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2022年12月の記事一覧

再魔術化するテクスト──カルトとスピリチュアルの時代の文化批評

第一回 世界は再魔術化しつつあるのか?  倉数茂 0 宗教の凋落? それとも再魔術化?  マックス・ウェーバーが、近代を脱魔術化の過程として捉えたことはよく知られています。宗教改革と啓蒙主義以降、それまで世界を覆っていた宗教的力能は徐々に領域を狭めていき、やがて合理主義的思考に取って代わられる。これがウェーバーら、初期社会学の巨人たちの見通しでした。ではウェーバーの時代から約一〇〇年がたった今、世界の脱魔術化は完成したのでしょうか。  世界112の国で1981年から202

新書が1冊できるまで ③:書籍の「顔」をどうするか?

こんにちは、光文社新書編集部の江口です。先日、来年4月に弊社入社予定のみなさんとお会いする機会がありました。ちょうど1年前には、私も「内定者」としてひとつ上の先輩方のお話を聞いた覚えがあるのですが、それにしても時が経つのは早いですね。もう「新人」ではいられないわけなので、あらためて気を引き締めなければ……と焦っている今日この頃です。 さて、この「新書が1冊できるまで」も3回目の更新です。「原稿整理編」「入稿&校正編」につづき、今回はついに「完成&発売編」になります!……と予

驚き

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シリーズ一〇〇冊

(2022/09/07記)  かねてより愛してやまない三月書房の小型愛蔵本シリーズ。  作家に学者、編集者に経済人、歌舞伎俳優から劇作家まで、練達の書き手がものした洒脱なエッセイや滋味深い掌編小説、句集や歌集、台本などを収めた同シリーズが、このたび一九六一年のスタートから六〇年かけて一〇〇冊目の刊行という節目にたどり着きました。  先日、社主の渡邊徳子さんから、一〇〇冊到達を記念する展示&イベント開催のお知らせをいただいたのを機に、自分が何冊コレクションしているか数えて

一階堂洋「科学予算をすべて防衛費にしろ 内戦を起こして技術検証をしろ」

◆作品紹介

ひとりずつ、どの本を届けるか選んでいます「ブックサンタ」の舞台裏

この記事は2022年に公開されたものですが、ブックサンタは今年も実施中です!参加方法は変わりませんので、ぜひご参加ください。締め切りは12月24日のクリスマスイブまで。 昨年ライツ社も参加させてもらった「ブックサンタ」。 書店やオンラインで寄付した本はそのあと、どんな旅をして子どもたちのもとに届いているんでしょう。 運営団体の「チャリティーサンタ」は全国に42の支部があり、本部に届いた本が各支部に振りわけられ、そこからご家庭に届けられています。 今回はチャリティーサ

思想の最前線はこっちですよ

茂木健一郎先生がよく言及してる一人がレックス・フリードマンである。 あらかじめことわっておく。ワタクシ英語全然わからない。かといって茂木先生の自称生徒としては無視するわけにもいかず、 おなじみDeepLの脅威のパワーをお借りしつつチラチラとは見てたのであった。 なお内容は一貫して容赦ない。愚劣な大衆お断りである。おそらくこの水準の番組を制作するのはポンニチでは不可能である。 なにしろ、毎回のごとく落合陽一や成田祐輔の上位互換みたいなのが出演するのだ。 数が膨大なんで全

歴史のことば No.17 石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』

最近ある大学入試問題集をパラパラとめくっていて、「!」となった。 この表が掲載されている『世界史標準問題精講』は、受験勉強向け問題集としても非常に優れていると思うが、こんな表を巻末冒頭に掲げるとは、なにかしら思い入れがあるにちがいない。 もしそうなら賛同できる。ことヒトラー時代のドイツの歴史にかんしては、「ヒトラーが政権をとったこと」を、できるかぎり解像度を上げてとらえることがキモだからだ。 「ヒトラーが、その筋書き通り国民をコントロールした」 「国民の熱狂的支持によっ

読後で決める「2022年の新書ベスト5」

なぜ今年、新書を読みまくったのか?この一年、新書を読みまくった。おそらく学生時代より多く読んだはずなので、人生でダントツで新書を多く読んだ一年となったのは間違いない。 動機はピュアな知的好奇心というより、仕事がらみである。僕は現在VOOXという音声メディアのコンテンツづくりをしている。VOOXは各界の専門家の方に、10分1話を6本、合計60分、専門テーマについて話してもらう学びのコンテンツである。これを毎週お一人ずつ公開しているのだが、結構大変なのだ。毎週新しいコンテンツを

『ちょこっと京都に住んでみた。公式ガイド』発売記念!「はじめに」全文公開

あなたは、旅に何を求めますか? 「非日常」と答える人は多いかもしれません。でも時には、誰かの「あたりまえの日常」を体験してみる旅も、いいものです。その「あたりまえの日常」にこそ、自分では気づけなかった人生の醍醐味が隠されているものかもしれません。 テレビドラマ『ちょこっと京都に住んでみた。』は、東京での「日常」にちょっぴり行き詰った主人公の佳奈さん(演じるのは木村文乃さん)が、大叔父(演じるのは近藤正臣さん)が暮らす京都の町家に、ちょこっと住むことになったことから始まる物語

公式ウェブサイトがリニューアル! アートプロジェクトに関する情報を活用する、3つのポイントをご紹介。

このたび、アートプロジェクトの担い手のためのプラットフォーム「Tokyo Art Research Lab 」のウェブサイトを全面的にリニューアルしました! この記事では、それぞれの興味関心に合わせてウェブサイトを活用するための3つのポイントを簡単にご紹介します。 「Tokyo Art Research Lab」とは?はじめに「Tokyo Art Research Lab 」のご紹介から。 今回のリニューアルでは、Tokyo Art Research Lab の10年以上

図書館の人ってカウンターにいない時は何をしているの?

北海道大学附属図書館(本館閲覧担当) 小林果音  初めまして。カウンター等でお会いしたり、館内で姿を見かけたりしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、こうして長々とお話を聞いていただける機会というのはきっとこれが初めてだと思います。  私は2022年の4月から北大の図書館に入職しました。3月まではこの北大ではないものの学生として大学に所属していた、社会人としても図書館員としてもまだまだ未熟な人間です。  働き始めて半年の人間が諸先輩方のような素晴らしい文章を生み出

本の目録をとるという仕事

北海道大学附属図書館(図書受入・目録担当) 森菜摘 図書館の本を読みたいとき、借りたいとき、皆さんはどのように探しますか? 書架を眺めて、ふと気になった本を手に取ることもあるでしょうし、ホームページ上の蔵書目録システムで事前に目当ての本を調べておくこともあると思います。 図書館の本の背表紙には、請求記号と呼ばれる数字やアルファベットが書かれたラベルが貼ってあります。本は、この請求記号順に並んでいます。 北大図書館の請求記号は3段に分かれていますが、一番上の段

とどまる思想の社会デザイン論(その1)

01.はじめに 本論は、都市・建築に関する様々な実践を対象にしながら、都市論や設計論だけでなく、それらの背後にある事業計画の成立過程を論じる試みである。  事業の成り立ちを、権利者、行政、企業などの各主体がどのような手段で参加しているかという視点で解きほぐし、それを哲学や人類学の視点を参考にしながら構造化する。同時にそれぞれの成り立ちがどのように変化したかの遷移を捉えることにより、事業の成り立ちを能動的に組み替えるための手法を見出し、より自由な都市・建築の実現を目指す。  ま