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「続投させるべきか、降板させるべきか、それが問題だ」。ロッテ・佐々木朗希投手の8回「完全」をめぐる名采配

昨日、17日の日曜日。ロッテの井口資仁監督は、決断を下すのに悩んだのではないか。八回までパーフェクト投球をしている佐々木朗希投手(20)。「続投させるべきか、降板させるべきか、それが問題だ」。井口監督にとって、シェークスピアのハムレットではないが、簡単な決断ではなかっただろう。

17日にホームの千葉であった日本ハム戦。佐々木投手は八回まで投げて、のべ24人の打者に対して一人も出塁を出さなかった。10日のオリックス戦で、完全試合の偉業を成し遂げたが、次の登板でも、パーフェクト投球を続けるとは。

今回も八回まで102球、14奪三振の圧巻のピッチング。しかし試合は0-0のままだった。八回の攻撃を終えた段階で、井口監督の采配は「ピッチャー交代」だった。

元々、井口監督は、この日の佐々木投手を100球程度で変える予定にしていた。それが、2試合連続でパーフェクト投球。当初の予定通り、交代させるのも簡単でなかっただろう。

ただ、八回限りで交代させたのは正解だったと思う。佐々木投手が終盤に入って、わずかだが、投球に乱れが出ていたように見えたからだ。七回に万波選手から三振を奪ったが、決め球のストレートがシュート回転して、真ん中寄りに入っていた。

そして、八回に近藤選手から三振を奪う直前、肩で息をしているように見えた。疲れがたまっていたのだろう。

さらに、味方の選手も攻守に相当のプレッシャーがかかっていたに違いない。完全試合を達成させるために、守備でミスは許されない。相当、緊張しただろう。

八回に、日本ハムの6番打者、野村選手が右翼線ギリギリにファールを打った時だ。スタンドからは悲鳴も聞こえた。ライトのマーティン選手は、両手をファールゾーンへ押し出すジェスチャーをしていた。審判がファールを示す手つきと同じだ。そこにパーフェクトが続けと願うマーティン選手の必死さが垣間見えた。

さらに味方にとっては、打撃でも点を取ってやらなければという過度の負担となっていった。佐々木投手の前回の試合では、初回に得点を奪っていたが、今回はパーフェクトが継続する中でのバッティング。どうしても必要以上の力が入ってしまっただろう。

チームは佐々木投手を大事に育てたいという方針もある。それを優先して、交代させた井口監督の決断は正しかったと思う。

海の向こう、アメリカのメジャーリーグでも今季、ドジャースのカーショー投手が7回80球を投げてパーフェクト投球を続けていたが、交代させている。投手の健康を優先させる采配は、日米ともに間違っていないのだ。

2007年には日本シリーズで、中日の山井大介投手が完全試合ペースで投げていたが、九回で交代している。

野球では大記録は、後々まで語り継がれるものだが、記録よりも重要なものもある。今回の佐々木投手も、長く野球人生を送るためには、八回限りの降板で良かったと思う。

井口監督にとって難しい決断だったろう。しかし、今回の交代は「名采配」として、後々まで語り継がれるべきだと思う。

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