見出し画像

マークの大冒険 古代エジプト編 | ウジャトの契約


前回のあらすじ
マークはホルスと共に深夜のピラミッドに赴き、大回廊の上部に存在する未知の部屋に足を踏み入れた。そこには、ピラミッドの全長よりも遥かに大きい暗闇の空間が広がっていた。マークはそこで重力の指輪を手に入れると同時に、ホルスの口から彼が封印された時の過去を聞く。



エジプト・ギザ、大ピラミッド内部______。


「かつてローマ皇帝が、とある教団を帝国の国教と定める法令を発布した。その法令によって、教団が敵対する旧来の宗教は一掃された。邪神とされた帝国中の神殿、彫刻、文書、ありとあらゆるものが徹底的に壊され、焼き尽くされた。エジプトでは、アレクサンドリアのセラピス神殿が甚大な被害を受けた。神殿は徹底的に打ちのめされ、基礎部分しか残らなかった。セラピスの信奉者たちも、ひどい暴力を受けたという」

「俺が封印される前から、各地でそうしたことが起きていたのは耳にはしていた」

「ボクが通うアカデミーは、キミを封印した教団の一派が設立したんだ」

マークはそういうと、鞄から学生証を取り出してホルスに見せた。マークの学生証には、白百合の紋章が校章として描かれていた。

「これだろ?」

「白百合の紋章、それだ!」

「フルール・ド・リス。フランス語で、白百合の紋章をそう呼ぶんだ。白百合と剣を組み合わせた紋章で、純潔と信仰の強さを表している」

「お前も奴らの仲間なのか?」

「まさか。教団には良い奴もいれば、悪い奴もいる。ボクにとっては、そんな印象に過ぎない。敵とも味方とも思っていない。ボクはどのユニオンに所属しているかではなく、個を見る。だから良い奴もいれば、悪い奴もいると言ったんだ」

「お前が奴らをどう思おうと、俺は奴らの始祖を探し出し、決着を着ける」

「別に否定はしないが、協力もしない。好きにすれば良いと思う。ただ、中には良い奴もいる。少なくともボクのアカデミーの仲間は、良い奴しかいない。それをキミが見誤って見境がなくなった時、ボクらは対峙することになるかもしれない」

「俺は歯向かう奴には容赦はしない。それだけだ」

「それで、この部屋の入口は元通りにできるのか?」

「ああ」

「そうか。それは良かった。この部屋は、まだ人類が知るには早過ぎるかもしれない。調べてみたいことが山ほどあるが、今はキミとボクだけの秘密として胸に留めておく。何かとてつもない争いの原因になる。そんな胸騒ぎがするんだ」

「好きにしろ」

「今は一度、プレハブまで戻ろう。軟禁状態から解放されたら、キミを置いてボクは帰国する」

「それはできないぜ?契約は結ばれたんだ。お前の生命活動が停止するまで、契約は破棄されない。俺との契約を破棄したいなら、自殺するしかないな」

「そうなのか?」

「ウジャトの契約は既に結ばれている。俺らは一心同体、運命を共にする共同体だ」

「厄介なことになったな」

「お前が封印を解き、俺を呼び覚ましたんだ。お前が選んだ運命だろう」

「キミを呼び覚ますつもりはなかった。それにボクの頭の中に語り掛けて、誘導したのはキミだろう」

「意志は関係ない。契約は結ばれた。あるのはその結果だけだ。お前がここから去っても、お前が俺の前から去ることはできない。だが、マーク。お前は少し面白そうだ。しばらく退屈凌ぎにお前の遊びに付き合ってやる。好きにすればいいさ、お前は必ず俺の力を必要とする」

「どうかな?ボクは力には溺れない」

「いや、必ず俺の力に頼ることになるさ。そしてお前は果実を探し求め、偽善という名の新しい神を演じようとする______」



To Be Continued…



Shelk🦋

この記事が参加している募集

文学フリマ

コミティア

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?