82.二千円問題

 実はぼくは、もう10年以上前から「二千円札を発行すべきだ」と言ってきた。 
 といっても、なにも天下国家のことを考えていたわけじゃない。当時ぼくは、自分が本を出すたびに、あちこちの書店でサイン会を行っていた。そこで書店の方と話をする機会が多かったのだが、たいていは、「本が売れない。どうやったら売れるか?」という話題になる。
 その時、ぼくは必ず、
「二千円札が発行されれば売れる」
 と言い続けてきたのだ。 
 して、そのココロは? かつて単行本は千円以内で買えた。しかし今や千数百円というのが常識。お札一枚出しても買えなくなったのだ。そこで消費行動にブレーキがかかる。それを払拭するには、お札一枚と交換に本とお釣が返ってくるという図式が必要。そのためには二千円札……という理屈なのだ。

 自分の作品の質の向上はさておいて、二千円札発行という他力本願なことを言っている。いい気なもんだが。 
 今回は、
①2000年の2000円札では、なんだか駄ジャレみたいだ。
②沖縄サミットの年に守礼門のデザインのお札だと、いかにも思い付きに見える。
 というタイミングと発表センスの悪さから(おそらく小渕首相にはこれがセンスのいいことに思えたのだろうが)、各ニュースショー、ワイドショーでは冷ややかに伝えていた。
 が、実はこれ、本に限らず他のものに対してもけっこう効果のある消費刺激策だ、とぼくは見ているのだ。 

【モンダイ点】
◎2万円札も出してくれれば、結婚のご祝儀の時「2は別れる数字だから」と配慮して3万円包まずにすむのだが。

(ステラ/1999/11/11)

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