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看取り~介護と死別を通して得られた家族の絆とは~(2)

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6月1日(水)
 
正常性のバイアスという言葉があるそうだ。自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと、だそうだ。
朝は目覚ましもなく自然に目が覚めた。午前7時ころだった。病院の空気が不思議な空気に包まれていた。僕は何かとんでもないことがおこったのではないか、ということがわかったが認めたくなかった。お母さんの顔には白い布をかけられていた。
僕は努めて陽気な顔をして、とても残酷なことをお父さんに言った。「お母さんなんでこんな白いのかぶってるの?お母さんいつ目を覚ますの?」
お父さんはたまらなかったのだろう、僕を抱きしめて、「お母さん、死んじゃったんだよ!」といって泣き出した。僕はお父さんが泣くのをはじめてみたので、驚いて固まってしまった。やっぱりとんでもないことが起こったんだ。父が泣き止むと、今度は僕が泣き出した。
とても辛かった。ただお父さんが一緒に泣いてくれたのがとても力になったのに気づくのはずっと後のことである。

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