見出し画像

雨の日のお昼寝

恋人と会った。夏休みに入ってから3回目だ。
普段離れていて会えないので、予定さえ合えば簡単に会うことができる夏休みはとても嬉しい。

昨日は雨がずっと降っていて青空は見えず、少し肌寒いくらいのお天気だった。梅雨みたいだなと思いながら彼と待ち合わせをして、お昼を食べ、本屋に寄ってから彼の実家にお邪魔した。

彼は優しくて朗らかな太陽のような人だから、一緒に過ごすととても心地がよい。昨日は午後から一緒に昼寝をした。雨が絶え間なく屋根を打ち、開いた窓からは網戸越しに涼しくて新鮮な風がゆらりと入ってきていた。

ふたりで裸足のままベッドに横たわって、彼の匂いのするタオルケットを半分こにしてふんわりとお腹にかけた。そのまま、雨音を聴きながらぼんやりしていた。彼の閉じられたまぶた、その先にあるまつ毛を見ているうちに、雨音が私をまどろみへさらった。ただ優しくてそっと甘い、私が心から愛する時間だ。

雨の午後の昼寝なんて、なんと贅沢なひとときだろう。なにも特別なことのない、なんでもない幸せの時間。ただ互いの体温を感じながら眠る、呼吸を感じる、心音を聞く、この時間を私は心から愛している。

しばらくして、彼が起きたのが気配で分かった。彼は目を閉じたままでいる私をぎゅっと抱きしめて「あったかいなあ」と言った。身体が触れていると彼はいつもそう言う。私はそれを聞いて、この人が好きだなあと思う。

いつかこの雨の日のお昼寝もあたりまえになって、幸福だなあと思ったりしなくなるのだろうか。大人になれば忙しくてそんな時間も取れなくなるだろうか。それともやっぱり変わらずにその時間を愛しく思うだろうか。

ずっとこうしてお昼寝していられたらいいのになと思う。雨の中、まるで世界にふたりきりでいるみたいに、その時間に浸っていられたらいいなと思う。でもそうはいかないから、私は夕方には起きて家に帰る。私たちは、今はまだそういうふたりなのだ。

だけど会えない時間を超えて辿り着く未来で、こうして変わらず雨の日にお昼寝していられたらいいなと思う。夏休みはまだしばらくあるから、あと何度かはふたりでお昼寝をするだろう。雨の日じゃなくてもくっついて眠るだろう。その間だけは私たちは世界にふたりきり、同じ夢を見ていたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?