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なぜ高齢者の方が水分補給してくれないのか? 飲んでくれない理由や対策、必要な水分摂取量について

「水分を摂って欲しいけど、全然飲んでくれない。どうしたらいいのだろう。」

高齢者の介護に関わる人は、一度は悩んだことがあるでしょう。


お茶を勧めても、ジュースを勧めても、「いらない」「飲みたくない」と言われ、何度も勧めているうちに「しつこいなぁ!」なんて怒られてしまう・・・勧める人も疲れて諦めてしまいそうになります。

夏場の熱中症対策だけでなく、冬は活動量も落ちがちなため、喉が乾きにくく水分量が落ちてしまうため、水分補給は欠かせません。


春だって、秋だって、梅雨時だって、まあ、飲まない人は飲まないわけで、この課題は1年中ついてまわります。

だからこそ、ここは水分補給してもらうために、徹底的に原因追求と対策をしていきましょう!

必要な水分摂取量

高齢者に必要な水分摂取量は、1日あたり2500mlです。
食事の中にも水分は入っていて、そこからも水分摂取はしているので、それ以外で飲み物を飲むのでは、1000〜1500ml程度必要です。

コップ1杯200ml程度で6〜8杯、朝起きてから夜寝るまでに飲んで頂く必要がある、ということです。



なぜ水分を摂らないのか?

「水分を摂らないと脱水になって具合が悪くなりますよ。」
「熱中症予防のために、お茶を飲んでくださいね。」

と、口酸っぱくなるほど言ってきた介護者は多くいますし、その数だけ、耳にタコができるほど言われている高齢者はいるわけです。

それなのに、なぜか頑なに飲んでくださらないのは、きっと理由があるはずなのです。


飲んでくれない理由


①そもそも喉が乾いていない
→正確にいえば、「喉が乾いていることに気づいていない」「喉が乾いた感覚が低下している」という感じです。
一般的に高齢者は五感が若い人よりも低下しているので、喉がかわいていないと思っているのです。
ですので、高齢者が「喉が乾いた」と感じてからでは水分摂取のタイミングとしては遅く、脱水が始まっているとされています。


②トイレが億劫、トイレの失敗が怖い
→水分を摂らなければトイレに行く必要がない、という物理的な発想です。
日中もそうですが、夜間の頻尿に悩まされているケースもあります。
そして家族や介護者から「おもらしするから、水分は控えてね。」と言われたことがある人もいて、そういったことを気にして飲まない人もいるようです。


③ムセてしまう

→ムセて苦しく、苦々しい失敗した経験として刷り込まれている人も多いようです。


④水分をあまり摂らない生活をしていた

→高齢者になっていきなり「水分を摂ってください」と言われても、そうそう生活は変えられません。


⑤体調が悪い

→口の中や喉の違和感、胸焼け、胃の重さ、お腹が張っているというような、消化器症状以外でも、頭痛、腰痛などの痛みや、なにか悩みがあるときに飲み物を飲もう、とはなかなかなれないものです。


⑥「飲む」という行為の障害・失行

→飲むという行為自体がなんであるかがわからなくなってしまうケースです。お茶を飲むには、「コップを持って、口へ近づけ、口の中へ吸い込み、飲み込む」という一連の動作が必要です。そのどれができなくなっても、わからなくなっても、飲み物は飲めません。




水分補給の効果的な方法

先程挙げた項目ごとに、一緒に考えていきましょう。


①そもそも喉が乾いていない

→喉が乾いていない、という人に、理詰めで「そうは言っても熱中症が〜」という説明で飲んでくれるなら苦労はしませんよね。


上手い介助者の声掛けは、どのようなものでしょうか?


「テレビでお茶を飲むと体にいいって言ってましたよ〜。」
「いつもお元気な○○さん(有名人など)は、よく水分を摂ってるって言ってましたよ!」


介護の基本、ハロー効果というものです。

「お食事ごとに、一杯飲んでいただくことになっております。」


ここのルールってことにしちゃう作戦ですね。


コップたくさんお盆に乗せて、「お下げしま〜す・・・あ、まだ残ってますね、飲んでいただけると助かります〜」


勝手な片付ける目線であるように感じますが、主婦業をやっていた高齢女性には有効な手段で、残りをぐっと飲んでくださいます。
ただ、ムセやすいので注意は必要ですね!

②トイレが億劫、トイレの失敗が怖い
→失敗しても大丈夫だ、と都度伝えたところで、お気持ちは動かないと思います。失敗しても、ではなく、失敗しない、と伝えましょう。


失敗しないためには、たとえリハビリパンツ(紙のパンツ)を履いていたとしても、パンツにパットをつけていたとしても、トイレへ定時誘導することが大切です。


ぴったり何時でもいいですし、起きてすぐ、ご飯のあと、お茶のあと、寝る前、という生活に合わせたお誘いのしかたでもOKです。


失敗しない、というより、成功体験を積み重ねて、「水分をとっても大丈夫!」と安心してもらいましょう。


トイレそのものを億劫がる方には、「私もトイレに行きたいのでついてきてもらえますか?」とお願い作戦も有効です。


③ムセてしまう

→高齢者になると、唾液が減って確かにムセやすくなります。それで水分はより積極的に摂らなければなりませんが、その水分摂取でムセてしまっては、本末転倒です。


介護の現場でよくあるテクニックとして「水分にトロミをつける」というのがあります。


「トロミ剤」と検索すれば、各種メーカーが発売しています。すでにトロミがついているお茶というのもあります。最近ではカップ飲料の自販機で、トロミ付きが選べるものもあるんですよ!


飲み物にトロミをつけると、びっくりするほどムセなくなります!すんなり受け入れてくれる方もいますが、「トロミのあるコーヒー?絶対飲まない!」なんて仰る方も。


お試しで少量飲んで頂いたり、服薬の際に飲む水にだけトロミをつけたり、また服薬ゼリーを利用してトロン、ツルンとした食感に慣れていただくのも良いです。

また、水分摂取というくくりでいうなら、ゼリーを召し上がっていただくのも良い方法です。市販のものでもいいですし、お気に入りのジュースで手作りで何個か作っておくと手が伸びてくれるかもしれませんね。

④水分をあまり摂らない生活をしていた
→どうしようもなさそうですが・・・パーティ会場のウエイターさんのように、お盆に色んな種類の飲み物を載せて「お飲み物はいかがですか?」と敬々しく提供すると、つられて選んでくださることがありました。
飲み物を飲むというより、選ぶ楽しさの提供の勝利ですね。


⑤体調が悪い

→水分摂取の必要性は、健康の維持です。本末転倒にならないように、まずは体調確認をしてみましょう。


⑥「飲む」という行為の障害・失行

→ムセてしまうという嚥下障害の他にも、入れ歯が合わない、口の中が気持ち悪い、などの違和感も含めて考えると良いでしょう。入れ歯を外したり、口を一旦ゆすいだりすることでお茶を飲んでくださることもあります。


また、「飲んでくださいね。」と提供したのに、手が止まっていることもあります。認知症になると、短期記憶が低下し、「このお茶は飲んでもいいのかな?」「他の誰かのかも。」「喉乾いてたっけ?」飲んでる最中でも「何してたっけ?」となってしまうことは、よくあることです。適宜声掛けをしましょう。

「飲む、飲み込む」という言葉が伝わりにくいとき、介助者の口元を見せ「あぐあぐ、ごっくん」とやってみてください。つられてやってくださることもあります。


飲み込みが出来たら「いいですね!」「上手に飲めてますよ!」と声掛けもして調子をつけるのも良いですね。




まとめ

「水分を摂りたくないときだってあるよね。」と大きな心で受け止めたいし、そんな余裕が欲しいですが、ほうっておくと、脱水きっかけでどんどん状態が悪くなる高齢者がたくさんいるわけです。高齢者に寄り添いつつ、つぶさに観察をし、水分をしっかり摂っていただきましょう。

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