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広島からの刺客!考察が捗る面白い短編「はらい」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(531日目)

「はらい」(2020)
クォン•ヒョクジュン監督

◆あらすじ
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ひきこもりの妹を持つキサラ。彼女は妹・アオイに対しいらだちを感じていたが、ある出来事をきっかけにその窮屈な生活から解放される。幸せの真っただ中にいるキサラは、両親に彼氏を紹介するため久々に実家に帰省するが、ある恐怖に襲われる。(Filmarksより引用)
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“こわい”をテーマにした短編映画を上映する
『広島こわい映画祭』

広島大学•矢沢利弘教授のゼミ生自らが出資して作品を募集し、会場確保などの運営全てを担っている映画祭です。スタートした2018年は応募が4作だったものの、2023年にはなんと97作もの作品が寄せられるなど年々その規模を広げております。

そして今作は広島こわい映画祭2020出品作品の一つであり、私はたまたまDMMTVで配信されていたので視聴しましたが、現在アマゾンプライムにて「広島こわい映画祭 作品集」として多くの作品を配信しております。

本日視聴した「はらい」に関してはDMMTVの他、U-NEXTでも視聴可能です。

30分の作品なのでサクッと見られますが、内容はかなりみっちり詰まっているのでなんだったらもっと長くても良いんじゃないかなと思うくらいでした。

◇引きこもりの妹をもつキサラ。彼女は大学受験を控えピリつく中、両親からある相談を持ち掛けられます。両親はアオイを施設に入れようとしており、それによって金銭的に余裕がなくなるため、キサラにはお金のかからない国立大学への進学を打診、さらには一人暮らしを諦めるように伝える。堪忍袋の緒が切れたキサラは自室にいるアオイに聞こえるように「死ねばいいのに」と声を上げる。

夜も更けた頃、虫の知らせで嫌な予感がしたキサラがアオイの部屋を覗くとそこには睡眠薬を大量に飲んで倒れているアオイがいた。すぐに救護をすれば救えたかもしれないのに、キサラは見て見ぬふりをして、アオイを見殺しにする。

それから7年後、幸せの真っ只中にいるキサラは恋人のけんじを両親に紹介するため久々に実家を訪れる。どこか様子がおかしい両親、更にけんじにはこの家を訪れるある目的があった…

といった感じの内容です。

時間配分がすごくうまい印象です。世界観や主人公家族の関係性を見せる必要がある冒頭はしっかり時間を使って見せて、そこからはかなりテンポよく展開していきます。

実はけんじは過去にアオイとSNSで繋がっており、互いを励ましていた。アオイは施設への入所を前向きにとらえており、入所後はけんじと直接会う約束もしていたという。

「そんなアオイが自ら死を選ぶはずがない。」
「アオイはお前が殺したんだ。妹思いのフリしやがって。」

けんじはアオイの復讐のためにキサラに近づいていたのでした。ナイフを持って襲いかかるけんじでしたが突如として倒れる。キサラが部屋を出るとアオイの部屋の前には好物だったハンバーグが置いてある。扉が開き、中から黒い手が出てきます。慌ててキサラが一階に降りると、両親の様子はおかしく、更には河童やろくろ首、目目連も出現します。そして迫りくるアオイの霊。ここでようやくキサラは心からの謝罪をします。

気づくと異様な雰囲気は去っており、キサラは改めてアオイの部屋の前で謝罪をします。すると後ろにいた両親が「もっとアオイと話してあげなさい」と言うやいなや、キサラはアオイの部屋に引きずり込まれます。両親は無表情でハンバーグを二人分、部屋の前に置いて立ち去ります。

そして道端で目を覚ますけんじ。薄れる意識の中、誰かに頭を撫でられたことを思い出します。

というところで物語は終わりを迎えます。

これ色々と考えられるんですけど

両親はアオイを失ったショックで気がおかしくなっており、見えないものまで見えてしまっているのかもしれません。アオイが命を絶った原因がキサラにあることも分かっているのでしょう。

『部屋から出てこない=部屋にいる』

という解釈で、アオイはまだ部屋にいると自分たちに言い聞かせているのかもしれません。そして7年ぶりに帰ってきたキサラに贖罪をさせようと計画したのかもしれません。けんじに関しては完全に邪魔者なので食事に睡眠薬を混ぜて眠らせて、あとから路上に放置。キサラに関してはラストでアオイの部屋に引き込まれしまいましたが、あれは両親がキサラを殺害したことを表現しているのではないでしょうか。

先程の『部屋から出てこない=部屋にいる』と同じで『どこにもいない=部屋にいる』なので、殺して姿が見えなくなったあとも部屋にいるということなのかもしれません。だからこそその後、両親は二人分のハンバーグを部屋の前に置いたのではないでしょうか。

30分の作品でこれだけ考えさせられるのが本当にすごいです。私の解釈が見当違いという可能性は大いにありますが見た人によってとらえ方が変わる作品なのかもしれません。河童とかろくろ首のくだりはよく分かりませんでしたが個人的にはかなり楽しめました。

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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