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野崎さんのMacが鳴らなくなった日〜2019.5.12 くるり『songline』リリースツアー「列島 Zeppェリン」@ Zepp福岡

くるりが昨年9月にリリースした12枚目のアルバム『ソングライン』、そのリリースツアーの福岡公演に行ってきた。アルバムリリースから8ヶ月と、昨今では珍しく期間を置いてのツアーである(本人たち的にはちょうどいい感じようだったけど)。前ツアーから引き続きギター松本大樹、キーボード野崎泰弘、そして本作や『NIKKI』にも参加したドラマー、クリフ・アーモンドを迎えての6人編成。アルバムジャケットを模したバックドロップが輝く中、開演。

一瞬、エレカシのミヤジと見違えるスーツルックの岸田繁の相変わらずの腑抜けた挨拶、そしてクリフのカウントから「琥珀色の街、上海蟹の朝」でスタート。ゆったりとした横揺れをキープする心地良い幕開け。その後も軽やかなポップス「ふたつの世界」、ロックギアを全開にした「シャツに洗えば」など、アルバム収録曲ではない自由な選曲で驚かせる。「Morning Paper」の激しさはその後の楽曲たちの序章となること、この時はまだ知る由もなかった、、

MCでアルバム曲を全然やってないことを触れつつ、岸田がフレットの長いギターに持ち替えて演奏するのはポスト『ソングライン』、つまり新曲。定型か大型かで言えば大型ポストと紹介された「Prog,Jazz,Metal(仮タイトル)」はまぁ曲名そのまんまのめまぐるしい展開で圧倒する異様な1曲だった。そういえば歌モノと変な曲をそれぞれ集めた作品を作ろうとしてて、その歌モノほうが『ソングライン』だったらしく。つまり次作はこんな曲ばっかになるのか!笑

アルバム曲は中盤にまとめて披露。ステディなボトムが際立つ「その線は水平線」、からっとした「ソングライン」、中でも本人たちが最難関と語った「Tokyo OP」が凄かった。同期音を流して演奏する予定がトラブルで音が出ず。なので急遽、完全に生音のみでのプレイ。テンポキープにも必要な同期音が無い中、スリリングながら息の合ったアンサンブルが次々とキメ続ける様には興奮しまくり!完奏後に「SAFE!」のポーズを取ったクリフ、イイね!

皆が思うくるりらしさを過去のデモなどを元に作りあげたアルバムということももあり、暖かくメロディアスな楽曲がとても多い。本人たちもしんみりしてきたと話していた通り、そんな気分に浸れる優しい時間。「忘れないように」の抱きしめたくなるあの感じ、昨年の「線」ツアーでは未披露だった「風は野を越え」のじっとり染み込んでくるあの感じ、「どれくらいの」の朴訥しつつも突如高揚してくあの感じ、様々な色合いの“感じ”を僕らの中に残してく。

フォーキーな「News」を一区切りに、くるりメンバー3人のみでの演奏を。頭文字が「き」「ぶ」「や」「な」etc..の数曲から日替わり選曲を行う様子。まずは「名もなき作曲家の歌を」と「ブレーメン」でさっぱりとした切なさをくれた。そして次にもうすぐ来る季節に向けて「Natsuno」を。削ぎ落とされたアレンジながら佐藤社長のベースのうねりを楽しめた。個人的には、恐らく候補にあったであろう「宿はなし」を期待してたけど、また次の機会に!

再び6人編成に戻り、音源でもクリフがドラムを叩く「Tonight is the night」から、カオティックな終盤へ。「スラヴ」はラストには原曲を無視しきったハイスピードなアレンジへと変貌し、「お祭りわっしょい」はふてぶてしさを増し更にコクのある仕上がりに(ラストにはファンファンによるドラ叩きも)。そしてイントロで思わずガッツポーズをしてしまった「すけべな女の子」で、夏の夕暮れへとトリップしてしまった。彼らなりのナンバーガール復活の祝砲?

ブリブリなシーケンスで一斉にフロアが湧いた「ワールズエンド・スーパーノヴァ」。広い会場がとにかく映える!ストイックなダンスビートでブチ上げた後は、めちゃくちゃヘンテコな「Liberty&Gravity」で我々のステップを止めさせない。狂乱を巻き起こした後、本編を締めくくったのは名曲「HOW TO GO」だ。最初のダダダ!だけで全身に鳥肌。たっぷりと、それでいて熱のこもった演奏。破滅的にギターを弾き倒す岸田繁は恍惚とした表情をしていた。

アンコールでは、水前寺清子「365歩のマーチ」のアンサーソングだという新曲「SAMPO」を。リラックマが歌詞にも登場するほっこりしたノベルティソングだが、ベースは激ムズだし、歌謡曲にも似たテイストはくるりの新機軸だ。そんな複雑怪奇な曲の後、ツアータイトルにちなんでLed Zeppelinのカバー!キッズに戻ってシンプルに演奏を楽しむ姿は嬉々としていた。そんな多幸感を最上まで引き上げるラストは「ロックンロール」。正解でしかなかった。

とにかく今宵のライブはギタープレイが際立っていた。松本大樹と岸田繁がお互い譲り合うことなく鍔迫り合ってくれていた。20年目を超えてなお、年々開放的になり続けている事実、面白すぎる。本当に、まだまだすごいぞくるり。

ちなみにトップのクソダサい写真に明朝体でくるりって書いてる画像は、新曲がもしもシングルカットされたら、というMCの中で岸田さんが妄想していたジャケット案をちょっとした出来心で作ってみただけです。

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