見出し画像

【生産性のモノサシ】 成長論 (9)

駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する
中原淳、2021 (増補版)

※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。 【付録】コーナーに関連した知識や考察を追加しました。

第5章 マネジャーの躍進のため、会社・組織にできること

  •  よくある誤解: 階層研修(経営陣訓話、労働法など法律知識、メンタルなど医療知識、人事等制度知識など)が、何かあったときの会社側のアリバイづくりになっていないか? 「マネジャーに指示すべきことは指示した、あとはマネジャーの責任」という姿勢になっていないか? マネジャーは多様な責任の板挟みに苦しんでいるのだから、責任を押し付けるだけでは事態は改善しない。ディレンマにどう立ち向かうかという気付きの機会が大切。マネジャーは気づきで育つ。それが会社のためにもなる。

  • 効果的なマネジャー育成とは: マネジャーになる前や、なった直後、すなわちエントリーレベルにおいて、さまざまな施策を行うことが効果的。
    ① 1年程度メンターをつける、② フォローアップ研修(グループワーク)は比較的効果が証明されている。

  • フォローアップ研修(グループワーク)の実施例: ① 参加者が抱えている課題の棚卸、② 職場・部下を知る(自分の職場を描写する、語る、コメントしあう)、③ 自分を知る(ペアで相互インタビューして相手の履歴書をつくる)、④ 上司と組織を知る(役員から呼ばれて成果を出せと迫られる場面などのテーマで即興劇を演じる)、⑤ 統合ワーク(3か月後、6か月後、1年後にどうなっていたいか紙芝居で発表)など。

  • 新しい試み: ① ペア・コーチ制(同世代のマネジャー同士でペアを組んで相互にコーチングする)、② OJT指導員制度(1年以上の経験があれば後輩の指導員に任命、OJT研修を受けさせて、辞令交付する)、OJTはミニマネージャー研修としての効果がある。

  • 投資対効果: 先行研究によると、マネジメント研修の効果は確かに存在し、また投資対効果も存在することがわかっている。しかし「分散が高いこと」もわかっている。ということは「研修の効果は、どのような研修をなすかで大きなバラツキがある」ということ。

第6章 〈座談会〉生の声で語られる「マネジャーの現実」

 この章は、要約では伝わらないと思うので省略します。

第7章 残業は「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」する

調査結果

  • 2017 年、さまざまな企業の6,000人を調査

  • 集中: 残業は仕事のできる人に集中する、特に最近はマネジャー層に残業が集中する傾向がある(部下に仕事を頼みづらくなった)。

  • 感染: 周りの人が残業していると職場で弱い立場にある人(ふつう若年層)も帰りづらくなる。

  • 麻痺: 驚くべきことに、長時間残業が月60時間以上になると幸福度、満足度が上がる(45~60 時間/月あたりで幸福度が最低になり、それを超すと逆に上昇する)。実際には、長時間残業者は「食欲がない(2.3倍)」「強いストレスを感じる(1.6 倍)」「重篤な病気・疾患がある(1.9 倍)」わけだから、自己認知に関して正常な判断ができなくなっている。麻痺したまま健康が蝕まれる。

  • 遺伝: 若いころ長時間残業していた上司の部下は残業時間が長くなる。職場に定時と残業を区別する意識がなくなる。特に新卒入社のタイミングを逃すと、定時/残業意識を身に着けることができない傾向がある。 

対策は「全社施策」「職場マネジメント」「個人の意識」

  • 全社施策: ノー残業デー、上限設定、事前承認制など。サービス残業という副作用を生まないためには、複数チャネルで周知することが効果的。メール、イントラネット、ポスター、説明会、役員訓示などで1年以上根気よく。

  • 職場マネジメント: 残業が多くパフォーマンスの悪い職場の特徴は、 ① 部下の仕事の進捗を把握していない、② 指示や判断の基準がよく変わる(上から降ってきた仕事をそのまま現場に伝えるから、つまり目標咀嚼ができていない)。

  • 逆に、残業が少なくパフォーマンスが良い職場は、① 指示や判断を早く行う、② 業務上の指示を明確に行う、③ 指示や判断の基準がブレない。

  • マネジャーは業績と残業の板挟みになっている。マネジャーに気づきや成長の機会を与えるような会社の支援も重要になる。

  • 個人の意識: 70 項目の個人特性のうちただひとつ圧倒的に影響があるのは「残業代を前提に家計を組み立てている」(全体の41%、45時間以上の49%)という項目。報酬制度は残業問題と強く関連している。残業削減できたら賞与に反映するなど、制度改善の試みもはじまっている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?