マガジンのカバー画像

TVのモンダイ点

91
かつてTV誌「ステラ」に連載していたコラム。書籍化してなかったので、順に再掲します。意外に腐ってないネタが多いようです。
運営しているクリエイター

記事一覧

88.大流行?

 一時的に急速な勢いでその社会に広まる言葉--―と辞書にはある。「流行語」のことだ。広まりましたかね、ブッチホンって?
 今年の新語・流行語大賞に「リベンジ」「雑草魂」「ブッチホン」の三つが選ばれたと、あちこちのニュースで取り上げていた。ていうことはですよ、今年はみんながこの言葉を使っていたのか?
 サラリーマンは会社で、
「まさか社長から直々に電話があるとは思わなかったよ。もう、まるでブッチホン

もっとみる

87.知らない顔

 野球シーズンが終わると、この国のスポーツニュースはやることがない。そこで、オフのプロ野球選手をスタジオに招いたりする。ここでぼくは困惑するのだ。なぜならば、司会者がそのゲストを紹介する時、
「さぁ、この方です!」
 と、さも当然という感じで言い、本人もまた、当然という形で登場するでしょ。だが、それがいったい誰なのかわからないからだ。

 ぼくはプロ野球にあまり関心がない。いや、そりゃ子供のころ草

もっとみる

86.演歌リストラ

 語順が反対じゃないのか?
 最初にそう思った。「演歌リストラ」という言葉を聞いた時である。
 ここんところ演歌のCDが売れないという話は聞いていた。そこへもってきてこの不景気、リストラブームである。
 企画モノ演歌を三曲ばかり作詞しているぼくとしては、ピンと来ましたね。
「はは~ん。この世相で辛い境遇のお父さんたちの恨みつらみを晴らす企画モノ『リストラ演歌』というのを出すんだな。忘年会シーズン狙

もっとみる

85.誰のもの?

「ラジオは作家のもの、テレビはディレクターのもの、舞台は役者のもの」――という言葉がある。

 ラジオは、役者であれ、パーソナリティーであれ、お笑いタレントであれ、台本を見ながら喋っていても聞いている人にはわからない(「まさか?」と思うような番組にも、実はちゃんと作家がついているのです)。その分、台本に頼る率が高くなり、台本から逸脱することも少ない。
 それで、ラジオの場合は作家の趣味が表に出ると

もっとみる

84.猫とカメラ

 そのあまりに素晴らしい腹話術テクニックから、ぼくが「ボイス・イリュージョン」と名付けたのだが、ここのところ、いっこく堂のライブを手伝っている。(いっこく堂ミニ知識 ご本人は「玉城いっこく」さんで、人形たちを含めた一座のことを「いっこく堂」と呼ぶのです)
 世間で急速に有名になってきたので、今回のライブ前にはテレビの密着取材がついていた。しかも三番組も。
 当然、けいこ風景の取材では一緒にいるぼく

もっとみる

83.健康番組ブーム

 某大手スーパーチェーンには、テレビの健康番組用の担当者がいるという。それぐらい、いまやテレビをつければあちこちの番組でやれ「キムチが体にいい」だの「ゴマが効く」だの「いや、梅干しですよ」と、体にいい食材の紹介が花盛り。放送の翌日にはその食材がちゃんとスーパーの店頭に並び、そして飛ぶように売れていくのだ。
 魚介類にはタウリンが含まれているとか、トマトにはリコピン酸、緑茶にはカテキン……などという

もっとみる

82.二千円問題

 実はぼくは、もう10年以上前から「二千円札を発行すべきだ」と言ってきた。 
 といっても、なにも天下国家のことを考えていたわけじゃない。当時ぼくは、自分が本を出すたびに、あちこちの書店でサイン会を行っていた。そこで書店の方と話をする機会が多かったのだが、たいていは、「本が売れない。どうやったら売れるか?」という話題になる。
 その時、ぼくは必ず、
「二千円札が発行されれば売れる」
 と言い続け

もっとみる

81.毒見大臣

 茨城・東海村の臨界事故には、日本中が大パニックにおちいった。ぼくはあの夜、NHKFMで情報を聞いていたのだが、おだやかなラジオ深夜便の合間に、
「陸上自衛隊の出動を要請しました。が、自衛隊は現場付近まで行ったところ、中性子がひどいので近付くことができず、現在手前で待機しています」
 というニュースが流れる。
 こういったものものしいニュースというのは、ドラマや映画の「怪獣が出現しました!」とい

もっとみる

80.禁断の手法

 料理番組には「あらかじめ」が多い。
「これをキツネ色になるまで、じっくり炒めるんですが、あらかじめ炒めておいたものがここにあります」
 と言ってキツネ色になったものを見せる。
 あるいは、
「これをトロ火で3時間ほど煮込み、時々灰汁をとるのですが、そうやってあらかじめ煮込んでおいたものがこれです」
 と言って自慢気にそれを見せる。
 それは確かに、番組には時間の制約がある。手間暇のかかる部

もっとみる

79.逆接採取隊

「隊長、ありました!」
「なんだ?」
「『しかし』と『ところが』です」
「駄目だ。そんなものは珍しくもなんともない。放っておけ」
「こっちにも、別の種類を見つけました!」
「そっちのはなんだ?」
「『それなのに』です」
「そいつもありふれてる」
「隊長、少し長ったらしい『ここまではよかったのですが』というものも見つけたんですが、やっぱり捨てておきますか?」
「いや。……それは、一応取っておこうか」

もっとみる

78.いかがわしい行為

 最近、まさかと思うような職業の人が犯罪をはたらいてニュースになっている。
 そんな事件を報道する時、アナウンサーは、
「いかがわしい行為をはたらいた」
 などと言う。
 これを聞くとぼくはいつも、「いかがわしい行為って何だ?」と非常に気になってしまうのだ。

 手元の国語辞典で「いかがわしい」を引くと、①そのまま信用できるかどうか疑わしい。②おおっぴらに認められない内容。……とある。たぶん

もっとみる

77.お詫びして訂正します

 すべてのテレビ番組は、いかにして途中でチャンネルを変えられないかについて腐心している。先日もある番組会議で、ぼくたちはその手法について真剣に討議した。

①前後の内容とは関係なく、ハダカのシーンを出す。
 ……伝統的な手法だ。2時間サスペンスドラマでは時報またぎにシャワーシーンがあり、水戸黄門では由美かおるの入浴シーンがある。あのドラエモンですら、しずかちゃんのお風呂シーンがあるのだ!
②「

もっとみる

76.VTR明けの顔

 かつて斉藤由貴ちゃんが歌った「卒業」という名曲があった。なんとも季節外れの話題ではあるが、ぼくはニュースを見ていると時々この歌の歌詞を思い出すのだ。
 松本隆の詞にはたしか、
♪あぁ 卒業式で泣かないと 冷たい人と言われそう♪
 という部分があった。そこんとこなのだ。 

 ニュースには時として「ウミガメの赤ちゃんが海に帰る」などのヒマネタがある。一服の清涼剤というやつですね。
 見るべきな

もっとみる

75.なつメロ

 先日、番組アルバイトの女のコが連絡メモに「夏メロ」と書いてよこした。
 なんだこりゃ?
「なつかしのメロディー」の略が「なつメロ」。こんなことは誰でも知っていると思ったら大間違いだったのだ。
 かのアルバイト嬢曰く、
「だって、よく夏にやってるじゃないですかぁ」
 そりゃそうだな。なぜかこのテの番組はどの局も夏場にやる。
 ぼくが子供の頃の「なつメロ」といえば戦前・戦中の歌と、戦後でも高度経

もっとみる