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雨降りの日は|ソウル日記4
2024.5.11(土)
朝ごはんに、粥の店SUGAへ。お客さん、みんな日本の人。がたいのいいお兄さんふたりに、親子同士かもしれない、女の子とおばさまの四人組。淹れたての生姜茶とじゃがいものちぢみを、わざわざきてくれたからと、サービスしてくれた。松の実が四粒、小舟みたいに浮かんだ生姜茶は、きれいなティーカップになみなみ注がれてでてきた。
カップをそうっともちあげると、ソーサーの真ん中にてんとう虫がかくれていた。昨日は、ずぼんにてんとう虫がずっとくっついていた。日本にいても、ほんものでも絵でも、てんとう虫をみかけることはあんまりない。縁起がいいとよろこんだ。生姜の味が濃くて、おいしかった。店のおねえさんは、綿みたいにかるくて高い声で、日本語をすらすら話した。お粥はぺろりとたいらげた。
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参鶏湯の具材を買ってみたくて、ふたたび、南大門市場へ。昨日の夕暮れとちがって、朝いちばんは、やっぱり人に元気がある。高麗人参のうすくスライスしたのと、参鶏湯セットを買う。地下にもみやげもの屋がところせましとならぶ。
歩いて仁寺洞へ。とてもりっぱなお寺で、お釈迦様の祭りが来週あるのを、リハーサルをしていた。赤や黄やピンクのちょうちんが空一面をいろどり、チマ・チョゴリを着た人たちが、両手につくりものの蓮の花を一輪ずつ持ち、踊りはじめた。すがすがしい伝統の音楽がステレオいっぱいに流れると、胸にぱっとひとつ、花の咲いたような気持ち。
お寺のなかに入ると、広くござのようなものがひかれ、数えきれない人たちが太陽礼拝のようなポーズをなんどもくりかえし、熱心に祈りをささげていた。私も、みようみまねで、三度お祈りをした。
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北村(プクチョン)の韓屋がならぶ地域へ。小高い丘の上にある。人が住んでいるしずかな場所に、観光客がぞろぞろやってきているのが、申し訳なくなった。鎌倉に住んでから、観光地に住む人の気持ち、観光地をおとずれる時の心がまえを、まなんだ。
おなかが空いたので、北村をでて、長い裏階段を降り、たまたま見つけた店でピビンパ定食にする。ひろめの座敷にいくつもちゃぶ台のようなテーブルがならんで、みんなで宴会みたいにいっしょになってたべた。パンチャンがすべてキムチで、川エビのキムチとチャンジャがおいしい。となりの席の、東南アジアの女の子ふたり組はコース料理にアラカルトを足してたのんだようで、とてもたべきれなさそうな量が、結婚式みたいにテーブルいっぱいにならんでいた。
外は雨になり、肌ざむくなった。北村へもどり、住宅街のなかにぽつんと建つ、東洋文化博物館に入る。晴れていればソウルが見渡せる、二階の展望台も、灰色一色でけむりの中のよう。手入れされた庭がついていて、植物たちがしずかに雨粒をうけている。
一階には貴族の家みたいなソファ席がいくつかあり、観覧券とセットの伝統茶口をつけてみるも、苦いのと甘いのがふしぎな感じでいっしょになった味がして、さいごまで飲めなかった。窓際の席で、中年くらいのカップルが向かいあって手をにぎりあい、神妙な顔つきをしていた。外は、いよいよ土砂降り。こころもとない折り畳み傘をひろげ、歩きだした。
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行ってみたかったソウル工芸博物館へ。刺繍とボジャギのコーナーが、とてもよくつくられていて、見応えがあった。みやげ店で、クリーム色のトレーナーにお茶をこぼしてよごれているのを隠すために、きみどりの鳥のかたちの刺繍のワッペンをひとつ買った。
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夕方、まだ土砂降り。連日たくさんたべたのと、雨でからだが重いのとで、今日の夜は抜いてもいいかなと思う。ずぼんの裾をぬらしながらヨンナムドンの宿へかえると、一階でチャントルさんとコナンさんが、ごはんをたべていた。韓国人は、雨の日はマッコリのんで豆腐キムチをたべるんだよと、おすそわけしてもらう。近所の人が差し入れてくれた、ねっとりした豆ごはん、しゃきしゃきした細長い青菜のキムチといっしょにいただいた。ふたりは水のように、ペットボトルのマッコリをがふがぶのんだ。
私たちの名前をハングルで読むとどうなるか、チャントルさんが書いてくれた。私は、クヮン、グネ。パートナーは、アン、ギウだって。
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