文学+WEB版

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文芸批評と文学研究の雑誌『文学+』 運営「凡庸の会」、3号刊行中。 WEB版は中沢エクセルシオール忠之が運営。 連絡はbonyou.org@gmail.com 雑誌の購入はTwitterのプロフィール欄から是非! https://twitter.com/bungakuplus

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干さオレ~三軒茶屋逢瀬篇~(第四回)

文芸時評・10月 荒木優太 朱喜哲『〈公正〉を乗りこなす』(太郎次郎社エディタス)で目を引く「乗りこなす」という交通的比喩は、要するに用語を区別して運用できる能力を意味している。ジョン・ロールズ『正義論』は善と正義(公正)を区別した。個々人の価値観、善いことが競合するなかで、正義(公正)はそのレヴェルよりも一段上の、より公共的な社会のインフラに等しい制度やシステムに関与している。この観点を採れば相対主義的解釈(正義の向こう側には別の正義がある!)を防ぐことができる。複数の正義

    • 私小説論批判

      文芸批評時評・9月 中沢忠之 あなたは田山花袋という名前を知っているだろうか? 女学生の蒲団の匂いをかぐ痛いおじさん、もとい、文学史上自然主義の大作家として知られている。彼が明治37年(1904)に発表した「露骨なる描写」は、のちに私小説と呼ばれることになる文学ジャンルの旗揚げ宣言とも読める評論である。そこで花袋は理念や技巧を凝らした文章を批判し、自分の思うところをそのまま書くことこそが文学であるといい放った。「拙かろうが、旨かろうが、自分の思ったことを書き得たと信じ得られさ

      • 干さオレ~三軒茶屋逢瀬篇~(第三回)

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        • ポエムはみんな生きている(第七回)

          Let's go!フェミニズムパーティ!(part1) ni_kaお久しぶりです、忘れられたころに『文学+』WEB版にしれっとやってくるni_kaです。今回は、フェミニズムパーティへのお誘いです。どちらさまもふるってご参加ください。 ⭐⭐⭐ 「ジェンダーギャップ指数2023」の指針では、日本はなんと世界164カ国中、125位ですって(https://www.asahi.com/sdgs/article/14936739)。毎年低いとはいえ、今年は過去最低ランクでした。それ

        干さオレ~三軒茶屋逢瀬篇~(第四回)

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        • 2022年9・10月の記事
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        • 2022年6・7月の記事
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        • 2022年11月の記事
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        • 2022年8月の記事
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        • 耳ヲ貸スベキ!――日本語ラップ批評の論点――
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          ¥750

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          フーズ・ワールド・イズ・ディス?――ヒップホップと現代世界――

          第四回 音響/アンビエンス/エコロジー 韻踏み夫  政治のせいで貧困がいきわたり、犯罪が増加し、ポリシングには銃が用いられ、街にはパニックが。マーヴィン・ゲイ「Inner City Blues」は、そのようなゲットーの叫びを歌った。しかし同じアルバムにある「Mercy Mercy Me(Ecology)」と題された曲において、もはや物事はかつてのようではなくなったとして、吹き抜ける風が毒で汚染されていること、海に油が放出されていることなどを告発したことは、忘れられた一面であ

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          干さオレ~三軒茶屋逢瀬篇~(第二回)

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          渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第三回)

          顕れる観客  渡辺健一郎 やはり往復書簡の相手にあなたを選んでよかったと思いました。あなたと何かをするにあたって、往復書簡という形式を選んでよかったと思いました。何か正しい知識やあるべき態度を提示してくれるというよりも、そこから考えられることがたくさん湧出してくる――私は読書体験にそういうものを期待しており、まさに小峰ひずみの文章はその期待に応えてくれる。自分の文章もそうであれば良いなと常々感じていますが、私などはどうしても「なるべく誤読されたくない」という欲望が強く、放言の

          渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第三回)

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          再魔術化するテクスト──カルトとスピリチュアルの時代の文化批評

          第五回 コミューン主義の系譜 倉数茂 0 はじめに  前回までは、日本のカルト宗教について、オウム真理教と統一教会にフォーカスして考えてきました。その過程で見えてきたのは、カルトが日本と朝鮮半島の歴史的転変と深く絡み合い、かつ現在進行形の社会変容に根付いていることでした。  今回は「コミューン主義の系譜」と題して現代の「共同性」のイメージを検討します。これはまた、共同体についての問いを終生手放すことのなかった小説家としての大江健三郎を扱うための準備運動でもあります。  人

          再魔術化するテクスト──カルトとスピリチュアルの時代の文化批評

          文学史を鍛える

          文芸批評時評・6月 中沢忠之 最初に、直近で注目すべきトピックを紹介しておきたい。『ジャック・デリダ「差延」を読む』(23年4月)が刊行された。森脇透青による「差延」解説と討論の二部構成からなる。コンパクトな新書形式で読みやすい本書は、デリダの入門書であると冒頭に宣言される。入門書として書く/読むということは、デリダがテクストを読む/書く姿勢――「デリダのテクストにはむしろ、読者と「ともに」テクストを読み進めていくというような、講読の授業に近い雰囲気がある」――にも重ねられて

          文学史を鍛える

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          干さオレ~三軒茶屋逢瀬篇~(第一回)

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          フィクションの感触を求めて(最終回)

          ケンケン漁と道化の生 勝田悠紀 0  おにぎりと酔い止めを胃に入れ、船に乗る。まだ日の昇る気配すらない海にまわる灯台の明かりと、ばらばらに、でも手を携えたように沖に向かう周囲の船に高揚を覚える。顔に風を受けしばらく月を眺めているが、寝不足に酔い止めの副作用がかぶさり、彼は操縦室の下で横になる。次に目を開けたとき、すでに空は明らみ、匠さんが最後の糸をおろしている。  船の後方に目を凝らしたまましばらく経ち、ついに右端の糸を引くよう指示が下る。魚の感触が素手に伝わり、ふと手を

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          渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第二回)

          忠誠なくして反逆なし 小峰ひずみ渡辺健一郎様 Ⅰ  私は大阪平野の最北端にある五月山の麓に住んでいます。家を出て、南を向けば梅田の蜃気楼が白く汚れて透け見え、北を向けば新緑がざわざわと風に揺れているのが見えるのです。南は一年を通して一向に変化がありませんが、北の景色はむろん流転します。この木々の流転に合わせて「桜が咲き始めました……」とお返事を書きたかったのですがダメでした。出版社の編集者や選挙管理委員会の役人がカレンダーで動いているのに、自分だけは五月山と呼吸を合わせて、

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          記録と多声――あるいは祈りについて

          批評の復習(第三回) 須藤輝彦 拙文芸批評時評もどうにか第3回を迎えた。テロに戦争にと重たい話題が続いたので、今回は少しばかり肩の力を抜き、箸休め、というつもりで書いてみたい。  ということで、例によって遅ればせどころじゃない遅れっぷりながら、主要文芸誌の2022年12月号に掲載された評論系の文章を読んでみた。浮かびあがってきたのは、記録と多声というモチーフだ。  わかりやすいところからいけば、『文學界』の特集は「未来のドキュメンタリー」だった。そのなかでも個人的に、という

          記録と多声――あるいは祈りについて

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          渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第一回)

          指導者について、書くことについて 渡辺健一郎 小峰ひずみ様  往復書簡の提案、快諾していただいて大変うれしく、ありがたく思います。……せっかくこういう形式なのにどうしても堅苦しくなってしまいそうで、適切な第一歩というのが分からなくなり、書き出しに小一時間かかってしまっている自分に苦笑しています。無理やりひねり出した書き出しが、定型的で凡庸なものになってしまうことをお許しください。  なるほど、とりあえず書き出してしまうためにも、時候の挨拶などの「型」は用いられるのだと、今

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          フーズ・ワールド・イズ・ディス?――ヒップホップと現代世界――

          第三回 ヒップホップ的都市空間論の諸前提 韻踏み夫 ブロック・パーティに、グラフィティ、街角でのサイファーやストリート・ダンス、スケートボーディング。なぜこれほどまでにヒップホップと都市は分かちがたく結びついているのだろうか。実際、ラップの歌詞内容をとってみても、様々な都市の姿が歌われてきた。「Window開けhello山手東京/陰陽跨ぐ網の目の迷路/異様さ増す風景装う平静/右左車線日々に問いかけ」(SEEDA「山手通りfeat. 仙人掌」)。「港横浜24時展望/山下の埠頭オ

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          干さオレ~二子玉死闘篇~(最終回)

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