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2020年9、10月に観た映画(チィファの手紙/TENET/スパイの妻/罪の声)

チィファの手紙

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「ラストレター」を岩井俊二自らが中国で映画化したもの。年始の「ラストレター」と同じところでしっかりまた泣いてしまった。「ラストレター」と違って、夏から冬に舞台を切り替えたことで劇中の感傷が一層際立っていたように思う。現代上海の豪勢な摩天楼と、80年代の色褪せた街並みの差異が映す時代の流れとかも日本よりギャップを感じた。30年って長いんだよな。

「ラストレター」は全編に渡って松たか子さんのずっこけ感が可愛らしい映画だったけど「チィファの手紙」の主演の方は実に凛としておられて、それもまたまた違ったクールなテイストの映画になってた。あと弟の配置を変えて大きくクローズアップしてたのも良かった。最後の長回しのシーンとか、やりきれなさをどこまでも表現してた。ゲームじゃ隠せない辛さがある。

でもまぁ、どんな季節、どんな国であれこの映画に通奏する人が人を想う眩しさは普遍であり不変だと示してくれる作品でもあった。劇中で繰り返される卒業スピーチの内容って、そこまでこの映画全体を内包している文章じゃないはず。なのだけど、不思議なことにあの言葉でなくてはこの映画を抱きしめることのできない。永遠に刻まれた心の痕跡として、この上ない言葉。


TENET

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時間ってまだこんなに遊べるモチーフなんだ!と頭痛くなりながらも思えた映画。分からないものは分からない、だけど何か圧倒的だ!っていう在り方そのものが娯楽超大作の名に相応しいと思った。最大の難所は多分2箇所くらいなんだけど、その2箇所に詰め込まれたアイデアを理解するに何度観れば良いのだろうか、と、ネタバレしようにもバラし方が分からないのよ。

https://youtu.be/AZGcmvrTX9M

劇中のルールや話の運び、画の作りなどロジカルな組み立て方をしつつ、例えばまどマギやシュタゲにおけるエモポイントに近い情感も入ってて好きなやつや!ってなった。「インターステラー」もそうだけど、技巧的でありつつめちゃ感情に訴えかける展開もあるっていうのが好みすぎる。こういう海外SF映画を沢山観たいんだよな、誰かオススメあったら教えてください。

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Tジョイ博多にあるドルビーシネマで初めて観たけど、とにかく音がデカすぎて迫力最高だった。映像自体も美しくて綺麗な風景が映るもんだから、うわー絶景じゃん!とか思ってると話がとんとん先に進んでしまうから慌てまくったりもした。エンドロールはほぼクラブ状態だったな、倫理さえ破綻してれば踊り出してたよ。ただ話に集中するには普通の劇場で観るのが最適。


スパイの妻

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黒沢清が歴史サスペンス?と疑問を抱きつつもぐいぐいと物語に引き込まれていった。戦争が迫る日本に流れる容赦ない無情さはまさしくクロサワ映画の不穏さだし、彼の得意とする世界終末という匂いまでも、1945年のムードに通じていた。夫婦の物語が世界の存命に繋がっていく、これぞ本当の意味でのセカイ系じゃないか!と思ったりもした。2人だけが秘密の魔力のお話。

時代に引き裂かれる結びつき、みたいな部分だと同じくNHK制作の「ロンググッドバイ」を思い出したりもした。妙に寂しい気分になるんだよなぁ、今に連なる過去の中にどこにも出ない世界が広がっている事実が。歴史の闇とか、正史にはない謎の存在とか、めちゃ好みなジャンルだなと改めて。だから「秋山のパン」とかも好きなのかな、あれも歴史改竄バラエティだから。

https://youtu.be/RaWHuyRy3aI


蒼井優、当然わかっているつもりだったけどやっぱり圧倒的な俳優だった。最初はゆりやんレトリィバァのやってる昭和の女優モノマネみたいでこれ大丈夫か?と思ったけどみるみるうちに蒼井優の肉声として馴染んでいく凄み。終盤、強烈に黒沢清を感じるシーンがあるのだけど、そこでの表情とか鳥肌立っちゃう。最初と最後でどえらい表現の幅を見せつけてくる。圧巻。


罪の声

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グリコ森永事件をモチーフにしたルポルタージュ的ミステリー作品。証言を積み重ねて真相に向かっていく、、という流れは「残穢」的で若干ホラー的なスリルも伴っているしそこにどんどん観客側も入り込んで行っちゃうのだけど、、そのエンタメ性にちゃんと劇中で待ったをかけるのが野木亜紀子なんだよなぁ。ふっと冷静になってから初めてこの話の真意に辿り着ける。

現実投影型の創作物ってどうしてもそれが起こったことへの興味とか自分の住む世界と照らし合わせて「こんなことあるの?」という気持ちで面白がる、っていう部分があると思うのだけど、そこにしっかりと一石を投じていて。1つの事件が立ち上がってくる幾つもの群像、その先へと想像を巡らせる力の大切さを問うていた。まさに「MIU404」の流れで出すに相応しい一手。

次々と現れていく出演者たちの中でも、ひときわ印象的なのはガリガリになってしまった(役作り!)宇野祥平で、この人がこの立ち位置に来るのか、、!という喜びとそこに描かれている事象の差異に感情ぐちゃぐちゃになった。水澤紳吾も出てたし、「ぼっちゃん」とか白石晃士作品とかのどん底にいる人たちの視点も織り交ざってきて、かなり重厚な社会派作品だったと思う。


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