一つのことを徹底して武器にする技術

母から「iPhone12にしました」と連絡が入った。

母は私よりも機械に強い。いや強いというよりも物怖じすることなく試し、使い慣れている。例えば趣味の園芸や刺繍、料理を投稿するインスタグラムを頻繁に更新し、いつの間にか多くのフォロワーと毎日交流をしている。他にも自らエクセルやワードを使えるようになるために、毎日30分パソコンと向き合って勉強をしている。

（ちなみにインテリアが好きで家具を手作りし、私が小学生の頃には雑誌に特集を組まれたほどの実力者だ。）

母のインスタグラムより。

母は一つのことにハマるとそれを納得いくまで辞めない人だ。口先だけでなく、本当にそういう頑固さの塊のような人だ。

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その背中をずっと見てきた。

父の仕事は朝早く夜遅く、単身赴任の時もあり、一生懸命に家族のために働いてくれていた。社会人になってその凄まじさを痛感する。そんな父の不在を寂しく思わせないほど母が姉と私を大切に守ってくれていた。私達姉妹は決して裕福ではないということに早い段階から気がついていた。それでも母の愛情は本物だと心から信じられた。

他所のお母さんよりも年上の母は遠目から見れば厳しかったと思う。それでも母は口癖のように「大人になったとき困らないようにしないとね」と言って私達を育てあげた。

そのおかげで、料理を苦痛に感じず適度に掃除をして、好きな時に旅行に行けるくらい貯金が出来て。実家を離れてからも快適に暮らしている。それは幼い頃から母に教え込まれていたからだと、恵まれていたということに初めて気がついたことだった。他にも母は食卓だけでなくお弁当にも冷凍食品を一つも入れない人だ。すべて手作り。それが当然として育った私が毎日料理を続けているのは母あってのこと。本当に感謝している。

そんな母からスマホを最新に変えたという連絡を受け取って、きっと母のことだからデータを全て自力で移行して、土日には使いこなせるようになってしまうだろう、なんて思うと頼もしくそして格好良く思う。ジャンルは違えど、一つのことを徹底して自分の武器に変えることは楽なことではない。失敗して学んで失敗して。その繰り返しの中で自分の力へと変えていく。気持ちが弱いとその工程で心がへし折られてしまうのがオチだ。

でも母はそうではなかった。昔も今もこれからも。その姿を今まで幾度となく見てきたから、私も母の子供であることに恥じないように、精一杯目の前のことから逃げずに進みたいと思う。

母曰く、「逃げても得ることより、掴み取って得る方が良いに決まってる。とにかく前だけ見ていなさい。」だそうだ・

なかなか会うことができないご時世、次に実家を訪れるのは母の誕生日の予定だ。その時に新しいiPhone12で写真を撮ってもらおうと思う。