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シャベルP
2019年8月23日 00:25
まず最初の大きな事件。 それをタウロスは良く知っていた。最も大きな二つの大国が激突し、タウロスが選んだ王の国が大勝し、最終的に相手の国を併合するのだ。 そうして、大陸最大の国家ができる。 その後は、どうやった所でその大国が全ての国をなぎ倒しておしまい。 ゆえに、この歴史を選んだ時の勝負は短時間で終結すると決まっていた。 遊戯を始めて、歴史遊戯の中で4年が経過した。 タウロ
2019年8月22日 00:22
振り返ってみれば、ここまでこの男に乗せられていると言っても過言では無い。 であれば、最後は絶対にこの男よりも俺に有利な勝負をしなければならない。俺が最も得意とする頭脳を使った勝負・・・。 とすれば・・・。あれを、もう一度持ち出すか。 あれは、俺と神しかやったことがない。俺は最後には神にも勝った。そうだ、これならば絶対にやった事が無いのだから、負ける理由が無いはずだ。 あの舞台の中
2019年8月21日 00:25
「加減はしてあげましょう。どんな精霊も、風の前には無力であることを教えてあげます」 リング上に立つウィンが手を振ると、それだけで突風が起こる。そして、ウィンの側に風の精霊の姿は見えない。「・・・風の寵児か・・・」 ジョージは、ウィンの正体に少しだけ心当たりがあった。ウィンは、良く知っている誰かに良く似た特性があると言えた。「モカナちゃん、無理、しないで」 そう心配そうに声を上げ
2019年8月20日 00:47
「さて、それじゃ始めといくか。勝負は3本勝負。1試合につき1人まで。1つでも負けたら、そっちの勝ちでいいぜ?」 と、ジョージがタウロスの顔を見上げてニヤニヤと不敵に笑ってみせると、タウロスは不愉快そうに顔をしかめた。「・・・自惚れるな。2本先取で構わん」「へえ。ま、それでいいならそれでもいいぜ?じゃ、まずは心技体の体からいこうか。どうする?俺としちゃ、殴り合わせて勝った方が勝ちでいいと
2019年8月19日 01:45
――――――――――――――――――――第35章 心・技・体!三番勝負――――――――――――――――――――「ごめんなさい、ジョージさん。・・・珈琲、まだ飲めるのは無かったです・・・」 申し訳なさそうに俯くモカナに、ジョージは胸が締め付けられるような想いだった。 モカナは、何よりも最初にジョージが美味しいと感動したこの里の珈琲を手に入れる為に、夜の森を歩いていたのだ
2019年8月18日 00:48
「ああー、スッキリしました!一生分の勇気を出して、一生分の嫌味を言えた気がします!あの大役を任せて下さって、ありがとうございました」 ニカが晴れ晴れとした顔で、深々と頭を下げる。ジョージは苦笑いしつつ、隣で憔悴しているコートに目をやった。「・・・気が気じゃなかっただろ。お疲れさん」「妹の知らない一面を知ったような気がします・・・。しかし、思った以上に上手く行きましたね。順調すぎるくらい
2019年8月17日 00:49
タウロスは夢を見ていた―――大昔の夢を。 神がいて、タウロスはその命に従って民を導いていた。実験し、結果を報告し、民には慕われ、神には認められ、最も充実していた頃の夢だ。 目が覚めると、聞き慣れた鳥の鳴く声。静かな森の片隅の、巨木の寝床。木漏れ日が降り注ぐ森の小部屋が、彼の寝床だった。 神は、他の地を見てくると言って姿を消してそれきりだ。 取り残された―― その侘しさに、タウ
2019年8月15日 00:26
「ひでえ目にあった・・・」 と、袋に詰められていた男ラグアがジョージに蹴られた脛を押さえてぼやく。「彼は、私達の幼馴染のラグアです。ラグア、私達の家は………どうしてあんなことに?」「お前らがタウロスと喧嘩して、外に出て行ってから、タウロスの野郎見せしめにってお前らの家を焼いたんだよ。何が神の下僕だ。野蛮なのはてめーじゃねえかって話だぜ。で、いい加減我慢してた俺達も頭に来て、立ち上がった
2019年8月14日 20:44
最初に聞こえたのは、沢を流れる水の音。岸壁を小さな水流が滴り落ちる音。 洞窟を出て、背面が山頂に至る岸壁。そして正面には、見渡す限りの青い空と、雲海だった。 その縁を、緑の森が飾る。その緑に囲まれた窪みに、どうやら人家が集中しているのが見て取れた。その家々からは、細く煙が上がっていた。「・・・すごく綺麗です」 モカナは、本来ならば見慣れていたはずのその景色に息を飲み、コートとニカ
2019年8月12日 23:50
「・・・大体纏まったな。輸入品については、まず3国の商人が集って会議をした上で取り決めということで。異論は?」「議論は尽くしました。・・・納得はしています」 ヤモンドの王子は、手応えありといった顔でジョージに笑いかける。ジョージは会議中、極力声の大きい人間だけの意見にならないようにバランスを取っていた。それがなければ、まだまだ世間知らずの王子には荷が重い仕事だっただろう。「よし。では、
2019年8月11日 23:50
「武力で改革ってのは、無しにして欲しい」 全員が珈琲を飲み終わったのを見届けて、ジョージがそう切り出した。「しかし、それでは金をかけて準備した我々の立場がありません!」 案の定、損得勘定に敏感な商人がジョージに食ってかかる。「それを無駄にするとも言ってない。まあ、ここまで大勢はいらないな。10分の1でいい。金は・・・まあ仕方ない。珈琲商会が負担する。こっちにも得がある話になる予定だ
2019年8月10日 00:41
私は・・・幻を見ているのだろうか? これは珈琲だ。タウロスの里にしか無いという、珈琲。それも、里とは違う香りの珈琲だ。 そんなはずはない・・・。珈琲を管理しているのは、アラビカ家。他の人間は、珈琲を入れる技術において、こんな見事な香りを引き出す事はできない。 1人だけ、心当たりがある。だが、そんなはずは・・・あの人が・・・彼女が下界でうまくやっていけるはずはない・・・。頼り無くて、珈
2019年8月9日 00:19
村で一番大きな家で、2人の男が顔を突き合わせていた。「議論はやはり纏まらんな。あの里から出てきたという男も、世間慣れしていないのが丸分かりだ。このままでは、君達にタダメシを食わせるだけで終わってしまう」 片方は、ジョージを雇用した傭兵隊長。もう片方は、イリェの将軍だった。「ええ、我々も実績を残せないのでは困ります。そこで、閣下に少々お耳に入れたいことが・・・」「ふむ?」 将軍
2019年8月7日 21:42
「で、どうだ?そっちは。新しい情報はあったか?」 昼時、キャラバンから少し離れた木の下で、傭兵風に軽めの鎧を着込んだジョージが、ウェイトレス姿のルビーに尋ねる。「この間の情報のウラが取れたさ。やっぱり、見込み利益をどう分配するかで上の連中は揉めてるみたいさね」「・・・ま、そうだろうな。こっちの筋からも、同じ情報が来てる。革命派の連中も、里暮らししか知らないもんだから、味方に巻き込んだ連