【短編小説】ねがい
ぼくには誰にもいえない秘密がある。
これはお墓まで持っていくつもりだったんだけど、今日は気分がいいから特別に君にだけ教えてあげる。
ぼくはね、人のきもちがわかるんだ。
“そんなことあるわけないじゃん!”
って思うよね。ぼくもそう思う。
けど本当なんだよ。
君のきもちがね、色で教えてくれるの。
悲しいときは、あお。
怒っているときは、あか。
嬉しいときは、きいろ。
常日頃わかるわけじゃなくて、
ぼくとお話ししてる時だけ君の色が見えるようになるの。
思っていることを言葉で表すのがヘタクソなぼくに、神様がくれた唯一のおくりものだと思う。
だから、ぼくはね、
ぼくが見えるせかいは、
さくらのようなももいろにしたいんだ。