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ちょっとそこまで、春を探しに


2023.2.21

真冬の寒さに逆戻り。昨夜の煮物の残りをごはんにのっけて食べる。

健診結果を聞きに病院へいく。病院は好きじゃない。好きな人なんかいないと思うけど、一歩入っただけで気が滅入る。病院という名前はとてもよくないと思う。病をつくる場所みたいで。健康院にしたら病気に対するイメージも変わるのに。気持ちでやられちゃう人も少なくなると思うのに。ここでくる日もくる日も働いている人はすごい。私にはとても耐えられないと思う。院内ではまわりの空気に流されないように、吸い込まれないように、しゃんと気を持って、本かスマホの中に閉じこもる。

ライ麦ハウスで雑穀ライ麦パンを買い、ユニオンでお気に入りのひきわり納豆をまとめ買いする。どこもかしこもなんでも値上がりしている気がする。それを仕方のないことで済ますのはおかしいことのような気がする。仕方がないでなにもかも受け入れていると、いつのまにか社会は取り返しのつかないおかしなところまで来てしまうのだと思う。

青果コーナーでは地元のマダムがバナナを見ながら店員さんに絡んでいる。ねえ、ずいぶん青いのねこれ。はい、最近じゃこういう感じで入ってくるんです。そうなの、それにしてもずいぶん青いわねこれ。食べれるまでしばらく置いておかなきゃいけないじゃない。

由比ヶ浜のかなやさんをのぞくと、地元の無農薬みかんが売っている。うちではすぐ食べちゃうから多めに買う。パートナーと待ち合わせして、引っ越したばかりの頃にいちど来たきりだった麻心さんでお昼をいただく。由比ヶ浜が目の前の店内に、太陽が燦々と降り注ぐ。太陽がいちばんの湯たんぽだとパートナーが言う。ブッダボウルを食べる。どの具材もとても丁寧に味つけされているのがわかる。こういう味を作り出せる手はなかなかない。

長谷駅のすぐそば

陽射しは抜群だが風がかなり強い。長谷寺へ梅を見にいく。ちょうど見頃。枝垂れているのがとくに目を引く。白もピンクも黄色も紅梅もどの色も華やかでそれぞれのうつくしさがある。

おだんごみたい
寒空に映えるなあ
海岸を一望

梅もいいけど、足元も忘れちゃいけない。ちいさな福寿草が太陽をむいて健気に咲いている。群生しているのより、ひとりでぽつんと上を向いているのが気になる。福寿草をみると、ほころぶ。春がもうすぐそこまで来ていると教えてくれる。

ひとりで咲く
みんなで咲く

境内の海光庵で、みたらしだんごと緑茶のセットをたのむ。鉄瓶で出される濃い緑茶にだんごの控えめな甘さがちょうどいい。団子は太陽に負けないくらいつやつや光っている。ぺろりと食べてしまう。一面ガラス張りの窓から由比ヶ浜がよく見渡せる。音のない絵のようでしばらくみとれる。海光庵はお寺の精進カレーというヴィーガンカレーを出していたけど、最近はヴィーガンパスタも始めたらしい。

帰り道

うちまで歩いて帰ることにする。長谷から切通しを抜け極楽寺、そこから谷戸を通っていく。森に入ると一本の杉の木にひとすじの光が射しているのがきれいだったので写真を撮る。もっとおしゃれな格好していればよかった。

森で一枚

鎌倉にやってきて二度目の冬が終わろうとしている。この街でくり返してきた日常はどれも大したことなんかなにもなくて、ほんとうになんでもなくて、そしてかけがえがない。今までの街でも、これからいく街でも、おなじようにかけがえがない。季節はあっというまにうつろう。おなじままのことはなにもない。今日も暮れて、また明日がくる。






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