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オマージュ(仏語: hommage)とは、影響を受けた人や作品に対する〈敬意〉であり〈尊敬〉の意。

シェフの進藤です。
今日の写真は当店の人気商品〈オマージュ〉。
1年に1度、短い期間だけ販売する幻の商品。実は、私の大のお気に入り。
フランス語に順じた発音は、〈マ〉を強く言うのではなく、最初の〈オ〉を強めに出して、後を平坦に発音。

お気に入りの〈オマージュ〉

他に比べて仕込みが繁雑な為、ちょっと作るのが億劫になってしまうケーキなのですが、この〈オマージュ〉を心待ちにしているお客様がたくさんいる事と、私も1年に1度くらいは食べたい!の2つをモチベーションとして、毎年作っています(笑)。

今年は〈ホワイトデー〉に合わせて、3月14日からの登場となります。
本当は2月中に販売開始する予定が、繁忙からズルズルと3月になってしまいましたが、今後続々と登場する春商品との兼ね合いもあり、今年は2週間程度の販売となりそうです。ご希望の方は、お早めのご購入をオススメ致します。すみません。
あ、もちろん1日に販売する個数には限りがありますので、販売期間中でも売り切れの際はご容赦下さい。
以下はその〈オマージュ〉の詳しい説明になります。

元々は10年前、オープン当時に販売していたケーキ。以前にも書きましたが、当店のオープン当初は〈ショートケーキ〉や〈シュークリーム〉、〈プリン〉〈モンブラン〉等の定番商品ばかりが売れ、逆に、凝った複雑な構成のケーキが全く売れずで…。
売れない物はドンドン入れ換えるのが商売の鉄則。なので、自分としてはかなりの自信作であるにもかかわらず、〈お蔵入り〉にせざるを得なかったケーキがいくつもありました。こちらもその1つ。
ですが、4年前にふと思い立って全面リニューアルし、再販を開始しました。

当店の数あるオリジナルケーキの中でも1~2位を争うくらい、〈私が個人的に大好きなケーキ〉なんです。〈自分が食べたいから作る〉そんなケーキ。
上面のデコレーションは独特で、綺麗な波模様に絞り出したクリームの上に、四角にカットした板チョコレートを複数枚使い、螺旋状にダイナミックに飾り付けています。
このチョコは見た目の演出を担うと共に、ケーキと一緒に食べると〈ポリポリ〉と心地よい食感を付与してくれます。
こういう仕上げ(デコレーション)を考える度に、フランスで約2年間暮らし、働いた事がとても大きかったと実感します。
自分の中での変化はいくつもありますが、仕事に限定すれば〈デコレーション〉に対する考え方が一番変わった所かもしれません。
日本ではやはりシンプルイズベストの指向が強く、飾りも〈引き算〉の考えが主流。基本的には私もその考えに〈賛成〉な1人ですが、フランスの一流シェフの仕事を間近で見ていると、〈足して足して、盛って盛って、見事に調和させている〉事に気づきました。

〈足し算〉の考え方。

これはわざわざ海外に行って体感しないと、刷り込めない感覚だと思います。
嫌味にならない様に盛る感覚。単調にならず、バランスを取りながら華やかに飾る。
日本に戻ってからは、そういった向こうで習得した感覚を〈適切なタイミング〉で使いたいと思っていて。
さっきも言いましたが、基本は〈シンプル イズ ベスト〉(笑)。

若い頃フランスに渡り、異文化の中で生活する大変さは短い時間では説明できないくらい沢山ありましたが、見る物・触れる物全てが新鮮で、いつもアンテナを張りながらポジティブでいる事で、その中から得られる物が私の場合は大きかったです。
よかったら、こちらも是非ご一読下さい。

「フランス修行は成功だった?」

とたまに失礼な事を聞かれますが、ちゃんとフランス語を話し、〈ただ働き〉ではなくしっかりと給料を貰い、フランス人とほぼ対等に働いた自負から胸を張って「もちろん!」って答えています(笑)。
ん…話が大きく逸れてしまいました。
そろそろ本題に。

このケーキは私が若い頃、修業時代に大きく影響を受けた2つのケーキに対する〈オマージュ(敬意)〉を込めて作った物です。
1つはピエール エルメ氏の『プレジール・シュクレ』、もう1つはジェームズ ベルティエ氏の『サン・ミシェル』。

前者については〈有名なケーキ〉過ぎるので今更私が言うまでもありませんが、若い頃初めて食べた時、その〈圧倒的な創造力と美味しさ〉にビックリして、

「うまっ!」

と呟いたのを覚えています(笑)。
味の構成はミルクチョコレート×ヘーゼルナッツなのですが、それだけで片付けられる程単純な物では無く…。
とりわけ食感が、それまでに作った・食べた事のあるケーキとは明らかに違っていて。こんなに食感の楽しいケーキは初めて!ってなりました。

ケーキを構成する2枚の板チョコレートがポリポリと心地よい食感を与え、スポンジのフワフワとガナッシュのねっとりとの対比が面白くて。中でも特筆すべきは、今では当たり前になりましたが、ロイヤルティンヌやパユテ等のサクサク食材(クッキー)を、油分メインな素材〈プラリネ〉と、更に同じく油分素材(水分を持たない材料)であり更に冷蔵で固まる性質を持つ〈チョコレート〉に絡める事で、外からの水分侵入を完全にブロックし、水分多過な〈ケーキ〉を構成する1部分でありながら、長時間のサクサク・カリカリを実現するパーツ→〈プラリネフイユティン〉なるものを使用していて。
本当にビックリしました。

後者はパリの『シュクレ・カカオ』でスタージュをしている時にラインナップにあったケーキ。結局、当時の役割分担から作る事は叶わなかったのですが…。
味の構成は『プレジールシュクレ』に似ているケーキなのですが、完コピではなく、〈自分ならこういうケーキはこう作ります!〉という主張がしっかり成されていて。
しっかりと確立された〈ベルティエ流〉のいちケーキとして存在しており、その事で改めてオリジナリティの大切さを教わりました。

〈自分の菓子〉とは一体どのような物か?

考えさせられましたね。
リ・スフレ(ライスパフ)という食材に初めて出会ったのもこの〈サン・ミシェル〉でしたし、私は普段フランス菓子的なものにはオリジナル配合の〈ビスキュイジョコンド〉しか使わないのですが、そのケーキにはダコワーズが使われていたので、勿論この〈オマージュ〉にもその2つは使用しています(笑)。

〈オマージュ〉の構成は下から、リ・スフレ+パユテを使ったフーユチン(サクサククッキー)、ヘーゼルナッツプラリネのバタークリーム、ヘーゼルナッツのダコワーズ、ビターチョコのガナッシュ、香ばしく焼いたヘーゼルナッツ、薄板チョコ、ミルクチョコのガナッシュ、飾りの薄板チョコ、金箔になります。
いつも通りレシピは完全オリジナル。
自分言うのもなんですが、とってもハイレベルなフランス菓子を、少し日本人向けにアレンジしたケーキです。いつもの私の菓子に比べるとちょっと甘めに感じるかもしれませんが、そこも上記の2つの菓子への〈オマージュ〉という事でご容赦を。
お気に入りの〈濃いコーヒーや濃い紅茶〉等と合わせて頂くと丁度良いのでは?と思います。

このケーキの味わいも、確実に〈違いの分かる大人向き〉。チョコ好きにはたまらない一品。
ではいつも通り、論より証拠。ご来店をお待ちしております。

その他の期間限定商品も如何ですか?



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