意思決定

  • 意思決定の難しさ: ① 現場の実態は担当者のほうがよく知っている、にも関わらず、マネジャーが決断せざるをえない、② そもそも白黒つかない問題が上がってくる。これを、① 聞き取り力、と ② 決めきる力で克服する。

  • 聞き取り力: 現場の様子は現場でしかわからないのだから、現場から、つまり部下から、学ぶ。けれど鵜吞みにしない。部下も自分に不都合なことは言わなかったり言い方を変えたりする。 意見を聞くのは自分の目と耳で観察し、自分の「モノサシ」を育てるため。日頃から広く意見を聞いて、判断のモノサシを育てておく。 

  •  決める、決めたらやりきる/やらせきる: 白黒つかない問題が上がってくるのだからメリットとリスクは半々が当たり前。比較表や意思決定マトリックスを使って思考を整理する。そのうえで、51:49でも決断する。決めたらやりきる。

  • やりきらないことの悪循環: 決断しても結果が出る前に迷いが出て方向を変えると、今度は結果に白黒がつかない。白黒つかないと、省察する材料がない。だから省察も概念化も生じない。挑戦と、白黒のつかない混沌とした経験のあいだをぐるぐる回るだけで、いつまでたっても省察にたどり着けない。負け戦とわかっても頑張るのは意味がない。しかし弱気になるたびに決心を変えては迷走するばかりだ。  

【付録】 やりきることは、見届けること

 決定したことが、目論んだとおりになることは少ない。・・(古来)どの国の軍隊も、命令を出した将軍は、・・出かけていって・・自分の目で確かめなければならないことをずっと昔から学んでいる(・・世界最古の戦争の教科書というべき中国の文献も、ツキュジデスも、クセノフォンも、さらにはシーザーも、当然のこととしている)。・・出かけて行って自分の目で見るという「自己規律」を自らに課さない限り、・・一人合点に陥り、・・効果的な実行を不可能にしてしまう。
 ・・意思決定は機械的な仕事ではない。・・リスクをおかすことであり、また判断力に対する挑戦でもある。・・意思決定は「知能」の演習ではない。・・ビジョンとエネルギーと資源を総動員することである。

ドラッカー「マネジメント」1974

  結局のところ、白黒つかない問題に白黒をつけ切って、その結果をもとに次に進むということがマネジャーの意思決定の重要な役割のようです。ということは、マネジャーの責任を問われる場面も生じます。もちろん、失敗するより成功するほうが良いに決まっていますが、失敗を恐れて白黒つけないまま放置することのほうが、組織にとっては害が大きいといえそうです。ドラッカーは「失敗しない者を信用するな」とも言っております。

挑戦課題 ― 6 マインド維持

  • 孤独なマネジャーにならない

  • 孤独なマネジャーの職場業績(4.4)は低い。助言をもらえるマネジャーの職場業績(4.8)は高い。助言者の存在はメンタルだけでなく業績にも好影響を及ぼす。

  • 励ましてくれる人や辛口の意見を言う人がいい感じにミックスしている人的ネットワークを積極的につくりだしメンテナンスする。 

 (自己評価でつけるべき)自分の点数を知りたければ、あたりを見渡して、「人を見る眼」がありそうな人を探せばいい。そして、その人に「私は何点くらいかな」と訊けばいい。あなたに「人を見る眼」があれば、その問いにきちんと適切な解答をしてくれる人を過たず探し当てることができるはずである。
 正確な自己評価などというものはこの世に原理的に存在しない。にもかかわらず「正確な自己評価が出来ている人」が存在するように見えるのは、その人が「自分についての適切な外部評価を下してくれそうな人」を言い当てる能力をもっているからである。

内田樹「武道的思考」2010

 自己の強みと信じているものは、たいていが見当違いである。・・何事かを成し遂げるのは、強みのゆえである。弱みによって何かをまっとうすることはできない。もちろん、できないことから成果を生み出すことなで、とうていできない。

 共に働く人たちの所に行って、自己の強み、仕事の仕方、価値観、目指す貢献、目標としている成果を話してみれば、反応は必ず「聞いてよかった。どうしてもっと早く言ってくれなかったか」である。しかも、「それでは、あなたの強み、仕事の仕方、価値観、目指したい貢献について知っておくべきことはないか」と聞くならば、ここでも「どうして早く聞いてくれなかったか」である。知識労働者たる者はすべて、部下、同僚、チームのメンバーにこれらのことを聞かなければならない。常に反応は、「よくぞ聞いてくれた」である。

 信頼とは好き嫌いではない。相互理解である。

ドラッカー「自己探求の時代」1999

挑戦課題 ― 7 プレマネバランス

  •  スケジュール帳をもとに、時間の使い方を分析してみる

  • 一週間なんのために時間を使っているか見直す: ① 自分がやりたいこと、② 自分がやらなければならないこと、③自分がサポートするなら、他人に任せることができるもの、④ 自分のサポートなしでも、他人に任せることができるもの、に仕訳ける。

  • 分析を通じて「自分がやらないことを決める」ということは「他者に任せることを決める」。 結局、部下の育成に注力することでもある。

  • 時間が断片化していないか見直す: マネジャーの仕事は、多種多様な作業に分断されて、細切れになりやすい。一日にどの程度、作業に集中する時間を確保できているか測定してみる ➡  資料作成など集中時間が必要なものはまとめて実行 してみる。プレイヤーとしての時間と、マネジャーの時間をそれぞれまとめて実行してみる。

【参考】 マルチタスクの罠
 
断片化の弊害を TOC(Theory Of Contraints) ではこのように説明しています。A、B、Cのタスクがあって、どれも一日かかる。A、B、Cを順番に片付ければ、毎日、A、B、Cの順に完了して、つぎの工程に渡すことができる。ではA、B、C同時に着手すると、3日後にA、B、Cが一斉に完了するだろうか?その場合ですら後工程はAを2日、Bを1日余分に待つ。それだけでも罪作りだが、実はもっと遅くなる。
 Aの仕掛りからBの仕掛りへ、Bの仕掛りからCの仕掛りへと切り替えるたびに、段取り替え(仕事に着手するための準備)が発生する。同時に進めようと作業時間を断片化するほど、段取り替えの時間が膨れ上がる。知識労働の段取り替えとは、A作業を中断した直後の思考状態から、B作業の再開に向けて思考を整理し直すことだ。これがペースを遅らせる。結局、優先順位をよく考えて、段取り替えを最小化することが時間の有効活用につながる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?