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痛烈な社会風刺!監督の思いが込められた渾身の一作「ゼイリブ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(507日目)

「ゼイリブ」(1988)
ジョン・カーペンター監督

◆あらすじ
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仕事を求めて町に流れ着いたネイダは、ホームレスのためのキャンプで寝泊りするようになったのち、教会でサングラスを発見。そのサングラスを通して見えたものは、人間になりすまし、町を支配していた奇怪な侵略者の姿と、至るところに隠され、人間を操っていた洗脳標識だった。恐るべき真実を知ったネイダは侵略者と戦うことになるが……。(映画.comより引用)
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◆不思議なサングラスを通して見えたのは“人間になりすました侵略者たち”、そして「従え」、「消費しろ」などの洗脳標識。自分たちが知らぬ間に彼らに洗脳され、搾取されていたことを知った主人公はレジスタンスに入り、侵略者たちと戦いを繰り広げる

というSFスリラーの体を取って

1980年代のアメリカに蔓延していた資本主義や物質主義に対する批判や、特権階級の人々だけが得をして、さらにはメディアを利用して一般層の人々を洗脳し、社会を専制政治で支配しているという事実に対する不満を織り込んだ作品となっており、社会風刺の効いた非常に面白い一作でした。

サングラスを通して見た侵略者たち
(映画.comより引用)
サングラスをかけると普通の看板がこう見えます。
(映画.comより引用)

監督•脚本は「ハロウィン」(78’)や「パラダイム」(’87)でおなじみのジョン・カーペンター氏が務めており、DVDに収録されている2013年収録のインタビューには撮影時の裏話や当時のレーガン大統領の政治政策への不満をこぼす場面などもありました。

現在U-NEXT、THE CINEMAで配信中のほか、アマゾンプライムでも400円でレンタル可能です。

(映画.comより引用)

知ったかぶって資本主義がどうのと冒頭でのたまっておりましたが、正しく説明できる自信が無かったため、今作を見た後で改めて資本主義についてさらっと確認してみました。

●資本主義とは
個人が自由に土地やお金・道具などの資本を持ち、商売できる仕組みのことです。
個人が利潤を求めて自由にお金を稼げる点や、自由競争を通じて国の経済が発展しやすい点は資本主義のメリットとして挙げられます。一方、不況時に失業が増える点、貧富の差が拡大しやすい点などが資本主義の課題です。(東証マネ部より引用)

とのことで

今作はまさに、不況により失業した貧困層が主人公であり、富裕層が敵となっています。

↑資本主義と社会主義についての違いなども分かりやすく解説してくれているためとても助かりました!ありがとうございました!

ちなみに物質主義(マテリアリズム)とは

物質的・即物的なものごとを、他のものごとよりも優先させる態度のこと。ここで言う「物質」とは比喩的な表現であり、人により解釈の幅があるが、おおむね「衣食住」のことや、いわゆる"経済的"なこと、すなわち「財貨」・「金銭」・「物品」の獲得・所有・占有・使用などのことを指していることが多い。(物質主義Wikipediaより抜粋) 

とのことです。

そんな世の中に風穴を開けてくれます。

とあるインタビューにおいて、カーペンター監督は今作について下記のようにコメントを残しています。

「ふたたびテレビを見てすぐに気づいたことは、テレビ画面に映し出される映像は全て、我々に何かを売りつける意図のもとにデザインされているということです。映像はすべて我々に何かを買いたいという欲望を起こさせることを意図して作られているのです。彼ら(映像の作り手)がやりたいことと言えば、我々のお金を奪うことだけです。」
(「ゼイリブ」Wikipediaより引用)

ただし、これはあくまでも80年代当時の事を言っているのであって、平成や令和になっても今作を用いての政治批判などが行われていることは不本意であると明かしています。

「彼らは生き、我々は眠る」と書かれています。
(映画.comより引用)

当時の政治背景や製作の意図などを理解しておくとより楽しめますが、頭を空っぽにして内容だけを追っても相当面白いです。

『知らぬ間に侵略者が現代社会に紛れ込んでおり、さらには人間は彼らによって洗脳され、搾取されていた』

という大筋だけでワクワクしますし、その事実を知った主人公たちがレジスタンスとなり、彼らに戦いを挑むという展開も非常に熱く、SFアクション映画としても楽しめます。

主人公ネイダを演じたロディ・パイパーは今作に出演する前年まで現役バリバリのプロレスラーとして活躍されていました。

日本では「狂乱のスコッチ」の異名を持ち、2011年までレスラーとして第一線に立ち続けました。
しかし残念ながら2015年にお亡くなりになられております。

試合を観戦したカーペンター監督はその場で主演に抜擢することを決めたそうです。

そんなプロレスラーとしてのスキルや経験は今作でも遺憾無く発揮されており、アクションシーンや殴り合いは非常に豪快で見応えたっぷりです。

特に中盤で繰り広げられるフランクとの壮絶な殴り合いのシーンは6分を超え、ジャーマンスープレックス等のプロレス技に、凶器攻撃等なんでもありの
男と男の真正面からのぶつかり合いとなっております。

殴り合った後のネイダとフランク
なんでもこの喧嘩シーンはロディ・パイパーのキャスティングが決定してから考えたそうです。
(映画.comより引用)

しかも台本には「喧嘩が始まる」、「喧嘩が続いている」としか記載されていなかったため、その場その場で作り上げていったそうです。

このシーンは個人的に“映画史に残る喧嘩シーン”といっても過言ではないでしょう。

しかも喧嘩の理由が

『サングラスを掛けるか掛けないか』

という非常にしょうもない理由ということもあってバチボコに面白かったです。

終盤でテレビ局に潜入し、命をとしてアンテナを破壊したことで擬態信号を止めることに成功。すると至るところで侵略者たちの姿が露わになり、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す…

という終わり方は滑稽ながら風刺が効いており、非常に印象的でした。

ネイダとフランクの“決して親友とかではないけど互いに信頼し合っている間柄”がすごくかっこよかったです。
(映画.comより引用)

ちなみにエイリアン役を担当したのはスタントマンのジェフ・イマダ氏で、作中に登場する全てのエイリアン役を請け負ったそうです。

ジェフ・イマダ氏
スタントマンのほか、殺陣師や俳優、監督など多岐に渡って御活躍しています。(budovideos.comより引用)

先述したネイダとフランクの殴り合い等のアクションシーンの指導なども担当されたそうです。

私が今までに見た80年代ホラーの中でもトップクラスに面白かったです!オススメです!

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もしよかったら覗いてやってください。

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