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【ブックカバーチャレンジ】思わず笑ってしまった本

このコロナ禍のなか、世の中が不安に包まれている。テレビのワイドショーでも、話題はコロナ一色。そんな中、ちょっとでも楽しい気分になりたいなあと思い、「読んでいて、思わず笑ってしまった本」という切り口で、選書してみた。笑いの種類は、思わずクスッと笑った、げらげら笑った、涙を流して笑った、微笑んだ、など、バリエーションがある。今回は著者ごとにご紹介する。

(※ブックカバーチャレンジとは何かについては、こちらの記事をご参照ください。)

1.浅田次郎『プリズンホテル』『オー・マイ・ガアッ』『きんぴか』

浅田次郎先生。私の大好きで尊敬する作家さんである。『地下鉄に乗って』『鉄道員(ぽっぽや)』などの感動的な代表作をはじめ、『壬生義士伝』などの歴史小説や、『蒼穹の昴』などの中国ものまでお得意であり、そのジャンルは幅広い。

ところで、私が国内出張で飛行に機に乗るときには、可能であれば、全日空(ANA)ではなくて日本航空(JAL)を選んでいた。それは、機内誌「SKY WARD(スカイワード)」に毎号連載されている、浅田先生のショートエッセイ「つばさよつばさ」が読みたかったからだ。こちらのエッセイは長期にわたり連載されていて、後に、『つばさよつばさ』『アイム・ファイン』『パリわずらい 江戸わずらい』『竜宮城と七夕さま』に、それぞれまとめられ、出版されている。機内誌向けだけあって、短く、テンポがよく、とても読みやすい。

さて、本題の、笑える作品である。タイトルに挙げた3作(『プリズンホテル』『きんぴか』『オー・マイ・ガアッ』)は、いずれも、浅田先生の紆余曲折の人生経験に裏打ちされた、極道やギャンブルに関する豊富な知識をベースとしたハチャメチャコメディであり、他の作家が容易に真似できない彼のお家芸であると思う。登場人物もストーリーも、とにかくぶっ飛んでいる。そんな中、時々、じわっと人間味あふれるエピソードも織り交ぜてくるから、浅田先生はすごい。『プリズンホテル』も、『きんぴか』も、テレビドラマ化されている。

2.奥田英朗『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』『町長選挙』

大病院のボンボンの精神科医・伊良部一郎と彼の患者たちの、ハチャメチャなストーリーを集めた短編集。奇妙な心の病気に悩まされる患者たちが、伊良部に助けを求めるが、毒を持って毒を制すような、とにかくぶっ飛んだ対応で、何故か結果オーライとなる。シリーズ3冊のうち、どの本のどの話も愉快で楽しい。よくこのようなネタを思いつくなあと感心する。このシリーズはテレビドラマ化もされた。

ところで、私がたまに夫と一緒に家で休日を過ごすときは、近くにいながらそれぞれ黙って別の本を読んでいることが多い。そんななか、私が、突然、休日の静寂を破り、ブッと噴き出し、涙を流しながら、ギャハハハハ、とお腹をかかえてバカ笑いを始め、ヒーヒー、苦しい!と、のたうちまわり、夫を驚かせ、あきれさせたのは、『空中ブランコ』のうち『義父のヅラ』という話を読んでいたときだった。あまりの(くだらない)おかしさに、笑いをこらえることができなかったのだ。

ネタをバラしたくないためこれ以上書かないので、ぜひ読んでください。

3.万城目学『鴨川ホルモー』

2006年の出版当時に、かなり前に話題になった作品。ホルモーにまつわる奇想天外なストーリーが大変ユニークである。すごい発想力だと思う。こちらは映画化までされた。

実は私は京都に住んでいたことがあり、この話に出てくる京都の場所にはなじみがある。吉田神社での例の名場面には衝撃を受け、やはりお腹をかかえて笑ってしまった(ただ、例の、昔のコマーシャルを見たことのない若い世代の人には、ちょっとわかりにくいかもしれないが。)。学生さんたちのアホさ加減がたまらない。

ちなみに、笑える、というカテゴリーからは外れるが、大阪城と大阪の下町である谷町6丁目、空堀商店街あたりを舞台としている『プリンセス・トヨトミ』もおすすめである(実は私は、大阪にも住んだことがある)。日本の歴史と大阪のカルチャーをベースに壮大なストーリーが展開されてる。やはりその着想がすごいと思った。こちらも映画化されている。

4.土屋賢二『われ笑う、ゆえにわれあり』『人間は笑う葦である』

土屋先生のことは、たまたま手にした週刊文春の連載を読んで知った。個性的な、くどいおやじっぽい、ベタな語り口のエッセイで、クスッと笑わせてくれる。くだらなくて、失笑する、という感じである。読む人によっては、ちょっとワンパターンでしつこい、と思われるかもしれないが、私にとっては、疲れが溜まってふっと息抜きしたいときなどに、ちょうどよい感じである。土屋先生の本業が哲学者であるなんて、そのこと自体がギャグのようで、面白い。沢山のエッセイ集を出していらっしゃるが、初期の頃のこの2冊をご紹介。

5.白石昌則『生協の白石さん』

2005年の出版当時、大変流行った本。 東京農工大の生協の担当者、白石さんが、お客である大学生からの「一言カード」に寄せられた各種要望に回答した記録を収録したもの。無茶ぶりの質問にも、温かくウィットに富んだ回答をされる。白石さんの温かいお人柄がにじみ出ている。思わず、なかなかやるなぁ、と、感心しながらついつい微笑んでしまう。

6.『おかんメール』制作委員会『おかんメール』

こちらは、携帯やスマホのメールの操作に慣れていない、世の中のたくさんの「おかん」たちが、子供たちに送った、ぶっ飛びメールを記録したもの。シリーズ化されているほど、沢山のネタが集まっている。ページをめくるたび、一瞬で吹き出してしまいそうになるので、電車で読むのは危険。おっちょこちょいで明るく、子供や家族のことが心配でたまらない、愛すべきおかんたちの顔が浮かぶようだ。

ちなみに、私のおかんも、大変お茶目なキャラの人である。彼女については、またおいおいゆっくり書いてみたいと思っている。

以上です。

いずれも本当に面白かったので、これを書いている最中も、始終、思い出し笑いでニヤニヤしていた。今が、外出自粛のステイホーム中で、独りのときで良かった。もしスタバとか、図書館とか、公共の場所でこの作業をやっていたら、かなり怪しい人か、アブない人、と思われただろう。

ところで、1~3に挙げた小説のほとんどは、映画化やドラマ化をされている。これらの作品が、エンターテインメント性に富んでいて、笑いを求める読者や視聴者のニーズにばっちり答えているということだろう。

私はいずれも活字で先に読んだのだが、後で映像を見ると、少しずつ違和感があった。先に映像を見てしまっては、活字から、脳内で面白シーンのビジュアルをあれこれ想像するプロセスを辿ることができないから、せっかくの娯楽の楽しみが半減してしまうだろうのではないだろうか。それではもったいないなあと思う。

人生には、こういう面白い本との出会いがあるから素敵だと思う。これからも、こういう出会いをどんどん探していきたい。

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