マガジンのカバー画像

短編小説

10
短編の小説を気まぐれに投稿します。
運営しているクリエイター

#短編

【短編小説】自慢の上司

【短編小説】自慢の上司

「明暮くん、メールの一つも作れないの?」

壁は黄ばんで所々にヒビも窺えるオフィスの空気は、真夏にも関わらず一瞬で凍てついた。
あまりの唐突さに自分の胸にジャックナイフが刺さっていることさえ認識できなかった。
脇からは一筋の汗が垂れ、白いワイシャツに辿り着くと、吸い尽くされた。

「すいません。すぐ直します」
出社一日目は最悪の形で幕を開けた。

家に帰って黒の戦闘服を身に纏ったままベッドに倒れ込

もっとみる
【短編小説】ねがい

【短編小説】ねがい

ぼくには誰にもいえない秘密がある。
これはお墓まで持っていくつもりだったんだけど、今日は気分がいいから特別に君にだけ教えてあげる。

ぼくはね、人のきもちがわかるんだ。
“そんなことあるわけないじゃん!”
って思うよね。ぼくもそう思う。
けど本当なんだよ。

君のきもちがね、色で教えてくれるの。
悲しいときは、あお。
怒っているときは、あか。
嬉しいときは、きいろ。

常日頃わかるわけじゃなくて、

もっとみる