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EC化率やCVR(購入率)が上がらない“根源理由”を追求してみる【第一回】

久しぶりの投稿。皆様はお元気でしょうか?

投稿を休んでいた1年半くらいの間、仕事環境に色々変化があって、小売業のEC支援のベタベタのところ(集客~コンバージョンまで)をやってました。
そんな中で改めて感じたのは、小売のEC担当部門の方って、KPIとか新しいクラウドサービスやデジタルツールには目ざとく反応するんだけど、お客の購買マインドとか購買行動にはあまりにも無頓着であるということです。

小売のEC部門の人たちというのは、あまりデジタルに詳しくない経営陣から管理されてることもあり、数字には非常に敏感です。しかし、その数値が何に起因して上下するのか?見事に見えてない方が多いですね。

実はこれを理解するには、デジタル(EC)が登場する以前の購買行動を理解する必要があります。そこがわかっていないから、Eコマースの売上やCVR(買上率)を上げられないということもあるのです。

そもそも人が実店舗でモノを買う時に影響する因子を分解してみます。

購買行動001b

消費行動にあまり詳しくない方、自身があまり買い物好きでない方は、単品の商品を求めて自分は買い物をしてると思ってるかもしれません。しかしそれは違います。単品の商品力が購買に与える影響は実は三割以下です。消費を喚起しているのは単品商品ではなく、沢山の商品が並べられた店頭、そして商品配置・陳列や空間=ショップとしての魅力です。
筆者が見てきたデータから判断すると購買動機因子の4割はショップ全体の力であって商品単品の力ではないのです。
そもそも店に入店する前から買う商品をすべて決めている人は、どれだけ居るでしょうか?以下の記事を参照してください。

さて
こんな状態なのですが、現在のEコマースの世界ではこのショップとしての購買促進力があまりにも弱いのです。以下のような感じですね。

購買行動002

この図の左側のショップ生成価値の部分、なぜECでの実現度が低いのか?
これについては次回に詳細を説明しましょう。今回はこのロジックが正しいとした場合、何が起こるか?についての言及します。

実はこの状況から消費支出に占めるEC購入の限界値が見えてきます。
2020年のECに代替可能な国内物販消費は250兆円弱、BtoC-EC市場規模は19兆2779億円。物販分野のEC化率は8.08%です。EC市場の今後のポテンシャルを見るのに、実店舗で起こっている消費行動をどこまでECが代替または凌駕できるか?という観点で計算すると以下のようになります。

購買行動003

さて第一回の最後に、そもそも生活者の消費行動を喚起するには小売流通事業者や消費財メーカーは何をすれば良いのか?を書いてみましょう。
下の絵を見てください。

購買行動004

これまでEコマースが容易に実現してきたことは、来訪客が予め頭に描いていた商品や機能、デザインで商品を簡単に検索できるようにして、『見つけやすくしてあげる』というサービスだったと考えます。(上図:水色の部分)
しかし、元々実店舗がやってきたことはそれだけではないのです。
入店したお客様に
売場からの①テーマ提案、➁生活提案、③買い方提案
をすることで、
●買う行為自体を楽しんでもらう、
●自分の生活を変えてゆく手段を発見してもらう、
といった(モノだけじゃなくて)『コト』を創出するサービスです。
最近はあまり言われなくなったけど、かつては『店舗・商業の劇場化』という言葉で言われていました。店舗は『自分の人生のシナリオを想起させる劇場であるべきだ!』という考え方です。
実は今の最新のデジタルテクノロジーを使えば、そのことが実店舗以上に生生しくできるはずです。その可能性について、次回以降で語ってゆこうと思います。