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72候【花鳥風月】大寒の候


冬の土用


大寒から次の立春までの15日間は、ちょうど冬の土用期間でもあります。
外気温がマイナスになる地域はとくに、おうちの中と外の温度差が10度以上になることもざらにあり、からだは10度以上の気温差を感じると自然と食欲がわくようにできているといいます。
厳しい寒さや冬眠にそなえて動物たちが食べものをあちこちに隠したりせっせと食べたりするのと同じ現象が、ヒトのからだにもおこるわけです。

冬眠しない人間にとって、過食で摂りすぎた栄養は胃腸障害を引き起こす原因にもなり、夏は汗をかいて酸を捨てられますが、寒さを無事にのりこえるために蓄えられてきた酸は、この時期ピークに達して胃酸を濃くし消化機能を高めるので、なぜかどんどん食べられるし、食べてもすぐにお腹がすいてしまうというケースは珍しくない、とのことです。

土用と呼ばれる時期は年に4回、立春、立夏、立秋、立冬まえの14日間程度で、脾臓が季節の変わり目を察知してミネラル分の多い食事を要求するといわれています。ミネラルを十分受けとったと脾臓が満足できるまでは、まだ足りん!という勢いで食べたい欲求を発動させるのだとか。

五臓を元気にするという五菜「にんにく、ネギ、ニラ、しょうが、エシャロット(らっきょうか、島ラッキョウでも)」をスープやお粥、鍋のお出汁にするとか、それ以外のハーブやスパイスなどふんだんに取り入れるレシピのカレーやブイヨンなども、内臓の満足度が高く少量で脾臓OKが出るといいます。

寒い季節は腎臓も冷気に刺激されてよくはたらきますが、腎機能が疲れてくると「これ以上はムリ!」と強制的にからだを休めるために、最終手段「ぎっくり腰作戦」を遂行してSOSを出す説もあります。

ご参考までにわが家の「お手軽即効冷えとり作戦」をいくつかご紹介させて頂きます。

1.「耳をさわって温める」
耳を刺激すると腎の血流が良くなり、全身の血行が促進されて末端もあたたまり、頭蓋骨内の圧も下がって気力が充実します。

2.「膝を温める」
利尿が悪いときは膝に温湿布など(手あてでも可)するとすぐに目の周囲がゆるむのを感じられるかと思います。膝のお皿は泌尿器系機能とつながっているとされ、利尿が悪いときは眼圧も上がって目が固くこわばりシバシバします。乾燥対策しても目の疲れがとれないときは膝小僧を温めます。

3.「保存食づくり」
ひと冬を十分に越せるほどの漬物をはじめとする保存食づくりは心理的な安心感をもたらすので寒さで興奮する腎の恐怖心を和らげる一助になります。

腎臓の感受性、寒さと恐怖心についてはジュニパーの記事にも綴らせて頂きました。


百花のさきがけと南極老人星


東風こち吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな

菅原道真

庭の木たちをこよなく愛したという菅原道真公が、大宰府に左遷されるとき、庭の梅木に別れを惜しんで歌った言の葉は、梅の木を俄然奮起させ、都から太宰府まで、飛んであるじのあとを追いかけた飛梅とびうめ伝説となり、いまも太宰府天満宮の神木白梅として、樹齢1000年の威光を放っています。

ウィキペディア-飛梅
2月中旬、早春を迎えて満開となった飛梅


飛梅伝説のお話は、梅の記事にも綴らせて頂きました。


一年で最も寒いとされる大寒の候ですが、日本各地では梅花が香り、そのほかの雪中四友せっちゅうのしゆう蝋梅ろうばい山茶花さざんか、水仙はもちろんのこと、福寿草もまた元日草の異名をもつ春告草として、あちらこちらで見かけるようになります。

福寿草 photolibrary

黄色い花は金杯のようにひらき、太陽の光を花の中心に集めて、あたたかい光で虫をお誘いします。
江戸のころより庶民に愛されてきた古典園芸種で、その名が示す通り縁起物として、新春を祝う意味が込められています。
根っこがゴボウみたいに太くて長いので、鉢に植えておうちのなかに置きたいときは、なるべく大きな鉢を用意しておくと元気に咲いてくれます。

福寿草の名は七福人のひとり、福禄寿(あるいは同一神とされる寿老人)を彷彿とさせ、りゅうこつ座アルファ星・カノープス「南極老人星」とのつながりを(勝手に)イメージしてしまいます。

ウィキペディア-南極老人

福禄寿/寿老人は不死の霊薬に満たされた瓢箪ひょうたんをもち、牡鹿を従え、桃をもつ姿で描かれることが多いです。
りゅうこつ座α星のカノープスを南極老人星として神格化したのは道教で、南極仙翁なんきょくせんおう寿星じゅせいと呼ぶこともあります。

南極老人星は世の中が戦で乱れるとお隠れになり、平和になると戻られるという信仰があり、古い時代から長寿と幸福を司る星とされてきました。
日本では七福神の福禄寿・寿老人のモデルとなった南極老人は、西遊記にも登場する仙で、南極老人星(寿星)を見ることができれば長寿を約束されるとの言い伝えにより、星があらわれると人々はこぞって長寿を祈ったといいます。

カノープスは南天の星なので、ふだん北半球から見ることはできませんが、日本の関東以西では毎年2月になると、南の地平線上に赤く光って見えることがあり、大寒から立春の候にかけての吉兆シンボルとして、風物詩のひとつとなってきました。

全天でいちばんの輝星シリウスについで、2番目に明るい星といわれるカノープスですが、北半球からは地平線スレスレの位置にあるので赤暗く見えます。(光を通して見る闇は青、闇を通して見る光は赤)
au天気サイトにカノープスの見える時期や場所など紹介されています。


りゅうこつ座にまつわる神話はギリシャ神話の巨大なアルゴー船が有名です。
アルゴー船はイアソンの冒険譚で黄金の羊の毛皮(コルキスの金羊毛)を求めるために建造され、勇士50人の乗組員には、勇者ヘラクレス、双子のカストルとポルックス、オルペウス、勇者アキレスの父ペレウスなど、ギリシア神話で活躍する英雄たちが名を連ねています。

りゅうこつ座
ウィキペディア-金羊毛
金羊毛とイアソン

半神半馬の賢者ケイローンのもとで育ったイアソンは、頼もしい仲間たちとともに金色に輝く羽の生えた羊を求めて、巨大アルゴー船で出航し、難関辛苦の冒険を次々に乗り越えてゆきます。
はたして金羊毛は手に入れたものの、目的とするところの王位奪還は叶わず、正統な王位継承者でありながら、地上の王として君臨することはありませんでした。
国を追われ、愛する人を失い、子供を失って物語は幕を閉じます。

アルゴー船(りゅうこつ座・カノープス)にまつわる神話は旅そのものが重要で、地上における栄華繁栄には注視していないことを表しているようにも思えます。
金の羊を求めて、無意識領域と揶揄される「大海原を進む航海」そのものが、イアソンというひな形の中心です。

道教が神格化した南極老人星は、長寿と幸福をもたらす星と伝承されてきましたが、カノープスと一緒に旅することは、きっと山羊座社会で築いたものを手放したあとに訪れる意識の拡大、物質を超えたその向こうへの冒険を意味しているのかな、と感じています。

肉体寿命という区切りを超えて、魂ほんらいの長い長い歴史を思い出すこと、つまりすべての記憶をとりもどすことを「長寿」と表現したのではないかな、と。
南極老人の瓢箪に入っている不死の霊薬は、すべての記憶を取りもどすエッセンスだったのではないかしらん。


大寒だいかんの候、今年は1月20日から。

款冬華ふきのとうはなさく-雪の下からふきのとうが顔をだすころ
水沢腹堅さわみずこおりつめる-沢に厚い氷が張りつめるころ
鶏始乳にわとりはじめてとやにつく-鶏が鳥屋に入って卵を産み始めるころ


根びらきとふきのとう


ふきはキク科フキ属の多年草で、日本原産種です。
大寒とはいっても、ふきのとうが雪の下から顔を出すころ。
ふきは日本全国どこにでも自生し、先陣きって沢や斜面にびっしりと芽吹きます。
湿り気のある土壌を好み、葉より先に花茎が地表に顔を出すので蕗の薹ふきのとうと呼ばれるようになり、早春の山菜としてよく知られています。

とうは葉がつかない茎のことをいいますが、北海道の雪どけのころはふきのとうが芽を出す場所だけ、ぽこんと雪がなくなり、こども心にフシギだなぁと思っていました。
それはふきのとうが雪を溶かしてしまう植物に見えたからだと思います(じっさい春のさきがけ植物はみなそうなんですが)。

大人になってからは根びらきといって、木の根元から雪がとけていくことを理解したので、フシギ現象ではなくなりましたが、小さいころ目にしたインパクトは相当なものだったようで、ふきのとうにはなんとなく一目置いています。

「根びらき」のこと雪のないエリアの方のためにちょっとだけ補足します。
木は地下水を吸い上げ、その水は外の空気よりも温かいので、木の幹の周りの温度が高くなります。
白い雪は太陽光を反射し、黒に近い樹木は太陽光によって温められるので、幹の周りの雪がいち早くとけて土が見える、という春を告げる現象です、

根びらきと、ふきのとう

ほかの山菜とちがって、ふきは春先の新芽だけではなく、成長とともに長い期間楽しむことができる食材です。
砂糖醤油で甘辛く煮込んだきゃらぶきは日本の伝統食でもあり保存食、アク抜きして下茹でした後に、水なしで上手に煮詰められるようになるまで、私の場合けっこう練習が必要でした。

北の大地ではラワンブキやアキタブキが多く自生しており、腎臓のカタチをした葉は、1メートル越えの巨大なものがわんさか繁ります。
ふきは日本原産種で古くから野菜として庶民に愛されてきた日本ハーブのひとつ。夏には根を掘り出して天日乾燥したものが蜂闘菜ほうとうさいと呼ばれる生薬になります。
民間療法では去痰作用、鎮咳作用があるとして、呼吸器系に親和し気管支の炎症を鎮めて、粘液の分泌を促すといわれています。
生の茎葉をしぼった汁は解毒効果があり、虫刺されに使用してきました。

ウィキペディア -フキ
江戸時代の農業百科事典『成形図説』のイラスト(1804)
ふきの葉
(は、腎臓のカタチに似ているよね、
茎は尿路みたいだし…)


太陽は水瓶座に入ります


ギリシア神話では、水瓶は神酒ネクタルを給仕するガニュメデスのもつ酒器と伝えられています。
不死の霊薬入り瓢箪をもつ南極老人とかぶっているような気もしますが、水瓶座のばあい美少年のガニュメデスというイメージが定着しています。

星座をあらわすイラストも青年が水瓶をもっている姿で、鷲にさらわれて天界入りしましたというストーリーは、そのまま星座として夜空に配され、鷲座はいつも水瓶青年を狙うように、星空のディスタンスをしています。

ウィキペディア-ガニュメーデース
ピーテル・パウル・ルーベンス『ガニュメデスの誘拐』
(1611-1612年頃) シュヴァルツェンベルク宮殿所蔵


神話では、神々の王ゼウスと正妻ヘラの娘、青春の女神へーべー(青春が神格化された女神)のかわりにガニュメデスが給仕をすることになった、と伝えられていますが…

ヘーベーはアテーナイのキュノサルゲスの神殿に、ヘーラクレース、アルクメーネー、イオラーオスと共に祀られていた。
またプリウース市のアクロポリスにも聖所があった。
このヘーベーの聖所は同市では最も尊崇され、祀られている女神はもともとガニュメーダーと呼ばれていたが、後にヘーベーと呼ばれるようになった。

ウィキペディア-ヘーベー

もっとも尊崇されていた神としてのヘーベーが、古い女神ガニュメーダーだったのなら、神酒ネクタルをそそぐガニュメデスは、女神ガニュメーダーのの創造降下で、トロイアの王子として地上に生まれた分身だったということではないかな、と。
そして「給仕」と「給餌」には、いったいどれほどのちがいがあるのでしょう。

ギリシャ神話の12柱伸、神話に登場する神様キャラクターについては、過去記事で紹介してきたデメテルとペルセポネ(ミント)、アテネ(オリーブ)、アポロン(月桂樹)、アルテミス(よもぎ)、プロメテウス(フェンネル)、アフロディーテとアレス(アネモネ)等々、創造降下の御業をもって分化、分身をくりかえし地上へのきざはしをかけているのでは、との妄想考察を綴ってまいりました。

青春を神格化したヘーベーとガニュメデスは、神々が創造降下に夢中になってほんらいの自我(霊我)を忘れることのないよう、ときおり不死の霊薬・神酒ネクタルを配給して差し上げ、大いなるサイクルのスタート地点である青春(もとは春を表すことばだった)へ導いて、統合柱を強化するよう助けているのではないかしらん。

水瓶座が普遍性を希求する性質なのは、千年万年単位で循環する、大いなるサイクルの青春というスタート地点だからで、水瓶(あるいは瓢箪)からは養老の滝のように、神酒ネクタル、あるいは神酒ソーマが、こんこんと湧きでているのではなかろうか、と。

水瓶座は積極的に社会から逸脱し、脱落者や反逆児となる傾向が強いといわれますが、それはローカル社会だけで決められたルールや通例、なれあいや古いやり方におさまっていることに、かなりのストレスを感じるときだと思います。

山羊サインで地上的陣地を確実なものとした地球マスターは、大きな山の上(組織や集合体)から俯瞰して世界を見ることで、さらに意識を拡大してゆこうと考えます。
地上にとどまれば安寧と老衰が、カノープス(アルゴー船)に乗りこめば大いなるサイクルへ突入するための入り口(青春)への冒険がまっています。

時代や国や、人種や階級にとらわれず、なにものにも染まらない純粋な人間像を夢見て、未来をつくるために冒険に出かけようという心理が強まるのは、山羊座を経験した水瓶座ならではのとりくみと思います。
そして理想を掲げて未来をつくることは、ときに古い体制を壊すことにもなります。

急進的な変化を起こすチャンスがやってきたとき、苦労して築き上げた足場としての王国を手放し、あたらしい領域へ旅立つことを狂気の沙汰ととらえるか、あるいはすばらしい好機ととらえるか?

山羊座的社会の安寧は土元素界にまもられた境界線のこちら側で、ぬくぬくと、降る振ると、冷たい外気から身をまもってくれるものですが、今あるスキルで対応できるコンフォートゾーンを飛び出さないことには、春の訪れはやってきません。

ふきのとうは冷たい風雪を押しのけて小さな芽を吹かせます。
雪中四友せっちゅうのしゆうや、福寿草をはじめとする春告草たちは、花冠に太陽光を集めたり、馥郁とした香りを周囲にふりまきつつ、春という未来を先陣きって創造してゆきます。

ところで神酒と呼ばれる飲みもの、ギリシャ神話ではネクタル、インドの神々への讃歌集リグ・ヴェーダではソーマという名前で登場します。
神酒は植物でつくられたとされ、リグ・ヴェーダでは「太古、神々より3代以前に生じたる薬草」と記されています。

薬草についての讃歌も多々収録されており、ガンジス川流域にアーリア人が移住してきてバラモン教が創られていった頃、「薬草の効力めっちゃすごいよね。神様登場する前から地球にあるし、神々の飲みものだってソーマという薬草から作られるんだよ」的なことが伝承されてきました。

【ハーブ天然ものがたり】レモングラス

創造降下と統合上昇をくりかえし、大いなる循環に生きるたましいの記憶をとりもどすには、植物の力が助けになるのかもしれません。
水瓶青年の水瓶や、南極老人の瓢箪にエーテル的なパイプをとおして、そのスピリットを配給しているのは、いったいどんなハーブたちなのでしょう。


青春の神々が掲げる水瓶、冒険者を運ぶカノープス、早春の香り、根びらきのはじまる山野。
一年でいちばん寒さ厳しい大寒の候も、春を立てる青春の門をひらくために、水面下では未来創造のためのエネルギーがひっきりなしに渦まいています。

☆☆☆

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noteライフスタイル、生活記事まとめ、ギフト記事まとめに
【ハーブ天然ものがたり】エルダー/ニワトコ  
【ハーブ天然ものがたり】ぺんぺん草とタネツケバナ をとりあげて頂きました。皆様のご訪問のおかげと心より感謝申し上げます。


noteクリエイター禧螺さまの、Inspiration Box 2023 に私どもの記事をとりあげていただきました。心より感謝申し上げます。

noteを通じて広がりつつあるご縁をうれしく思っています。
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