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部下へのアドバイスから気づいた大企業病人事の不安らしきもの

部下に聞かれた何気ない質問に回答しているうちに、自分の中でモヤモヤとしていた僕が所属する会社の大企業病のようなものが輪郭を作り始めた気がしたのでここにまとめてみようと思っいました。
そしてもし奇跡的にこの記事が誰かの目に留まったときに、似たようなことを考えている人、全く違う状況に置かれている人から少しでもコメントがもらえたらすごくうれしいです

部下のとの対話で気づいた自分の矜持

先日、入社歴の浅い部下との個人面談中にこんなことを聞かれた。
『社会人として仕事にあたる中で意識しておくべきことは何ですか?』

社会人に限った話でもないが、僕は昔から思っていたことを部下に伝えた。


『選挙の日には投票に行け』


意識しておくべきことを聞かれて『投票に行け』とはまた我ながらズレた回答であるが、部下に伝えた僕の考えを書いてみる。

僕が伝えたかったことは、政治に興味を持てということではない(持った方がいいけど。)

投票は義務ではない。
投票する自由を持っているのだから、投票に行くも行かないも本人の選択の自由である。

ただし『行かない』ことを選択したのであれば、自分に対してその選択にふさわしい責任を感じてほしいのである。

ごちゃごちゃ書いたが要は『投票にも行ってないくせに政治について居酒屋でクダをまくのは恥ずかしいよ』ということである。

『どうせ誰がやったって同じなんだから投票には行かない』
『政治のことはよくわかんないから投票に行かない』
それも自由。
しかし、投票に行ってない=『誰が当選しても構いません』『ほかの投票者の選択に任せます』という明確な意思表示であることを理解してほしい。
他人に権限を委任した以上は、その結果がどうなって文句を言ってはいけないよ。ということである。

例えるならば
妻『今日の晩御飯は何食べようか?』
夫『何でもいいよー。』
妻『じゃあカレーにしよう。』
夫『えー。カレーはやだー。』
妻『はぁ?じゃあ何がいいのよ?』
夫『何でもいいよー。』
妻『はぁぁぁぁぁ??


これである。

もしこんなやり取りが迂闊にTwitterなどに上がったもんなら、今のご時世女性擁護団体からの総攻撃必至であることはお分かりいただかるだろう。

今日の晩御飯から政治の話まで幅広く通じる考え方なのだから、当然仕事にも当てはまると僕は考えている。

自分の意思表示を放棄しては反対意見を出してはいけない。
それは反対意見と似ているが、反対意見ではない。自分の意見を堂々と提示していない場合、それは単なる根拠なき否定にである。


自分の意思表明に責任を持つ。
自分の意見が通らなくて、且つ結果がともなわなかった時だけ文句を言える。
そして、それ以外はの場合は反省し、糧にする。

そうしないと自分の意見に責任が乗らない。
責任なき発言と社会人としての発言の差がわからないサラリーマンは何も深い考察をする習慣がつかないので実力ないまま歳をとっていく。

だからあらゆることを自分事として受け止めながら仕事をしてほしいと部下に伝えた。

と、同時に自分が社会人として大事にしていること(矜持と大袈裟に書いてます)がなんだか少しはっきりした。

僕が感じていた違和感の正体らしきもの

さて。こんなことを書いても
『何だこりゃ。どっかのツイッターに10万件くらい投稿されてる普通のことを140文字以上使って言ってるわ。ウケる。

と思われてしまったかなと思います。(どうですか?)


でも、わざわざこんなことを長々と書きたかったのには意味があるんです。


部下に伝えたいこと=自分が大事にしていることを改めて自分で口にしたとき、僕がこの会社にいてモヤモヤしていたこと、不安だったことが少し輪郭を帯びてきた気がしました。


僕が従事する大企業ではこんな大人(会議では発言せず、裏で文句ばっかり言うタイプの大人)がたくさんいる。
そして、ただたくさんいるわけではなく、こんな大人が会社で『ある程度』順調に出世している。

この『ある程度』のニュアンスを伝えたいので、ちょっとだけ会社の構造を説明させてください。


僕の所属する会社では、いわゆる係長クラスの役職(ここでは主任とでもしましょう)から経営層という扱いで労働組合を抜けて年収がそれまでと比較して爆増する。
その手前までもいくつかのタイミングで昇級の審査のようなものはあるが、やはり経営層扱いたる主任への昇級審査には細かな規定があり、会社としての力の入れ具合が感じられる。


この主任の上は課長となるが、課長は組織の長としてのポジションなので椅子の数が限られておりそれなりに着任が厳しいのに対し、
この主任はほぼすべての人間が昇級する上に、組織の長としての役割ではないため人数が無尽蔵に増えていく。

ある部署では、1人の課長の下についている組織5人が全員主任という部署だってあるし、それも決して珍しいものではない。


そしてこの『誰でもなれる』係長の給料がすこぶる高い。

僕の例を参考にすると、主任時代の年収は約880万円だ。

そして、今年課長になった僕の給料は、手取りベースではほぼ変わっていない。月給として+0.4万円、ボーナスは+2万円程度である。


課長1年目なので最終的な年収はもらってみるまで分からないが(これももしかして大企業病なのか?)ほぼ給与は上がっていない。
仕事は倍になったのに。だ。


僕の会社では課長は非常にコスパが悪い。


なぜ僕の会社は誰でもなれる主任に対し、これほどまでに高い給料を支払っているのだろう?
入社からある程度の年数が経ってきたころからから感じていた疑問のヒント(というかほぼ答え)が僕が課長になってから上司に聞いたパワーワードに含まれている。

『どんなに本人の実力が不足していても、それを補って昇級させるのが上司の最大の仕事』

これは複数の管理職層の人から聞いたので、僕の所属する会社では、ある一定の割合で存在する王道の上司像なのである。

大胆に言えば『使えない人間にも高い給料をあげよう!』である。

つまり、会社側の人事ルールとしては
『主任は経営層で高い給料を与えるんだから、厳しい審査をする。』
としているものの、

実際それを運用する管理職としては
『人数制限がない役職なんだから、どれだけ使えなくてもブチ込むべき』
という考えが浸透しているのである。

会社の思惑と実際の運用が真逆である。

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これが(この状態が放置されていることが)大問題で、僕が考える大企業病である。


確かに違和感はあった。

僕が3年目くらいの時にあるお達しのメールを受け取ったことを覚えている。

『Kさんはこれから主任昇格試験があるので、面接練習期間に入ります。通常業務はすべて△△課長が引き継ぎますのでよろしくお願いします。』

確かに入社3年目の僕から見てもKさんはかなりポンコツだった。

Kさんは1か月間は通常業務を完全に休み、上司がレポートを添削・修正し、模擬面談を数十回行った。

その結果Kさんは見事主任に昇級した。

主任昇級試験の合格率は実に95%だそうだ。


徹底したフルサポート体制が効いているのか、そもそも審査側ももう通過の弁ががバカになってしまってダダ漏れているのか。


ちなみに僕の主任昇格試験の時は上司からのレポート添削0回、面接練習0回だ。

本番の面接も非常にイージーで、普通に自分の仕事に関して聞かれたことをこたえる。質問も『苦労した点はどこですか?』とか『みんなを巻き込むためにどんなことをしましたか?』とかその程度である。

正直言って普通に仕事していれば(仕事に向き合っていれば)答えられて当たり前だし、そもそも面談の相手は同じ会社の身内だ。

ビビる必要がないというか、身内と面と向かってちゃんと話ができない奴なんて社会人としての素養が欠けているとすら思ってしまう。


自分が試験を受けた時のことを思い出すと、同じタイミングで試験を受けた同期のS君のことが思い返される。

面接の段取りは被面接者は控室で待つ⇒前の時間帯の面談が終了した人が控室に行く⇒面接会場への入室を促すという流れだったのだが、僕が面接終了後に控室に行ったとき、中で待っていたのは同期の中でも一番ヤバイ(EXILE的な意味でなく、キケンという意味)と言われているS君だった。

S君は何かあるとすぐに後輩に自分が超有名国立大学卒であることを自慢する人だった。
でもそれは多分社会人としての自分の自信のなさを補完するための防衛策だったように思える。

僕が控室の扉を開けて『面接終わったから次どうぞ』と声をかけると、S君は目をバキバキに血走らせながら『ありがとうございます!よろしくお願いします!』と、なぜか同期の僕にバリバリの敬語で応答し、視点が定まらないほど緊張した様子で面接会場へ向かっていった。

それでもS君は合格した。

その後S君の部署の後輩から聞いたのだが、S君は伊勢丹の紙袋に入った高級なワインをレポートの添削、面談を指導してくれた上司たちに配っていたそうだ。

やはりここでもフルサポートがあったのだろう。
そしてそのお礼も慣例的なものなんだろう。

僕の考えでは昇級(昇給)は会社からの『よくやった!』という評価だと思っている。
(みんなもそうだよね?)

特に何も努力・研鑽をしなかったとしても。
自分の仕事に自信がないのが明白で、周りの人から『あいつと仕事したくないよ』と言われていても。
それでも会社から褒められてしまうと、人はどう感じるだろうか?

おそらくは

・やはり有名大学卒の自分はこのままでええんや!
・あ、やっぱり俺って天才なんや・・・・何でもできてしまう自分がホンマに恐ろしいわ・・

のような感想を持つのではないだろうか?
(ともにS君の実際の発言なので方言にやや特徴がありますが無視してください)

フルサポートを受けないと昇級できないはずの人間にも、『合格』の結果だけを伝え続ける。

そしてそういった人たちが年齢とともに同じような試験を経て課長、部長になっていく。皆一様に学歴が高く、エリート意識がバリ高なのでこういった結果を自己反省には使わず、自己肯定の材料に使っていく。

そして代々『勘違いした天才』が『使えない部下を昇級させることが美徳』として負の連鎖を続けていく。

労働を販売する相手としての大企業


厚生労働省のwebサイトによると日本人の所得に関して以下のような記述がある。

所得金額階級別に相対度数分布をみると、「200~300万円未満」が 13.9%、「300~400万円未満」が 13.3%と多くなっている。
中央値は 427万円であり、平均所得金額(547万5千円)以下の割合は 61.3%となっている。(図8)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa09/2-2.html

これは労働力を会社に売る会社員としては最高のコスパであるといえる。

商品である自分の仕事のスキルを磨く投資も努力もしなくても、定年まで売値が上がり続けるのである。
上がり続けた売値は日本の会社員の平均を大きく超える。

これが会社ではなく何かのゲームのルールであるならば、通過率95%の試験を通過できるだけの最低限の努力をして日本人の所得分布の中でも上位につけるのが最も効率的にゲームに勝つ方法である。

だけど、僕にはそれができない。
こんな僕でも会社を支える一人であるとの自覚をもって仕事に取り組んでいる。
みんなが効率よくゲームを進めてしまえば、いずれ会社はなくなってしまうと思うからだ。

我ながら本当にコスパの悪い考え方だ。

全国の製造業の皆様。
研鑽なしに売値のみが年々上がっていく。
貴社にはそんな夢のようなプロダクト(売り物)ありますか?

そんなチョロい顧客がいますか?

競争原理を大きく外れた仕組みが当たり前になっているヤバイ会社(当然非EXILEの意味)は不健全である。
でも変わる気配はない。

これは僕が所属する会社の業態と大きく関係があるのかもしれない。

僕の所属する会社の多くの製品は、決まって一定の需要がある顧客に対し、厳しい規格試験を合格した製品を1~2社のみしか競合が存在しない状態で何十年も売り続けているスタイルで成り立っている。

自分で書いてて思ったのだが、上記のチョロい顧客。いたんだね。

しかし、そのチョロい顧客も今のご時世、とくにここ10年くらいでかなり厳しくなっている。
会社の利益はどんどん目減りしている。

時代は変わったのだ。そして会社はピンチになった。

でも会社の根本は変わらない。

無能が無能であることを異常だと思わず、褒めのメッセージを与え続け、高い年収を支払い続ける。

トヨタの豊田章夫社長が『従来型の雇用形態には限界がある』と発言したのが昨年。

僕の所属する会社からは、昨年から今年にかけて人事制度の改変に言及された発信はない。

日本の製造業に属し、とっくに業績が右肩下がりになっている我が社。

本当に早々に手を打つつもりがないのであればこの船に乗り続けるのは本当に不安だ。好き放題かじらせたスネはもう残っていない。

実は水面下では経営幹部だけが知るレベルで生き残るためのプランを考えてるのかもしれない。でもそれが実行されたときに切り売り対象部署になるかもしれないし、リストラの対象になるかもしれないと思うと不安だ。

長々と書いたまとめ


Kさんのフルサポートの話を聞いてモヤモヤしてて。
部下と対話して自分の矜持を語って。
上司から『この会社における上司像とは』を聞いて。

漠然とした違和感が、その成り立ちの経緯が見えて来るとともに僕の矜持とのズレとなって明確な『不安』になった。

逆に言えば、それでも成り立ってる余力が恐ろしいともいえるし、考えようによっては伸びしろだらけかもしれない。

しかし会社の同世代と飲んでいて、冗談で『伸びしろだらけだね』なんていいっても、笑いは起きず、ため息しか出たためしがない。


ダラダラと書いてしまった文章を最後まで読んでくれたあなた。
お付き合い本当にありがとうございます。

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