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アカシアの雨 第五話「屋上で」
屋上で
次の日の授業が終わり、波瑠は特別棟の美術フロアの廊下を歩いていた。薄暗い廊下は、個人ロッカーから画板、イーゼルなどの画材、静物デッサンで使う石膏のミケランジェロや聖ジョルジョなどの胸像、半身のトルソー、球や角柱などの幾何学体など、両脇にある棚や台座に所狭しと置かれていて、雑多でカオスな状態だ。
その奥にある、生徒の作品が飾ってある一角で足を止めた。
秋の文化祭で展示された、いくつ
アカシアの雨 最終話「さよなら、またね」
さよなら、またね
十二月、期末試験が終わった頃、苑はバタバタと周囲に挨拶を済ませて、海外に転校していった。行き先はボストンと聞いたが詳しくは語らず、最後まで苑らしく、あっけらかんとした別れだった。
終業式が終わり、生徒たちはほとんど帰宅し閑散とした夕方の校内を、波瑠は副校長室に向かって歩いて行く。
ノックをすると、「どうぞ」と声が聞こえた。
ドアを開けて入室すると、いつものように上品にス
アカシアの雨 第四話「アカシア」
アカシア
祐は「二、三日くれ」と言い、調査を引き受けてくれた。
とりあえずはこれで連絡を待つ間に、波瑠は生徒の情報収集に徹することができる。
授業をこなしながら、数日はそれとなく生徒たちを観察してみた。雰囲気としては好奇心に浮ついているという感じで、わかりやすい動揺は見られなかった。
事件についてはすでにクラス担任から話はされている。近隣で傷害事件というだけでも衝撃的だが、どうやら生徒間