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妻は生理やPMSの時、どんな気持ちなんだろう?

「生理きたよ」

会社にいる私のスマホに、今月も妻からメッセージが送られてきました。

「ゆっくりね」


私は今、生理用品IoT収納ケースの開発チームに所属しています。

プロジェクト立ち上げの話はこちら。

生理用品IoT収納ケースとは、スマホのアプリと連動して、生理用品の在庫管理や生理周期を自動記録するプロダクトのこと。

現在は商品化に向けて開発を進めています。

そんな私が今回、開発チーム3番手としてnote記事を書くことになりました。


2番手は、チームの新入社員が務めてくれました。

これまでの経緯やチームの思いは他のメンバーがご紹介しているので、

私は何を書こうかな?

と悩んでいた時、メンバーに「プロジェクトを始めてから家庭に変化ありましたか?」と興味津々で聞かれました。

きっと「生理について話せるようになった!」などの回答が期待されているだろうと思いますが、

「実は以前とあまり変わらない気がします……」



普段から私と妻は、小学校と幼稚園に通う2人の娘たちのことはもちろん、他にもいろんなことを話します。 

家のDIYや庭に植えた植物のこと。
最近聞いた面白いPodcastのこと。

「生理が始まったよ」というメッセージは、持病がある妻が自分の体調を私に教えてくれる日常のひとコマで、実は私が生理について学ぶ以前からの変わらない習慣です。

我が家を深掘りしても特に面白い話は無いと思うけどなぁ、と考えていたら、ユーザーリサーチを担当しているメンバーが

なにかあるはず?

とあっという間にアンケートを作ってくれたため、初めてこんな形で妻の気持ちを聞くことになりました。


お願いして数日後…

妻が返してくれたアンケートを読んで、私は初めて知りました。


以前と変わらないやりとりの裏側で、

私と妻の間に、

そして子どもたちに、

実は小さな変化が起きていたことを。



このnoteでは私と妻、子どもたちが「生理」を巡ってどのように変化したかを書いてみたいと思います。

アンケートの話に入る前に、まずは私たちの家族の話から


うちの家族は、私と妻、2人の娘の4人家族です。
今、妻は専業主婦をしています。

朝は家族がそろう貴重な時間。
わが家では子どもたちも各自でパンを焼いて食べています。

子どもたちは「昨日ね」「聞いて、聞いて」と朝からにぎやかにおしゃべりです。

今朝は妻から
「庭でとれた柚子が完売した!」
と報告がありました。

うちの庭には柚子や柿、梅が植えてあって、毎年いっぱい実がなります。
お隣さんに配っても余るので、子どもたちが庭先に小さなお店屋さんを開きます。
(妻がサポートします)

収穫した実をきれいに磨いて、家の前に並べたところ、
ご近所のおばあちゃんたちが来てくれて、昨日は柚子47個が売り切れたそうです。

お店屋さんの様子

平日の夕方は、妻は子どもたちと夕食をとり、お風呂に入れて、寝かしつけ。
一緒に寝落ちしています。

妻は、よく

「なーんにも考えずにバラエティ番組をボーッと見たい」
「ゆっくりする自分の時間がほしいわぁ」

と言っています。

一日の育児を終えた後は消耗しきっていて、自分の時間を過ごすための体力と気力すらなくなっているそうです。

アンケートでは妻曰く

「平日は夫も仕事が忙しいし、何も期待はしていません」。

最近は特に新規事業の開発で帰宅が遅いので、誠に面目ありません……。

私は帰宅後、用意してくれていたおかずを温めて遅めの夕食。
それから食器を洗い、洗濯物などがあれば片付けます。

妻がまだ起きていたら、晩ごはんに付き合ってくれます。
妻は昔、教育関係の仕事に就いていたので、子どもの着眼点や行動、周囲との関係性などを分析してくれて、聞いていてとても面白いのです。

ある時から、二人ともPodcastを聴くようになり、面白かった話題を共有していました。

その頃、私は管理職になって初めて部下ができ、どうコミュニケーションを取るか、チームビルディングについて悩んでいたのですが、家族を1つのチームと捉えると、“見守る”ことや“環境づくり”、“コミュニケーションの取り方”などの共通点が見えてきて、
「会社の組織づくりと子育てって一緒なんだね」
と二人で共感したことも。

妻との会話から、いつも私は新しい気付きをもらっています。

妻は生理やPMSの時、
どんな気持ちなんだろう?

PMSとは生理前に起こる心や体の不調のことです。

質問:生理やPMSの時はどんな対処をしていますか?その時の心境も教えてください。

生理やPMSになったら、夫にしてほしいことを伝えて横になることがあります。
ただ、横になりながらもほとんど休んでいる感覚はありません。
生理を経験したことのない夫に、この体の不調も心の不安定もわかるはずがないとどこかで思っていて、生理を理由に休むことを許していない自分がいました。

アンケートより

私は妻がそんなふうに思っていたことを知りませんでした。
アンケート結果に驚き、少し心配になりました…

そういえば妻は以前、
「体の痛みを可視化して伝えたい。開発してよ。」
とよく言っていました。

妻のアンケートが教えてくれた
私たち家族の変化


質問:ご家族が生理に関するプロジェクトに関わるようになったことをどう思いましたか?また、何か気づいたことがあれば教えてください。

生理についてのプロジェクトが立ち上がってから、学会で聞いた話や最近の研究についてよく話したりしてもらっています。
私よりも生理の仕組みなどについて知っていて、まるで私自身が感謝され、大切に思われているように感じました。

アンケートより

自分としては、興味を持った話や驚いた話を紹介していたのですが、こんな風に受け取っていたとは。
嬉しい気持ちになりました。

生理用品IoT収納ケースのプロジェクトが立ち上がってから、私は新しい挑戦に夢中でした。

すでにいろいろな家電が世に出ていて、新しい商品の開発は難しい。
それでも、困っている人がいるならそこに「ニーズ」が存在し、自分たちの発想やものづくりで貢献できる。
そんな可能性を感じてワクワクしていました。

女性の健康課題についての勉強も始めました。


同じ悩みを経験することはできませんが、聞いたり見たりして知識を蓄積したい。

学会のポスター発表で、女性は痛みや不調があってもさまざまな事情で病院に行けなかったり、我慢したり、病院に行った時には手遅れになる事例もよく見られると知り、衝撃を受けたこともあります。

子宮がんなど女性特有の病気についても学び、妻に検診を勧めるようにもなりました。


性の異なる人々が同じ社会で共存していくには、どういう生物学的なメカニズムがあって、どういう課題を抱えていて、悩み、心配があるかを知っておいたほうが、コミュニケーションがスムーズになると考えるようになりました。
(「わかった気がする」と「わからない」の無限ループですが……)

「なぜ生理が存在しているのか」
を生物学的に考察した講演を聴講した話を妻にすると、
「日本における性教育って、生殖や女性を守る視点が強いけど、生物学的になぜ生理があるのかってアプローチは面白いね」
と興味を示してくれたこともありました。

メールで生理がきたことを知らせると、
「ゆっくりね」
と返事をしてくれる優しい夫です。
それでも以前は心から休めていない感覚がありましたが、夫が
「生理の辛さを知ってくれている」
という安心感からか、私のことを心から思ってくれているように感じ、本当に心の底からゆっくりと休むようになりました。
 
「今日はもう無理。寝たほうがいいから寝る!」
と決めて、行動がシンプルになったような気もします。

アンケートより



子供たちからも「ゆっくりしてね」


こうして私と妻が生理の話をごく普通にしているので、子どもたちも「生理」という言葉を自然に覚えていきました。

妻に生理がくると、6歳の姉は3歳の妹に向かって
「赤ちゃんがいないから、おなかをきれいにしてくれているんだよ」
と、生理の現象まで話しているのだとか。

そうして私と同じように、妻に
「ゆっくりしてね」
と声をかけるそうです。


性教育についても


質問:子育ての中で生理や性教育に関して日頃考えられていることがあれば教えてください。

子育てをしていると、娘たちへの性教育についても考えることがあります。
生理は女性のことだから母親の役目だと思っていましたが、わが家はお父さんと一緒に考えていく性教育でもいいなと思っています。

アンケートより

うちでは子どもたちが寝る前に、図書館で借りた本の読み聞かせをしています。

以前、妻が読み聞かせていた本は、小学生の女の子が生理になって、友だちに何か言われたり、お父さんに言いづらかったり、女の子の心理描写で生理を語っていて、子どもにも伝わりやすく、よく考えられているなぁと感心した記憶があります。

妻に頼まれて私が読み聞かせることも、たまにあります。
最近読んだのは、人体の仕組みの本。

その中に性に関する記述があり、
「次これ読んで」
「次はここ」
と言われるままに読んでいました。

積極的に教えようと思っているわけではありませんが、これも妻が言うところの「お父さんと一緒に考える性教育」に当てはまるもしれません。

性教育は、男性や女性などの枠を超えて、いろいろな視点から伝えられるのだなと感じ、それがとても大切だと思い始めました。
子育ての中で必ず通るであろう“性教育”の捉え方が変わったのは、母親としてうれしい変化でした。

アンケートより

当然、ご家庭によって方針はさまざまだと思います。

私自身が育った家庭が実際そうであったように生理をオープンに話したくないという考え方も尊重するべきだと思っています。

それでも私と妻は「話す」ことで、小さな、でも、とても幸せな小さな変化を手に入れました

娘たちも将来、親にでも、それ以外の信頼できる人にでも気軽に相談するという選択も取れるでしょう。

そういえば、先日家族のスケジュールを共有するスマホカレンダーに「生理予定日」と入力されていて、
「生理きたよ」
に加えて知る手段が増えました。

夫がプロジェクトに参加したことで、生理の話ももちろんですが、そこから私自身のことや家族の未来など、いろいろな方向へと話が広がっていきました。
前よりもずっと、夫との信頼関係が増していると感じます。
たぶん、生理をきっかけに、
「私(女性)しかわからないだろう」
というレッテルが剥がれた気がするから、何でも話せるようになってきたのでしょう。

アンケートより


私を信頼してくれて、
こちらこそ本当にありがとう。

「だれかが、私に起こっていることを知っている」
そう認識することで、気持ちが楽になる。


心の距離が近づいていく。


そう教わった「妻からの手紙」のようなアンケートは、私にとって大切な贈り物になりました。



これまでの記事はこちら

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