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【生産性のモノサシ】 成長論 (6)

駆け出しマネジャーの成長論、7 つの挑戦課題を「科学」する
中原淳、2021 (増補版)

※ 私なりの理解を章ごとに要約しました。【付録】コーナーに関連知識や考察を追加しました。

第4章 成果をあげるため、何をなすべきか
(その2)

挑戦課題-3 政治交渉(上司編)

  上司は邪魔者でもなく崇拝の対象でもない。決断する、後押しする、相談に乗る、後ろ盾になる、ヒト・モノ・カネを獲得する、人脈を広げる、(代表者として)挨拶や謝罪をする、など多彩な役割を果たす立場のことだ。上司の立場を活用すること(ボスマネジメント)は部下としての仕事の一部であって、上司にとっては活躍の場を得ることでもある。

  •  上司交渉の3ステップ: ① 上司を分析する、② 良い関係を築く、③ 段取りとロジックを駆使する

  • 上司を分析する: ① 上司の目標/目的、② 上司の強み/弱み、③ 上司のクセ(好みのワークスタイル)、④ 上司が気にしている利害関係(誰とどのような)を書き出し、自分のそれと比較する。合うところ、合わないところ、反発するところ、補完できるところを理解する。

  • 良い関係を築く: 他人の性格はなかなか変えられない。だから自分の「つきあい方」を工夫する。つまり、上司のクセを理解して、こちらがクセに対処する。

  • 段取りと意思決定ロジック: 結論へ導くための情報は日頃から進捗のつど報連相しておく。小出しにしてサプライズをなくす。ロジックでは、① 会社の利益になる、② 職場の利益になる(ひいては上司の利益になる)、これを説明する。

【付録】 上司のクセ

「読む」「聞く」「書く」「話す」: これはドラッカーが指摘しております。「読む上司」には書面で報告する、「聞く上司」には対面で説明する。「書く上司」は書きながら頭を整理する。「話す上司」は話しながら頭を整理する。といった内容だったと思います(ドラッカー「自己探求の時代」1999)。

ダメ出し・ちゃぶ台返し・放し飼い: これは私の経験的分類です。
 「ダメ出し」は、ことあるごとにダメ出ししてくる上司。「ちゃぶ台返し」はものごとがある程度煮詰まったところでその企て全体をひっくり返す上司。「放し飼い」は、うまく行くときは上司からの干渉が少なくていい気分ですが、安全装置が壊れているようなものなので、失敗するときは大惨事になりかねません。
 どんな仕事にも「このままでは危ない」という警報発令の場面があると思います。そのタイミングが上司によって違います。ストレスフルな上司のクセは、業務進捗のレビュープロセスに何か欠陥があることの証ではないでしょうか? ということは、本章前編のテーマである人材育成の定石である「① 目標咀嚼 ➡ ② アクション ➡ ③ リフレクション」のサイクルの頻度ややり方に何か問題があることになります。

【付録】 意思決定ツール

比較表: 合意が得られないのは、① 目的(複数)と重要度が合意されていない、② 選択肢が考えつくされていない、③ メリットとリスクのバランスが悪い、これら三つのどれかです。ですから、選択肢・目的と重要度・リスクを並べた比較表でスコア付け(◯△✕)すれば、なぜこの選択肢が最良なのかという合意が得やすくなります。KT法(ケプナー・トリゴー法)のDA(Decision Analysis 意思決定分析)はこの原理をさらに精密化したものです。

 変化の4象限: 反対派が「やることにメリットがない」と真正面から主張することは少ない。たいていは「やるとこんな副作用(デメリット)がある」と主張する。そこで、① 「やらない」ことにも副作用(デメリット)がある、② 「やる」ことの副作用はこうやって減らせる、という筋書きを逆提案すると合意に近づく。本書では「意思決定マトリックス」として紹介されており、TOC(Theory Of Constraints 制約理論)では「変化の4象限」という呼び名で紹介されます。

挑戦課題ー3 政治交渉(他部門編)

  マネジャーやPJマネジャーは他部門との交渉の矢面に立たざるを得ない。マネジャーの肩書は、もともとそのための肩書だからだ。

  • 他部門の長との交渉3ステップ: ① 他部門の現状理解、② 関係構築、③ 相手のメリットと錦の御旗。 

  • 現状理解: ① 目的/目標、② 事業環境、③ 強み/弱み、について他部門と自部門を比較。合うところ、合わないところ、反発するところ、補完できるところを理解する。 

  • 関係構築: 直属の上司はいやでも関係ができてしまう。しかし、他部門との付き合いには意図的な努力が必要だ。必要が出てから巻き込もうとしても遅い。「いざという時、難しい相談がしやすくなるよう」日常的な関係構築を継続する(顔出し、遊泳、お礼)。

  • 錦の御旗: 部門同士の反発を乗り越えて「会社のためには、やるしかない」という共通の利害が錦の御旗だ。会社のビジョン・ミッション・中期計画などはパワフルな錦の御旗となる。


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