見出し画像

「最後の夏」を奪われた人には、きっと大舞台が用意されている。ヤクルトの20歳・内山選手が土壇場で同点弾。日本S

2020年夏。ほとんどすべての高校スポーツで頂点をめざす機会が失われた。あの世代の高校生には、あまりにも残酷な夏だった。高校3年の最後の夏に、高校野球選手権が中止。星稜高3年だった内山壮真選手にとって、あまりにも無情な事態だった。あれから2年。プロの道に進み、日本シリーズという舞台で、起死回生の活躍を見せてくれた。

ヤクルトの内山選手にとって、高校生活は、まさにジェットコースターに乗っているように、浮き沈みの差が激しかっただろう。1年夏から甲子園に出場し続け、2年夏の全国選手権では決勝まで進み、星稜初となる夏の全国制覇まで、あと一歩まで迫った。

「来年こそは」と期して臨むはずだった3年春の選抜甲子園。それが世界中を襲う事態の影響で、大会が中止に。「最後の夏」に希望を持ち越した。

しかし、夏も中止となって、ラストサマーを迎えることはできなかった。この世代の高校生にとっては、あまりにも残酷な夏だった。

その内山選手にとって、最高の舞台が用意された。ヤクルトに入って2年目。日本シリーズで代打に起用されたのだ。

第2戦。オリックスに0-3とリードされている展開。九回無死一、二塁。相手は阿部翔太投手だった。

初球はスプリットを見逃してストライク。2球目はカットボールを空振り。いきなり追い込まれてしまった。3球目のカットボールはファールに逃れる。

しかし内山選手は落ち着いているように見えた。4球目、5球目のスプリットはいずれも低めでボール。しっかり見極めていたのだ。ポジションは捕手だけに、相手バッテリーの配球を読んでいたのかもしれない。

そして6球目。真ん中高めの141キロ直球を振りぬくと、打球はレフトへ。ぐんぐん伸びる。レフトが追うものの最後は見送った。ボールはレフトスタンドギリギリに飛び込んだのだ。同点3ラン!3-3となった。

まさに起死回生の一発となった。神宮球場は歓喜やどよめきの声で覆われていた。高卒2年目の20歳。初の日本シリーズ出場の選手が敗色濃厚の展開から「値千金」の同点弾を放ったのだから。

この試合、ヤクルトは代打の切り札として、川端慎吾選手、青木宣親選手のベテラン2選手をすでに使っていた。チームはパンチ力を持つ若手の一振りにかけるしかなかった。そして、内山選手は、見事に「ビッグチャンス」をつかんで、チームを救ったのだ。

ホームでの第2戦。零封されて、第3戦のアウェーに行くのは避けたかったはずだ。モヤモヤ感が残ってしまうから。しかし無得点の負けどころか、この試合をヤクルトはドローに持ち込んで、難を逃れたのだ。

高校時代に「最後の夏」を奪われて、内山選手は悲しみに打ちひしがれたはずだ。それが日本シリーズという最高の舞台で、まばゆい輝きを神宮球場全体に発したのだ。

高校生活最後の年に、自分が輝ける舞台を奪われた人たちへ伝えたい。必ず長い人生の中で、「光り輝ける」チャンスがきっと訪れるはずだ。そのチャンスを、ぜひとも、ものにしてほしい。

内山選手の起死回生の一発は、同学年だった人たちへの最高のエールとなっただろう。「人生の中で、その人にとっての大舞台は必ず用意されているのだ」と。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?