神谷竜介@千倉書房

京橋交差点の角っこで、90年以上、学術書、教養書を作り続けている小さな出版社の編集者。こんな本に関わってきた(https://booklog.jp/users/kamiya-works)。

神谷竜介@千倉書房

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    マガジン

    • 愛書家の楽園にて

      丸善ジュンク堂書店(池袋、名古屋、京都、福岡)と有志の出版関係者が協力して選書する企画棚「愛書家の楽園」。2017年に参加して以来、お手伝いしてきた企画に寄稿した文章を掲載します。

    • 漂う編集者

      千倉書房の編集者が、本と編集にまつわるエピソードを紹介します。普段は鍵のかかった別ブログのエントリから、差し障りの少なそうなモノをアップしています。

    • 神谷学芸賞・新書賞やってます

      自分が面白いと思った学術書、教養書をお勧めしたいだけのために作ってしまったprize。読むに足る「学」と読ませるに足る「芸」のバランスを求めて今日も私は書店をさまよう…。

    • いくつかの点鬼簿

      幽明の世界を隔てた懐かしい顔、お世話になったかた、そんな人々への哀惜をつづります。

    最近の記事

    日本国憲法 施行75年目の現在地

    (2022/04/17記)  みなさんは「不磨の大典」という言葉をご存じでしょうか。  これは一八九〇(明治二三)年に施行された東アジア初の近代憲法、大日本帝国憲法(明治憲法)のことを、磨かずとも自然に光り輝く玉になぞらえた美称で、戦後においても、ある時期までは誰もが知る一般的な表現でした。  しかし、一九四七(昭和二二)年の失効まで五六年以上続いた明治憲法を遙かに超え、日本国憲法は今年、二〇二二年の五月三日で施行七五周年を迎えます。  じつは七五年もの長きにわたり、

      • ちょっとした推理

        (2021/12/22記)  昨夜、元中央公論社のKさんから聞いた話。  Kさんが若い頃、「編集長」に伴われて作家の井伏鱒二邸を訪れたときのこと、何を切っ掛けか話題が当時NHKで放映中だった人気クイズ番組「連想ゲーム」に及んだ。  そのとき井伏さんの目が妖しく光り、「キミは檀ふみのことをどう思うか」とご下問があったのだという。  ちなみに当時、連想ゲームには、坪内ミキ子(坪内逍遙の娘)と檀ふみ(檀一雄の娘)という二人の女優(文士の娘)が出演していた。  じつは、井伏

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        • ホモ・サピエンス・プリントス

          (2020/10/17記)  東京都文京区に、ちょっとユニークな博物館がオープンしたのは二〇〇〇年一〇月のことでした。  その名は印刷博物館。日本を代表する大手印刷会社のひとつ、凸版印刷が創業一〇〇周年を記念して設立した、いわゆる企業ミュージアムですが、文化財レベルの収蔵品と斬新な切り口による企画展で、たちまち世の注目を集めるに至ります。  立ち上げ準備から同館に携わり、二〇〇五年から第二代館長を務めたのが西洋史家で東京大学名誉教授の樺山紘一さんです。  大学では長ら

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          • 前日譚

            (2021/10/12記)  二〇一二年の春まだ浅き頃だったと思う。  珍しく早い時間だったせいか、狭い階段を上って新宿ゴールデン街「こどじ」の扉を開けると、カウンターには偉丈夫がひとり座っているだけだった。  彼は丸めた背中をひねるようにこちらの様子を窺うと、見知った顔に気づいて相好を崩した。  写真家の石川武志さんだった。  石川さんも私もこどじの常連だ。初めて出会ったときのことなど微塵も記憶にない。ただ新宿のバーではありがちなことに、いつの間にやら顔見知りにな

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          • 愛書家の楽園にて

            • 10本

            丸善ジュンク堂書店(池袋、名古屋、京都、福岡)と有志の出版関係者が協力して選書する企画棚「愛書家の楽園」。2017年に参加して以来、お手伝いしてきた企画に寄稿した文章を掲載します。

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            • 48本

            千倉書房の編集者が、本と編集にまつわるエピソードを紹介します。普段は鍵のかかった別ブログのエントリから、差し障りの少なそうなモノをアップしています。

          • 神谷学芸賞・新書賞やってます

            • 11本

            自分が面白いと思った学術書、教養書をお勧めしたいだけのために作ってしまったprize。読むに足る「学」と読ませるに足る「芸」のバランスを求めて今日も私は書店をさまよう…。

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            • 4本

            幽明の世界を隔てた懐かしい顔、お世話になったかた、そんな人々への哀惜をつづります。

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            丸善ジュンク堂書店(池袋、名古屋、京都、福岡)と有志の出版関係者が協力して選書する企画棚「愛書家の楽園」。2017年に参加して以来、お手伝いしてきた企画に寄稿した文章を掲載します。

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            • SFから語り起こす自叙伝

              (2021/09/28記)  アポロ11の月面着陸と三ヵ月違いで生まれた私は、幼稚園の卒園文集に将来の夢を「宇宙飛行士」と書いた。  小学校の低学年から「宇宙戦艦ヤマト」にズブズブにハマり、世間が「逆コース」「軍国主義の再来」などと同作をぶっ叩いていることなどつゆ知らず。  小学校高学年に上がる頃には「銀河鉄道999」へ。そして小学校五、六年、中学校一年が「機動戦士ガンダム」の劇場版三部作の年で、すべて今は亡き大船オデオンへ見に行った。  当時SFに耽溺するのは小学校

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              • 厚さ45ミリの薄い本

                (2021/06/07記)  わが社の「鈍器本」四天王が見守るなか、新たな伝説が生まれようとしている……  というのは冗談であって、本当に見て欲しいのはこちらである。  これは束見本(つか・みほん)といい、実際に利用する資材で作るダミーである。机上のイメージ頼みでなく、より精緻なデザインワークを行うためのサンプルと考えて欲しい(だから中身は真っ白)。  ちなみに上に乗っているのが、普段私が使っているメヌエットライトクリーム(A/T43.5)という紙で作った束見本で、厚

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                • 第9回神谷学芸賞発表

                  (2021/07/01記) 1 口上 七月一日。二〇二一年も折り返しを迎えましたが、コロナ禍は一進一退でなかなか明るい見通しが立ちませんね。  さりながら、今年は学術書・教養書の実り豊かな一年だったように感じています。「この如何なる名誉も賞金も伴わない賞は、私が感興を覚えた学術書・教養書と、その著者と出版社にたいする個人的敬意の発露である」というのがうたい文句の神谷学芸賞、今年は例年以上にあちこち頭を下げて回らないといけません(笑)。  第九回目となる本年も、前年の六月

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                  • 統一の一歩先へ

                    (2008/09/01記) 「『米国』は全部『アメリカ』に統一するんですね」  とっさに何を訊かれたか判らなかった。  というのは、すでに何度もお願いし、とっくに承諾を得ていたつもりの統一ルールに関するダメ押しだったからだ。 「英国」は「イギリス」に。「米国」は「アメリカ」に。その他のルール共々、初校と一緒に一覧表をお送りしてあった。  ホテルオークラのラウンジで二ヵ月ぶりに返ってきた三校を間に挟み、私が対峙しているのは防衛大学校校長の五百旗頭真先生である。  沈

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                    • 自分で出版社をはじめるなら

                      (2020/12/17記)  昔、出版社をやるなら自分の誕生月を名前にしたいと思い、その流れでなんとなく各月の名を冠した出版社を探してみたことがある。  一月と二月は、いまのところ関係する業種に用いられている気配はない。書房でも書館でも書院でもヒットがない。  雅名の「睦月書房」にすると古書店がヒットするが詳細情報はなく廃業した模様。同じく如月を探すと東京都練馬区の古書店「きさらぎ文庫」がヒットする。  一九六一年創業の「三月書房」(東京都千代田区)は私も大好きな小型

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                      • ローストビーフへの長い道

                        (2011/12/12記)  本日、東京會舘にてサントリー学芸賞授賞式。  晴れやかなセレモニーが終わり懇親会に移れば、フロアはグラス片手に歓談する人々であふれ、運び込まれた数々の料理のよい匂いが鼻をつくようになる。  しかし、ライバル編集者たちの動向に目を配り、受賞者や選考委員たちの言葉に耳を澄まし、知り合いの執筆陣に挨拶まわりをしていると、一滴も飲んでいる暇がない。むろん、東京會舘の名物として知られるローストビーフも口にしたことがない。何度来てもハードルの高い集まり

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                        • 読みたい論文、読めない論文

                          (2018/02/14記)  有難いことに、読んで欲しいと原稿や論文を送っていただくことが増えた。一〇年前なら考えられないことだ。最近では抜き刷りが減り、メールに添付でデータが送られてくるケースが多い。  刊行予定が立て込み、何本もゲラが併走すると、申し訳ないが不急の原稿読みは後まわしになる。なかなか手が回らず、半年以上お待たせしまうことも少なくない。心苦しいが浅学非才の上、身体は一つ。今のところは状況の改善は見込めない。重ねてお詫びする。  公募の〆切が迫っているのだ

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                          • 第2回神谷新書賞

                            (2021/01/31記) 1.ひとまずの口上 今年の神谷新書賞を発表する。管見の及ぶ限りのことなので遺漏のほうが多いに決まっている。独断と偏見による銓衡と合わせてご海容を乞う。  2016年に亡くなられた日本経済新聞社の伊奈久喜さんが書評を書くたび嘆息していたことを思い出す。 「みんな書いちゃうと読んだ気になって本を手に取ってもらえないし、ぼやかして書くと、あいつは本を読まないで書評してる、なんて言われるし……」  私がやっているのは書評ではなく紹介に過ぎないが、そ

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                            • 信山社の倒産

                              (2016/11/29記)  今日は朝イチ、晶文社の島田孝久さんがFBに衝撃のニュースを書き込んで、暗澹たる一日を送りました。  深い事情はわかりません。でも、本の街・神保町の一等地に店を構え、名にし負う岩波のブックセンターを看板に、長らく唸るような棚作りをしてきた書店が、代表取締役が亡くなって一月ちょっとで破産宣告ってどういうことなんでしょう。そんなことあっていいんですかね。 (この数カ月は満足な補充もなく、棚はガタガタだった、とあとから聞きました…)  岩波ブック

                              • 微妙な散財(苦笑)

                                (2020/11/30記)  伊藤之雄さんの新著をお手伝いしている。東久邇宮稔彦の評伝である。しかも前半生! じつに渋い(笑)。  今回の評伝では、なるべく本文中に写真を入れて欲しいとオーダーがあり、ネット古書店を通じて全国から東久邇宮関連の写真資料を集めている。  すでにかなりの数に上るのだが「これは!」と思って入手した和歌山懸師範學校附屬小學校編『東久邇宮殿下御台臨記念 光榮の日を偲びて』(非売品)と、金沢第二警防団の「昭和十七年五月二十九日 東久邇宮殿下御台覧記念

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                                • 福沢研究の歴史的転換

                                  (2004/09/10記)  高橋箒庵といっても何者か知る人は少ないだろう。1986年に京都の思文閣が出版した『万象録』という箒庵の日記を見せられたのはかれこれ5年前、水上勉さんの勘六山房でのことだ。  そのときは箒庵が福沢諭吉晩期の高弟であること、溢れんばかりの文才を惜しまれつつ実業界入りして名を成したこと、などつゆ知らず、水上さんの解説に聞き入るばかりだったが、先日、箒庵の本名、高橋義雄を久しぶりに目にした。平山洋さんの『福沢諭吉の真実』(文春新書)においてである。

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                                  • 祝 文春新書創刊6周年

                                    (2004/11/14記)  一九九八年一〇月の文春新書創刊は本格的な新書戦争の到来を告げる華々しいファンファーレだった。中公、岩波、講談社現代の三強に加えて、ちくま、PHPなどが参入を果たしていた市場へ、いよいよ真打ちが乗り込んできたという印象だった。  相前後して打って出た光文社、平凡社、集英社などが、一点一点はそこそこ面白いにもかかわらずシリーズとして今ひとつパッとしなかったのに比べ、講談社現代という三強の一角の切り崩しに成功した文春は由緒正しい著者とコンテンツの蓄

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