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【ミカタをつくる広報の力学】 #47 SDGsウォッシュを考える

今回は、最近よく聞く「SDGsウォッシュ」について書きます。

広報活動をしていると、どうしても盛り気味に書きたくなってしまうものですが、それが危険信号。
ウォッシュにならないための方法についても書いていきます。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


いま流行の「ウォッシュ」とは

今回のテーマである「ウォッシュ」という言葉。
最近「SDGsウォッシュ」という使い方でよく聞くようになりました。
ジーンズの加工でも、チーズの種類でも、もちろん洗濯のことでもありません。

ネットで調べてみると、元々の語源は「ホワイトウォッシュ」
古い建物などの汚れた部分を白い塗料で塗りつぶして隠したことから、
「うわべだけを着飾って取り繕う」というような意味があるそうです。

その「ホワイトウォッシュ」を、かつての環境ブームの際にホワイトならぬ「グリーン」で着飾っていたことから、「グリーンウォッシュ」という言葉が使われ始め、今では「SDGsウォッシュ」と言われるようになりました。

日本語で言うなら「なんちゃってSDGs」とか「似非SDGs」といったところでしょうか。
表向きでは「SDGs取り組み企業」を謳っていながら、実際はサステナブルとは程遠い企業のことです。

こうした「言行不一致」は、PR活動に限らず、ビジネスにおいては「裏切り行為」と言われかねません。

にもかかわらず、ウォッシュが頻発するのはなぜでしょう。

はじめからウォッシュと分かっていて行う場合は別ですが、大抵の場合には自覚もなくウォッシュ化しているような気がします。
その原因の一つとして「目的意識」が関係しているのではないかと思うのです。


ウォッシュ化の原因は目的意識?

ウォッシュ化の原因が目的意識にあると書きました。

ビジネスの現場においては、労働や物品を提供して対価を得るといった純粋な商行為以外に、管理業務や事務手続き、人間関係、法令順守など、様々な不随行為が重要となってきています。

ですが、本来の目的はやはり商行為であり、利益獲得であり、価値提供のはずです。その他の行為は、もちろん軽視できないですが、付帯業務や付加価値にすぎません。

個人事業主のように従業員は自分ひとりで、顧客も一人しかおらず、商品も一つしか無ければ、付帯業務も順守する法令もコミュニケーションも最低限で済みますが、法人となって、従業員を雇って、多角的な事業展開をして、営業活動をして、他企業と競争して、戦略的なマーケティングを展開して、となると、世の中の動きに合わせて色々考えなければならず、付帯業務も付加価値も増えていきます。

まして昨今のような「VUCA」と呼ばれる「先の見えない不明確な時代」には、いろいろな付加価値の選択肢が増えがちです。

ISO取得とか、健康経営企業とか、ESG銘柄とか、プライバシーマークとか、ISMS認証とか、制度が出てくるたびに、認証されないと世間から取り残されるような気がしてしまいます。

現在ブームのDXやSDGsは認証制度ではなくガイドラインですが、同調圧力を感じている人も多いのではないでしょうか。

これが、目的意識を鈍らせる原因です。

つまり、本来のビジネスに対する付加価値ではなく、ブームに乗ることが目的化してしまう。「自社のビジネスをサステナブルに進めていきたい」ではなく、「SDGsのバッジを付けたい」になってしまう。

これでは本末転倒。ウォッシュ化するのは無理もありません。

バッジや認証はあくまで活動の結果に与えられるものなので、まずはビジネスとの関連性を考えて活動の目的を設定することが重要です。


SDGsウォッシュにならないために

ウォッシュにならないSDGs活動をするためには、まず「何のサステナビリティを実現したいのか」を考えるのが良いかと思います。

ひと口に「サステナビリティ」といっても、SDGsには17の目標と169のターゲットがあるので、すべてを網羅している必要はなく、宣言にある目標数値を自社だけで実現するわけでもありません。
「どの項目に対して貢献できるか」という観点から活動すれば、それだけでSDGs活動になります。

企業理念から考えたり、事業ドメインから考えたり、ミッション・ビジョン・バリューから考えたり、様々な角度から考えることができますが、もし分かりにくければ、「仕入れ」と「顧客」の観点から考えてみましょう。

例えば、食材を仕入れている企業であれば、海が汚れて魚が少なくなったり、環境破壊のせいで野菜の不作が起きると、仕入れ値が高騰したり仕入れられなくなったりします。
これでは事業が成り立たなくなるので、永続的にビジネスを維持するためにSDGsへの貢献活動をすることになります。
この場合は「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさを守ろう」です。具体的な例としてはプラスチックや廃棄物の削減などが該当し、実効例はリユースや包装資材の簡素化などになります。

顧客の観点から言うと、このまま日本の人口が減り続けた場合、消費者がどんどん減っていくことになります。
それもまた永続的なビジネスが成り立たなくなるので、あらゆる人を顧客にできた方が良いでしょう。
この場合は「10.人や国の不平等をなくそう」が該当し、人種や性別、障害などで差別することなく、すべての人に対して同等に接するコミュニケーションを推進することでSDGs活動になります。
施設のバリアフリーやユニバーサルデザインの商品開発など、障害者福祉の事例はたくさんあると思いますが、障害者施設などで実際に障害者の人からヒアリングをさせてもらうと、より具体的な解決策のヒントが得られることもあるので、積極的に交流してみるのも良いかと思います。

この項目に関しては、顧客の観点だけでなく、従業員の観点からもアプローチできるので、障害者雇用率や働き方改革にも結び付くかもしれません。

いずれの場合も大切なのは、SDGsのために活動するのではなく、自社のビジネスを維持していくための活動だという「目的意識」を忘れないこと。
そうしないと知らず知らずのうちに「ウォッシュ」に陥ってしまいますので。

施策については、以下の過去記事も参考にしてみてください。



おわりに

今回は、SDGsウォッシュにならないための取り組み方について書きました。

SDGsは2030年という10年後の目標なので中期計画よりも先の話。なかなかリアルに認識するのは難しいかもしれません。
そういうときは子どもと話してみると、未来への想像力が膨みますので試してみてください。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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