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遠距離物語

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4年間の遠距離恋愛を終えた、私と恋人のこと
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#エッセイ

星のダイヤも海に眠る真珠も

星のダイヤも海に眠る真珠も

遠距離恋愛って、一体どこからが遠距離恋愛なのだろうか。

私のお友だちのカップルは、高校卒業ののち、県内の東の方と西の方にある学校にそれぞれ進学することになり、「私たち遠距離恋愛になるの」と言っていたな。私はそれを聞いて、この子は甘えん坊だな、なんて心の中でこっそり思っていたものだ。

私の想像する遠距離恋愛は、それこそ田舎から東京へ旅立つ少年と地元に残って少年を待つ少女のように、最低限都道府県を

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負けるもんか

負けるもんか

恋人と冬休みに会えなくなった。
冬休みは地元へ戻って来られないらしいのだ。

会えることを楽しみに思う傍らで、そういう場合も覚悟していたので、それほど衝撃的なニュースではなかった。私は臆病なので、いつも自分の心に保険をかける癖がある。一番悪い事態を事前に想像することで、実際に起きることに備えようとするのだ。

例えば、微妙な手ごたえだった数学のテストの点数を返却される前に、47点くらいだろうなと想

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さびしいことを認める

さびしいことを認める

いつも優しくほがらかになんて生きられっこない。

ときどきこの言葉が思い浮かぶ。誰かの言葉じゃない、私の言葉だ。そう思って歯を食いしばり、明日へと旅に出るため眠りにつく。私は完璧ではないからいつも笑ってばかりはいられず、ときどき怒ったり悲しんだりを繰り返しながら日々を重ねていくしかないのだ。

強がりを言うならそれを貫き通す強さが欲しい。強がりを言えないのなら、どこまでも泣きべそをかく図々しさが欲

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柔らかく光る

柔らかく光る

恋人が夏休みを少し残して、大学へ戻ることになった。

春休みの終わりから約4か月間会えないまま過ごし、約3週間の夏休みで幾度か会って、遠出のできない夏を一緒に過ごした。それでも近くの海辺へ行ったり、映画を見に出かけたり、ささやかなデートをした。

そしてついさっき、夜ご飯を私の家で一緒に食べたあと、「また明日ね」と言ってさよならをした。車まで彼を見送るとき、離れたくないなあと思いながら手を繋いで歩

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雨の日のお昼寝

雨の日のお昼寝

恋人と会った。夏休みに入ってから3回目だ。
普段離れていて会えないので、予定さえ合えば簡単に会うことができる夏休みはとても嬉しい。

昨日は雨がずっと降っていて青空は見えず、少し肌寒いくらいのお天気だった。梅雨みたいだなと思いながら彼と待ち合わせをして、お昼を食べ、本屋に寄ってから彼の実家にお邪魔した。

彼は優しくて朗らかな太陽のような人だから、一緒に過ごすととても心地がよい。昨日は午後から一緒

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はなれているけど

はなれているけど

高校3年生の放課後の帰り道、ふと好きな人が、
「東京へ行くかもしれない」
と言ったときのことが今でも忘れられない。

びっくりしすぎて、「へぇ…」としか声が出なかった。近くに紫陽花が咲いていたのを覚えているから、たぶんこれくらいの季節だったのだと思う。

なんだそれ。どうしてこんな、少女漫画でありがちな展開に私が巻き込まれているのだろうと、そのときはぼんやり思ったし、今でも思っている。

その人と

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