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「いつまでも白い羽根」 藤岡陽子
小説家でありながら看護師としても仕事をしている藤岡陽子さんのデビュー作を読んだ。
高校を卒業し、看護学校へ進学した女の子たちの日々を描いた作品で、社会人になってから看護学校で学んだ作者の経験が詰め込まれた作品なんだろうと思う。
看護学校と聞くと、若くして将来の目標が明確に決まっている人たちが夢を叶えるために行く学校、というイメージがある。もちろん、そういう学生がいる一方で、主人公の瑠美の
「自転しながら公転する」山本文緒
ひっさしぶりに、長い恋愛小説を読んだ。
主人公の都は33歳。東京のアパレルで働いていた彼女が、深刻な更年期障害を抱える母親の看病を手伝うため、茨城の実家に戻ってくる。茨城のアウトレットモールに入っている、特に好きでもないブランドで契約社員として店員をしながら、モールに入っている回転寿司屋でバイトしている貫一となんとなく付き合い始める。
家族との距離、恋人との将来、上司や後輩との人間関係、
ハッピーな気持ちになれる本
三度目の緊急事態宣言の再延長が決まった。そもそも4月中旬に蔓延防止措置が出てから再び在宅勤務となり、あまり外出することもなく家で仕事をするだけの毎日だった。そんなぱっとしない日々に、とてもハッピーになれる本を読んだ。作者は青山美智子さん。3冊読んだけど、どれもほっこりと優しく、じわっと感動して、温かな気持ちになれる。
「猫のお告げは樹の下で」 とある神社に大きな樹がある。この樹はタラヨウといっ
「エデュケーション―大学は私の人生を変えた」 タラ・ウエストオーバー
すごい本だとは聞いていたけど、想像以上に打ちのめされた。これは、タラ・ウェストオーバーという女性が、自身の凄まじい半生をつづったノンフィクションの回想録である。
彼女は、アイダホの山で7人きょうだいの末っ子として生まれる。彼女の両親は敬虔なモルモン教徒であり、サバイバリストだった。サバイバリストとは、いつか世界が終わる、文明が崩壊すると信じている人々である。彼らは食料や武器をため込んだり、シ
「看守の流儀」城山真一
このミステリーがすごい!大賞受賞作家による、刑務所を舞台とした人間ドラマを読んだ。金沢の刑務所で起こる5つの事件を、敏腕刑務官 火石司が解決していくというオムニバス。
刑務所の中ってどんな感じだろう? 外からは決して知ることができない高い塀の内側を、怖いもの見たさにのぞき込みたくなる。そういえば私は昔、たまにテレビで再放送されていた泉ピン子の「女子刑務所東三号棟」を、怖い怖いと思いながら見て
「メイド・イン・京都」藤岡陽子
京都の人ってやんわり皮肉を言うから怖い、とよく言われる。確かに、京都人は本音をズバッと言ったりしない。人当たりいいけど、なに考えたはるか分からへん、という人が多い気がする。また、ねっとりとした京都弁のせいで、婉曲された皮肉や嫌味は余計にいやらしく響く。
京都人である藤岡陽子さんの書くこの小説には、イヤな京都人がたくさん出てきてとても楽しい。
主人公の美咲は32歳。婚約して仕事を辞め、東京
「82年生まれ、キム・ジヨン」
2016年に韓国で出版されたのち、アメリカで始まったMeToo運動からも勢いを得て一気に社会現象となったフェミニスト小説。82年生まれの主人公 キム・ジヨンが30数年間の人生で経験してきた女性の生きづらさを、キム・ジヨンを診た精神科医のカルテという体裁で、客観的に描いている。
キム・ジヨンのエピソードは別に、ドラマチックなものではない。性犯罪に遭ったとか、DVを受けたとか、そういう話はない。ただ
「たてがみを捨てたライオンたち」白岩玄
こういう、アラサー男子たちが主役の小説って、読むの初めてでした。
妊娠中の妻から“主夫になってくれないか”と提案された夫 直樹。お金もあるし女性にもモテるけど、離婚して以来、人生に虚しさを感じているエリートサラリーマン 慎一。女性関係にトラウマを抱え、自分に自信が持てないアイドルオタクの公務員 幸太郎。
3人それぞれ全く違うキャラだけど、全員が共通して「男はこうあるべき」という既存の価値観に囚
「あの日、君は何をした」 まさきとしか
まさきとしかさんの本には、子供を虐待したり、過剰に干渉したり、子供と歪んだ関係を築く母親がたくさん出てくる。前回読んだ「完璧な母親」では、一人息子を事故で亡くした母親が悲しみのあまり、次に生まれた娘に息子そっくりの名前を付け、今度こそは完璧な母親になろうと、母親としての自分をやり直そうとする、ゾワッと恐ろしい話だった。今日読んだ「あの日、君は何をした」にもクレイジーな母親たちが登場する。
第一志