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『闘う舞踊団』をめぐる対話 金森穣×田中辰幸

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『闘う舞踊団』の刊行を記念し、2023年3月21日、新潟駅前のMOYORe:で開催された金森穣さんと田中辰幸さんのトークイベントの様子をお届けします。
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今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸『闘う舞踊団』をめぐる対話⑤

今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸『闘う舞踊団』をめぐる対話⑤

空っぽな自分が恥ずかしくて、読書家に田中 『闘う舞踊団』を読んでいると、言葉遣いも洗練されていて、いかにも読書家が書いたという感じがするのですが、幼少期からかなり本を読まれていたんでしょうか。

金森 まったく読んでいない。日本を離れてからじゃないかな、読み始めたのは。

田中 図書館とかに絶対行かないタイプですよね。

金森 うん、行かない。

田中 僕もそうでした。何がきっかけで読むようになっ

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今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸『闘う舞踊団』をめぐる対話④

今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸『闘う舞踊団』をめぐる対話④

「身体」ひとつで社会に向き合う舞踊家という生き方田中 本の中で、「将来設計から逆算的に今何をすべきかを考えるような合理的な生き方をすべきではない」と書かれていましたよね。ずいぶん古風なことを言っているなと感じるとともに、これを今の時代、新しく捉え直すとしたら、どういうことだろうと考えたんです。
 というのも、人間は楽をしたい生き物であり、時間をかけずに成果を出したいという人が増えているのは事実だか

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今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話③

今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話③

承認欲求と生理的反射の間で田中 それにしても、高校を辞めてまでスイスに行くとか、なかなか持てる時間感覚じゃないですよね。教室に座っていて、いてもたってもいられなくなるって、やっぱりすごいですよ。

金森 俺は頭が悪いから、教室に座っていても授業の内容が頭に入ってこないし。授業内容がバンバン入ってきて、やりがいを感じられていれば違ったんだろうけれど。そんな感じだよ。別に「俺は舞踊家になるんだ!」と肩

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今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話②

今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話②

観客の数と質を考える田中 穣さんは中学生のとき初めてニューヨークのアメリカン・バレエ・スクールに行って感動したと書かれていますが、その「感動できる」ということにも、やっぱり下地が必要だと思うんです。僕には、いいと言われているものに感動できない自分について考えざるを得ない時期があった。自分が見て面白くないものは無意味だと切り捨てられず、「世間でいいと言われているものがわからない俺ってなんなんだろう」

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今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話①

今を生ききるということ 金森穣×田中辰幸 『闘う舞踊団』をめぐる対話①

田中 まずは、出版おめでとうございます。これが著書第一作というのは意外な気がします。

金森 ありがとうございます。実は10年ほど前に一度、色々なところに書いた文章をまとめて出版する話が大手出版社からあったけれど、原稿を送ったきり連絡が途絶え、そのまま闇に消えていた。だから自分は出版には縁がないのだと思っていたら、昨年、夕書房・高松さんとの出会いがあって。そこから一気に進んだので、物事って進むとき

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