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37歳10カ月。最年長優勝の玉鷲。様々な分野で若手が活躍する中、土俵に輝いた「中年の一番星」

37歳10カ月。大相撲秋場所で玉鷲が最年長優勝を果たした。今年は様々な分野で、若者の活躍が光っていたが、土俵では「中年の一番星」が瞬いた。25日の千秋楽で、自分の得意技で栄冠をつかんだ姿は、神々しさすら感じられた。高齢化社会が進む日本で、大ベテランが頂点に立つのは、生きる勇気を与えてもらったようでもあった。

将棋の世界では今年2月、19歳6カ月で藤井聡太5冠が誕生した。最年少の記録だった。またプロ野球では、ロッテの佐々木朗希投手が4月に完全試合を達成した。これも最年少の20歳5カ月での樹立だった。

若者が光り輝く一方、年配の者たちは、どんどん隅っこへ追いやられている感があった。若者の活躍が、時にまぶしすぎるのは、自分が年を取ったことの証しなのだろう。

そんな中での玉鷲の最年長Ⅴ。2004年初場所の初土俵以来、一度も休まずに出場し続けている。まさに「鉄人」だ。「無事これ名馬」という格言もあるが、毎場所15日間、相撲を取り続けている玉鷲に、頭が下がる。

千秋楽の大一番。12勝2敗の玉鷲は、1敗差で追う高安との取組だった。シーンと静まり返る国技館。双方がぶつかる。激しい衝突音が響きわたる。これぞ肉弾戦。玉鷲は右のおっつけで押し返した後、いなして相手の体勢を崩した。

そこからは得意の押し相撲。決まり手の43%が「押し出し」の玉鷲にとって、優勝を決めたのも、「十八番」の技だった。

デビューからの連続出場は今場所で歴代3位の1463回。東前頭3枚目だった今場所、1横綱3大関をそろって破った。平幕が番付に載る横綱、大関をすべて破るのは、37年ぶりの快挙だった。

「小が大を食う」という言葉があるが、最年長Ⅴという視点だと、「老が大を食う」ともいえるのだ。

玉鷲はまだまだ現役を続ける意向だ。40歳まで幕内で頑張ってほしい。それどころか、玉鷲が大関になる姿を想像したくなる。「不惑の大関」。そんなことが実現する日が訪れてほしいと、私は真剣に思っている。

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