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【和田靜香選ブックリスト】「50代で一足遅れてフェミニズムを知った私」と32冊

和田靜香さん新刊『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』の刊行を記念して、一部書店さまで2種類のフェアを順次開催予定でございます。

フェアA:50代著者&20代編集者による、将来の不安を乗り越えるための20冊
フェアB:政治分野のジェンダーギャップを考える12冊

期間内にフェアに立ち寄れない方のためにも、ブックリストと推薦コメントを大公開! 書店さまからのフェア希望もまだまだ承っておりますので、左右社までお問い合わせくださいませ。

↓↓試し読みで1万字弱を公開中↓↓

◉50代著者&20代編集者による、将来の不安を乗り越えるための20冊

《50代著者・和田靜香選》

1.林芙美子 『放浪記』 新潮文庫

サブテキストとして
◉100分de名著 林芙美子『放浪記』2023年7月
◉林芙美子著、柚木麻子編『柚木麻子と読む林芙美子』中公文庫

50代には森光子のでんぐり返しで知られる『放浪記』を「100分de名著」で柚木麻子が現在のジェンダー視点で読み解くと、フェミ日記に読める。バイトで食いつなぐ若い女性が世の中に悪態吐きながら、シスターフッドで生きていく。3冊あわせて読んで。

2.塩沢美代子/島田とみ子 『ひとり暮しの戦後史』 岩波書店

1975年初版の、「戦後」の日本にひとり暮らす女性たちの生活史。恐ろしいことに、それは今とほとんど変わらない。「女はやる気をなくすようにされちゃう」「女は男の二倍、三倍やらなくては」って……。政治の世界に女があんまりいなかったこの半世紀、何も変えられなかったんだなぁと再確認する。

3.柚木麻子 『とりあえずお湯わかせ』 NHK出版

とりあえずお湯を沸かし、この世知辛い世界を堂々生き抜くのだ! 暮らしは抵抗だ!と、読み終えてつくづく思った。私たちが心地よく楽しく思うように生きるってことは、それ自体が市民無視の政治にノーを突きつけることぞよ。暮らしからこそ声をあげたい! さぁ、湯を沸かせ!

4.山内マリコ 『一心同体だった』 光文社 ★「遅フェミ」にも登場

「フェミニズムって分からなくて近づきたくない」と感じていそうな50代が周りに多い。でも、彼女たちも10歳から40歳、女性の友情を通してそれぞれの人生を描くこの小説には「あるある」「わかる」と思いそう。そしたら「フェミニズムの扉を開けたね~」って、紅茶淹れて差し出しながらニコニコしたい。

5.アルテイシア 『モヤる言葉、ヤバイ人』 大和書房

サブテキストとして
◉アルテイシア『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』幻冬舎文庫

ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い。←この書き出しから、膝パーカッションを打ち、法螺貝をブオオー!と吹き鳴らしたくなる。「フェミニズムを知るために最初に何読めばいい?」と聞かれたら、これを差し出したい。読み終えて、「息しやすい!」と感じたらもう1冊読んで長生きしよう。

6.氷室冴子 『新版 いっぱしの女』 ちくま文庫

1980年代に人気を博した『なんて素敵にジャパネスク』(集英社コバルト文庫)の作者で、2008年に51歳で亡くなった氷室さんはフェミニストだった。ただ女である故に抱かせられた3~40年前の氷室さんの違和感に、今の私も「わかるなぁ」って頷く。女が故に受ける社会の抑圧構造は変わらないねぇ。

7.長田杏奈 『美容は自尊心の筋トレ』 Pヴァイン

ルッキズムなる言葉は知っていても概念が良く分からない、「美醜のうち、醜を言ってはダメなのは分かるけど、どうして美を相手に言ってはいけないの?」という50代が周りに大勢居すぎる。さらに自らもルッキズムに囚われて年を重ねることを怯えたりも。そんなときにはこの1冊! 自分がいちばんラクになるYo!

8.温又柔 『魯肉飯のさえずり』 中公文庫

台湾人の母親を「なんでふつうのママじゃないの?」と恥じて成長した女性は、大学を卒業してすぐに結婚した夫の「自分にとってのふつうが誰にとってもふつうだ」という考え方にモヤモヤを募らせていく。2つの国と家族の物語。「ふつう」の殻を破って自分を見つけていく過程に、胸がギュッとなる。

9.野村麻里 『ひとりで食べたい』 平凡社

ひとりで食べる人生を送るあなたに手にとってほしい。ひとりで食べるとは「ささやかな営みのひとつだが、そこにはいつも、自分で決めたという自負を持っていたい」って、そうだー! 食卓はみんなで囲むから美味しい伝説はいらない。ひとりでモグモグ、美味しいんだよね。

10.今泉圭姫子 『青春のクイーン、永遠のフレディ』 シンコーミュージック・エンタテイメント

10代からずっと「好き!」を貫く、ラジオDJの嗚呼!クイーン推し活物語。好きを仕事にしてひたすら走り続け、憧れのフレディー・マーキュリーにもインタビューした。フレディを自分の思うように推し、人生も自分の思うように生きている姿に「なんてすてきだ」って胸熱くなる。

11.反トランス差別ブックレット編集部(青本柚紀、高島鈴、水上文)編 『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』 現代書館

トランス差別がネット上に飛び回る昨今、語られるのは「公衆トイレとお風呂」のことばかり。ふだんの生活は? 人生は? トランスジェンダーの方々の生活、悩み、喜び、何も知らないであれこれ言うのは違うだろう。読もう。知ろう。われらはすでに共にあるんだ。

《20代編集者・神山選》

12.ヴァージニア・ウルフ著、片山亜紀訳 『自分ひとりの部屋』 平凡社

私は母がベッドで寝る姿を目にした記憶がありません。物心がついた頃にはすでに父と共用の寝室には立ち入らなくなっていて、代わりにソファーに倒れ込んでいました。ですから、ウルフに出会うずっと前から、女性には「500ポンドの年収と自分の部屋」が必要であるということはなんとなく直感していました。100年経っても、状況はあまり改善されていないのが残念でなりません。

13.イ・ミンギョン著、小山内園子/すんみ訳 『失われた賃金を求めて』 タバブックス

同じように働いていても、女性は男性の7割程度しか賃金を受け取れていないという衝撃の事実を、私はこの本を読んで初めて知りました。7割というのは、リアルな数字に置き換えるとたとえば35万円が24万5千円になってしまうということで、それは生活水準が10万円分下がることを意味します。そうすると年金等にも影響が出ますから、男女間賃金格差は本当に深刻な問題なのです。

14.キム・ハナ/ファン・ソヌ著、清水知佐子訳 『女ふたり、暮らしています。』 CCCメディアハウス

今後社会の構成単位を、強制的異性愛にもとづく「家族」ではなく、「個人」としてもらうことは大前提として、その上で女友達とふたりでマンション買って思うままに暮らすってのもアリだよな〜と思わせてくれた本でした。しかし、親族以外と組むローンの問題もありますよね。本当はおもしろい生き方がもっと多様にあるはずなのに、家父長制が邪魔!

15.ミシェル・ザウナー著、雨海弘美訳 『Hマートで泣きながら』 集英社

<母が母にならなければ成し遂げられたはずのたくさんのこと> あるいは、<自分が母になったら失うもの> に思いを馳せたことがない娘はいるでしょうか。家族関係の良し悪しはさておき、人生のどこかの段階で一度はみな「母」について考え、何かを乗り越えていくものなのだと思います。そんなときにはこのエッセイがおすすめです。

16.レベッカ・ソルニット著、ハーン小路恭子訳 『説教したがる男たち』 左右社

勇気を出して「それ差別ですよ」と口にした瞬間に、相手から「お前フェミか?」「キターーっ意識高いヤツ」などの反応をされ、その後なにも言い返せなくなってしまったことがある人へ。この本は、「いかに差別で人が死ぬか」を端的に教えてくれます。差別を指摘することは殺人に待ったをかける行為ですから、自信を持って続けて良いと思います。

17.末木新 『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』 ちくまプリマー新書

人から死にたいと言われたときにも、自分が死にたくなったときにも役に立つ本だと思います。とくに意外だったのが、警察法第二条を根拠に、緊急事態には警察を呼んでもよいと書いてあったことでした。死にたいと思ったことがある人は人口の2〜3割なのに対し、実際に自殺で亡くなるのは2%ほど。ちょっとした工夫で止められる死もあります。

18.周司あきら/高井ゆと里 『トランスジェンダー入門』 集英社新書

5年ほど前、大学のジェンダーの授業では、FtMやMtFという用語を土台としてトランスジェンダーについて学びました。しかし、それは医学的な性別移行に重点を置いた表現であるため、今はトランス女性/トランス男性と置き換えることが好まれるのだとこの本で知りました。「前に聞いたからもう知ってるもんね」と学びを止めてはいけないと痛感します。

19.アンジェラ・チェン著、羽生有希訳 『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』 左右社

「自分は100%(異)性愛者だ」と思っている人にこそ読んでほしい一冊です。性愛者であっても、恋愛や結婚とセックスが繋がっていることに違和感を持つ人や、パートナーとのセックスへのモチベーションの違いで悩んでいる人などは、かなりの数いるのではないでしょうか? アセクシュアリティの視点を持つことで、その霧は晴れるかもしれません。

20.パク・ソルメ著/斎藤真理子訳 『もう死んでいる十二人の女たちと』 白水社

『百万円と苦虫女』は定期的に見返したくなる邦画です。あれを見ると、人生詰んでも鈴子(蒼井優/前科持ちの21歳)みたいに海の家で働いて、とりあえず100万円貯めてみたら案外なんとかなるんじゃないかと思えてくるんです。『百万円と〜』とは全く違うストーリーですが、『もう死んでいる〜』に登場する架空都市「海満」も、行き詰まったらここに逃げよう、と思えるような心の中の居場所になっています。

◉政治分野のジェンダーギャップを考える12冊

《和田靜香選》

1.三浦まり 『さらば、男性政治』 岩波新書

サブテキストとして
◉三浦まり『日本の女性議員どうすれば増えるのか』朝日選書

長年、女性の政治参画を研究してきた三浦さんによる政治論は首がもげそうなほど頷くことばかり。女性はもっと「私たちのことを私たち抜きで決めないで」と声に出していくべきなんだと改めて思う。この本に頷いたら、単行本もぜひ。「女性は他人の目線で自己評価する」経験などジェンダー論がより深く述べられている。

2.前田健太郎 『女性のいない民主主義』 岩波新書

男性の政治学者による、女性議員が極端に少ない日本の政治は民主主義と呼べるのか?という問い。フェミニズムに出会った著者は「フェミニズムもあらゆる政治現象を説明する理論を持っている」と知り、政治とフェミニズムの強いつながりを説く。政治への疑問をフェミニズムが解いていく。

3.濵田真里『女性議員を増やしたいZINE』 タバブックス

女性議員へのハラスメントの相談対応などを行うStand by Women代表による、女性議員を増やすためのZINE。「でもさぁ、なんで女性議員を増やさないといけないの?」という人にこそお手にとってもらいたい。「あ、そうか!」とあたりまえな気づきの「1歩」が得られます。

4.石川優実 『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』 現代書館 ★「遅フェミ」にも登場

50代の私はずっと「私はパンプスを履く、なぜなら女だから!」と信じて疑わないできた。でも、そうじゃない。履かなくたっていい。性別による役割分担という概念がなかった私は、それを知ったとき衝撃だった。抵抗して、ノーって言う女性の声が、あたりまえを崩し、女性を自由にし、社会を変えていく。

5.チョン・アウン著、生田美保訳 『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』 DU BOOKS ★「遅フェミ」にも登場

15冊の古典を読むことで、家事労働を担当する主婦を見下す社会現象に問題意識を持つことは、主婦たちだけじゃなく、父親たちにも、非婚の女性にも男性にも、みんなにとって必要だという考え方にたどり着いていく筆者。その体験を読者として追うことで、私たちも分断を乗り越えていける。

6.ブレイディみかこ 『女たちのテロル』 岩波書店

金子文子、エミリー・デイヴィソン、マーガレット・スキニダーという100年前に社会と戦った女性の人生を交差させて語る評伝。3人とも前のめりで怖いもの知らず、ゴンゴン行くが、それを描くブレイディさんの本領ってこれじゃないか?って「どパンク」で「アナーキー」なノリで、イケイケである。かっけー!

7.宇野重規 『〈私〉時代のデモクラシー』 岩波新書

「どうして政治に関心ないのかな? こんなにたいへんなのに」っていつも謎だったんだけど。ナンバーワンよりオンリーワン、あるがままに~と、私が私らしく個性化されて〈私〉の追及を重ねると、まとまらない不安の私事化が強まり……。ああ、そうか、だから、こうしていこう!と、思考が深まる1冊です。

8.筒井淳也 『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』 中公新書

長年築いてきた企業と家族による社会福祉制度が、日本では女性を家庭にしばりつけ、女性は社会的権利をいまだ獲得しづらい。一方でスウェーデンでは政府が育児・介護のケアワークを社会サービス化し、女性が働きやすいようにした……政治がいかに生活に密着しているか。はっきりさせてくれる本です。

9.岸本聡子 『地域主権という希望』 大月書店

政治とは生活そのものであり、住民が主体となって税金の使いみちや公共の財産の役立て方を民主的な方法で決めていこうよ! みんなの手で公共を取り戻そう! というのがこの本の、岸本杉並区長の考え方。まずは足もとからやっていこう主義!に私は賛成。あなたはどうですか?

10.村林守 『地方自治のしくみがわかる本』 岩波ジュニア新書

「地方自治は民主主義の学校」であることを基本に、地方議会の基本のキが分からない私みたいな人に優しく、しかし深く、その役割や意義を教えてくれる。「わたし」というひとりが生きるこの空間もまた「わたし」であり、その空間=地域を大事にしようという論など、胸アツになる。

11.木村泰子/高山恵子 『「みんなの学校」から社会を変える』 小学館新書

教育論という体だけど、これ、私たち大人こそが自らを振り返り、反省し、これからに生かすべき言葉がぎっしり。ここにあることを実践していけたら、この社会は素晴らしく変わるよなぁ~。私が最もズシンときたのは「混沌を排除しないことがすごく大切」という話と、「学びのリーダー」の話。何度も読み返したい。

12.岡野八代/志田陽子/布施祐仁/三牧聖子/望月衣塑子 『日本は本当に戦争に備えるのですか?』 大月書店

昨年末に閣議決定された安保三文書がいかに問題かを、岡野八代さん、志田陽子さん、三牧聖子さん、望月衣塑子さんという5人中4人の女性が執筆する。国家防衛、安全保障というと日ごろ男性の論客がマッチョに近隣国ディスりで語りがちだが、安全保障は生活に直結しているので、ケア活動とともに語るべき。地に足をつけた国防を!

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